平面からものが飛び出して見える「立体視」は、ずいぶん古くからさまざまな手法で試みられて来ており、ことほど左様に「立体視」は多くの人の興味をそそる視覚効果であることが窺えます。映画の世界でも、古くは赤と青のフィルターメガネを通して見る手法から始まり、その後もときどき思い出したかのように出てきたものでした。
従って、「見るゲーム」を意味するビデオゲーム(「ビデオ(video)」の語源「videre」は、ラテン語で「見る」の意味)においても立体視を試みようとするのは自然なことと言えましょう。それを世界で初めて実現したのは、「サブロック-3D (SUBROC-3D)」(Sega, 1982)でした。
「SUBROC-3D」のフライヤー。1枚を三つに折った6ページ構成で、上が表紙側、下が中身側。表紙には円形の穴が開いており、そこを通して裏表紙側右のイラストの宇宙船が見えるように折りたたまれていた。この画像は、保存状態が良くなかったフライヤーをページごとにスキャンしており、一部尺が切れているところがあるものを無理やり実際の状態に近い状態に復元してある。
原理としては、一つの画面に左目用と右目用の二つの画像を交互に高速に切り替えて表示し、これに同期してシャッターが開閉する左目用レンズと右目用レンズを通して画面を見ることで立体視が得られる、というものでした。このシステムは、セガが松下電器産業と共同開発したとフライヤーには書かれています。
ワタシが「サブロック-3D」を初めて見たのは、明治通りの宮益坂近くにあり現在も営業が続いている「渋谷ボウル」のビル内にあったゲームコーナーでした。「ゲームコーナー」と言っても、この当時はまるまるワンフロアがゲーム場となっていたように記憶しています。セガの機械がやたらと多かったのは、そこがおそらくセガによるオペレーションだったからでしょう。
当時のワタシはミーハーでしたから、さっそく試してみたところ、確かにエネミーがこちらに向かって画面を飛び出て迫ってくるように見え、その効果には相当に驚き感心したことを覚えています。
ビデオゲーム業界では、サブロック-3Dの後、他社からも似た原理による立体視を売りにするゲーム機が断続的に売り出されました。
◆1985年 「バトルバード(Battle Bird)」(Irem)
バトルバードのフライヤーの表(左)と裏(右)。
◆1986年 「3-DサンダーセプターII(3-D Thunder Ceptor II)」(namco)
サンダーセプターのフライヤーの表(左)と裏(右)。このフライヤーは3D機能のない普通タイプで、3Dバージョンはこの半年後くらいに発売された。
◆1989年 「コンチネンタルサーカス(Continental Circus)」(TAITO)
コンチネンタルサーカスのフライヤー。二つ折りの4ページ構成。表紙側(上)と中側(下)。
だがしかし。これらのゲーム機は、いずれもヒットと呼べるほど普及した印象がありません。ワタシの記憶では、最も良く見かけたのはコンチネンタルサーカス、次いでサンダーセプターで、バトルバードはほんの2、3か所でしか見た記憶がありません。
その原因として、一つには筐体が高価だったこともあろうかと想像しますが、それ以上に、いずれも専用のフィルターを通して画面を見ないと意味のある映像が見えないという欠点があったことも挙げられるのではないかと思います。バトルバードなどは、プレイヤー以外はゲーム画面を見ることができない造りになっていました。
現在は裸眼で立体映像が見られる技術も発達し、カジノのスロットマシンでも導入する機種が増えています。それらも、出始めのころから比べるとグラフィックの質は向上しているように思えますが、しかしまだ「ノベルティ・マシン(変わり種ゲーム機)」の域を完全に脱し切れていないように思えます。
立体視と言えば、数年前には家庭用のテレビモニターに3D機能が搭載され、各社が懸命に売り込んでいたこともありましたが、現在は全く見かけなくなりました。今のTVモニター業界の力の入れ所は、4Kとか8Kと言った高精細画像に完全にシフトしています。
多くの人が興味を示すくせに、いざ実現してもたいして売れない「立体視」は、実はそれほど強い需要がある技術ではなさそうです。ワタシの経験でも、なるほどファーストインパクトは大きいのですが、それはゲーム(テレビの場合は放映コンテンツ)を楽しむというよりも、視覚効果を楽しんでいるのでした。そしてその効果の刺激に慣れてくると、3Dはむしろゲームを楽しむ邪魔になっているように思ったものでした。
3Dという技術は、成功すれば多大な富が得られるという妄想を産む点で錬金術に似ていますが、錬金術と違ってなまじ実現できてしまうのでなお性質が悪いと言えるかもしれません。今のワタシは、3D技術は、視覚効果を見せることを主とするコンテンツであれば効果的ではあるが、視覚効果は従に過ぎないビデオゲーム分野では報われることのない技術だと考えています。これを裏切るタイトルが将来出て来てくれる方がうれしいとは思うのですが。
従って、「見るゲーム」を意味するビデオゲーム(「ビデオ(video)」の語源「videre」は、ラテン語で「見る」の意味)においても立体視を試みようとするのは自然なことと言えましょう。それを世界で初めて実現したのは、「サブロック-3D (SUBROC-3D)」(Sega, 1982)でした。
「SUBROC-3D」のフライヤー。1枚を三つに折った6ページ構成で、上が表紙側、下が中身側。表紙には円形の穴が開いており、そこを通して裏表紙側右のイラストの宇宙船が見えるように折りたたまれていた。この画像は、保存状態が良くなかったフライヤーをページごとにスキャンしており、一部尺が切れているところがあるものを無理やり実際の状態に近い状態に復元してある。
原理としては、一つの画面に左目用と右目用の二つの画像を交互に高速に切り替えて表示し、これに同期してシャッターが開閉する左目用レンズと右目用レンズを通して画面を見ることで立体視が得られる、というものでした。このシステムは、セガが松下電器産業と共同開発したとフライヤーには書かれています。
ワタシが「サブロック-3D」を初めて見たのは、明治通りの宮益坂近くにあり現在も営業が続いている「渋谷ボウル」のビル内にあったゲームコーナーでした。「ゲームコーナー」と言っても、この当時はまるまるワンフロアがゲーム場となっていたように記憶しています。セガの機械がやたらと多かったのは、そこがおそらくセガによるオペレーションだったからでしょう。
当時のワタシはミーハーでしたから、さっそく試してみたところ、確かにエネミーがこちらに向かって画面を飛び出て迫ってくるように見え、その効果には相当に驚き感心したことを覚えています。
ビデオゲーム業界では、サブロック-3Dの後、他社からも似た原理による立体視を売りにするゲーム機が断続的に売り出されました。
◆1985年 「バトルバード(Battle Bird)」(Irem)
バトルバードのフライヤーの表(左)と裏(右)。
◆1986年 「3-DサンダーセプターII(3-D Thunder Ceptor II)」(namco)
サンダーセプターのフライヤーの表(左)と裏(右)。このフライヤーは3D機能のない普通タイプで、3Dバージョンはこの半年後くらいに発売された。
◆1989年 「コンチネンタルサーカス(Continental Circus)」(TAITO)
コンチネンタルサーカスのフライヤー。二つ折りの4ページ構成。表紙側(上)と中側(下)。
だがしかし。これらのゲーム機は、いずれもヒットと呼べるほど普及した印象がありません。ワタシの記憶では、最も良く見かけたのはコンチネンタルサーカス、次いでサンダーセプターで、バトルバードはほんの2、3か所でしか見た記憶がありません。
その原因として、一つには筐体が高価だったこともあろうかと想像しますが、それ以上に、いずれも専用のフィルターを通して画面を見ないと意味のある映像が見えないという欠点があったことも挙げられるのではないかと思います。バトルバードなどは、プレイヤー以外はゲーム画面を見ることができない造りになっていました。
現在は裸眼で立体映像が見られる技術も発達し、カジノのスロットマシンでも導入する機種が増えています。それらも、出始めのころから比べるとグラフィックの質は向上しているように思えますが、しかしまだ「ノベルティ・マシン(変わり種ゲーム機)」の域を完全に脱し切れていないように思えます。
立体視と言えば、数年前には家庭用のテレビモニターに3D機能が搭載され、各社が懸命に売り込んでいたこともありましたが、現在は全く見かけなくなりました。今のTVモニター業界の力の入れ所は、4Kとか8Kと言った高精細画像に完全にシフトしています。
多くの人が興味を示すくせに、いざ実現してもたいして売れない「立体視」は、実はそれほど強い需要がある技術ではなさそうです。ワタシの経験でも、なるほどファーストインパクトは大きいのですが、それはゲーム(テレビの場合は放映コンテンツ)を楽しむというよりも、視覚効果を楽しんでいるのでした。そしてその効果の刺激に慣れてくると、3Dはむしろゲームを楽しむ邪魔になっているように思ったものでした。
3Dという技術は、成功すれば多大な富が得られるという妄想を産む点で錬金術に似ていますが、錬金術と違ってなまじ実現できてしまうのでなお性質が悪いと言えるかもしれません。今のワタシは、3D技術は、視覚効果を見せることを主とするコンテンツであれば効果的ではあるが、視覚効果は従に過ぎないビデオゲーム分野では報われることのない技術だと考えています。これを裏切るタイトルが将来出て来てくれる方がうれしいとは思うのですが。
昔、関西精機だったのかは失念しましたが、アップライト筐体で敵ガンマンとの早抜き(撃ち)で勝負すると、ゲーム結果でフレネルレンズに似た円筒形のドラムが回転し「ホログラム演出」があったゲーム機も思い出しまた。※思い出せないです(汗)
個人的意見ですが、アーケードゲームでの体感機物は嗅覚を残すのみでしょうか。。。
体感機は、市場がここまで縮小してしまうと、もう出てこないんじゃないでしょうかねえ。残念だとは思いますが・・・
「ガンスモーク」(1975)でしたね!
流石先輩です!モヤモヤが晴れました。