先日まで「名門チームとそれらを支えた代表的ドライバー」として10チームをみてきました。ドライバーをみればそのチームっぽい、逆にそのチームといえばその人ありき、みたいな色が出てましたよね。それぞれ「色の違い」が見えてきたと思います。これでチーム内での成績について各部門で点数化しましたので、チーム差や昔や最近、長い浅い関係なく単純に並列化できたはずです。しかしチームや時代、レギュレーションが異なるとそうもいかなくなる。ドライバーにはファン各々で好き嫌いや印象などがあるため、なかなか比較評価は難しいものですよね。以前も時代によって異なるポイントを変換して比較したりしましたが、今回は前回のティレルの時に話した、好みや印象を度外視した数的評価で「ミスターの中のミスターF1ドライバーは誰か」を決めてみたいと思います。
※予めお断りしておきますが、これはmiyabikunの定めた評価方法により算出したもので、miyabikunの好き嫌いは考慮していません。感情を抜きにした「無味乾燥」状態です。
image
まずは軽く先日までに割り出した各チームのトップ5まで振り返りたいと思います。2017年シーズンまでのエントリー数、ポール獲得数と獲得率、優勝数と優勝率、表彰台獲得数と獲得率、ドライバーズチャンピオンにポイント付与した集計結果です。内訳詳細は以前の記事を参照下さい。

《フェラーリのトップ5》
  1 111pts M・シューマッハ   ★★★★★
  2   59pts A・アスカリ          ★★
  3   57pts N・ラウダ              ★★
  4   40pts J・M・ファンジオ ★
  5   33pts K・ライコネン       ★●
  ポイント獲得対象33人    総ポイント548

《マクラーレンのトップ5》
  1   90pts A・セナ            ★★★
  2   81pts A・プロスト     ★★★
  3   65pts M・ハッキネン ★★
  4   58pts L・ハミルトン  ★ ◯
  5   37pts J・ハント         ★
  ポイント獲得対象20人    総ポイント512

《ウィリアムズのトップ5》
  1   71pts N・マンセル       ★
  2   65pts D・ヒル              ★
  3   53pts A・プロスト       ★
  4   49pts J・ヴィルヌーブ ★
  5   45pts N・ピケ              ★
  ポイント獲得対象18人    総ポイント467

《ロータスのトップ5》
  1   85pts J・クラーク               ★★
  2   53pts M・アンドレッティ   ★
  3   50pts E・フィティパルディ ★
  4   48pts J・リント                   ★
  5   46pts A・セナ
  ポイント獲得対象18人    総ポイント458

《メルセデスのトップ5》
  1   96pts L・ハミルトン       ★★★●
  2   79pts J・M・ファンジオ ★★
  3   68pts N・ロズベルグ       ★
  4   50pts V・ボッタス           ●
  5   41pts S・モス
  ポイント獲得対象11人    総ポイント388

《レッドブルのトップ5》
  1 109pts S・ベッテル               ★★★★ ◯
  2   62pts M・ウェバー
  3   56pts D・リカルド               ●
  4   36pts M・フェルスタッペン ●
  5   18pts D・クルサード
  ポイント獲得対象9人     総ポイント307

《ブラバムのトップ5》
  1   85pts N・ピケ           ★★
  2   67pts D・ブラバム    ★
  3   47pts J・イクス
  4   44pts D・ガーニー
  5   42pts D・ハルム        ★
       42pts C・ロイテマン
  ポイント獲得対象15人   総ポイント452

《ルノーのトップ5》
  1   87pts F・アロンソ          ★★
  2   60pts A・プロスト
  3   59pts R・アルヌー
  4   44pts G・フィジケラ
  5   35pts J・P・ジャブイユ
  ポイント獲得対象13人   総ポイント381

《ベネトンのトップ5》
  1   90pts M・シューマッハ ★★
  2   44pts G・ベルガー
  3   39pts J・アレジ
  4   36pts N・ピケ
  5   32pts A・ナニーニ
  ポイント獲得対象13人   総ポイント356

《ティレルのトップ5》
  1   83pts J・スチュワート ★★
  2   57pts J・シェクター
  3   56pts P・ドゥパイエ
  4   34pts M・アルボレート
  5   32pts F・セベール
  ポイント獲得対象16人   総ポイント330

★はチーム所属時のチャンピオン獲得数、
●は2017年時点の現役所属、◯は過去に所属した現役

チーム優勝数上位10チームのさらにトップ5は延べ162人でこんな感じでした。同列比較したはずなのに、獲得対象者数とチーム総ポイントに差があるのはなぜ?!これはチームの歴史が浅く、10人にポイント付与できなかったために生じています。例えば現役チームであるメルセデスやレッドブルは多く優勝は挙げていますが、ブラバムやティレルより下回ってしまってしまうのです。またチャンピオン獲得者には特別に1回獲得につき10ポイントのボーナスを与えました。チャンピオンをそのチームで多く獲得していると、各人またはチームの総ポイント数に波及されますからフェラーリやマクラーレンが高めに出ます。
次にこれらをチームの分けを外し、ガチャっと合体されて並べると、こうなります。

《チームの分けを外したトップ30》
  1 111pts M・シューマッハ(フェラーリ 1位)
  2 109pts S・ベッテル(レッドブル 1位)
  3   96pts L・ハミルトン(メルセデス 1位)
  4   90pts A・セナ(マクラーレン 1位)
       90pts M・シューマッハ(ベネトン 1位)
  6   87pts F・アロンソ(ルノー 1位)
  7   85pts J・クラーク(ロータス 1位)
       85pts N・ピケ(ブラバム 1位)
  9   83pts J・スチュワート(ティレル 1位)
10   81pts A・プロスト(マクラーレン 2位)
11   79pts J・M・ファンジオ(メルセデス 2位)
12   71pts N・マンセル(ウィリアムズ 1位)
13   68pts N・ロズベルグ(メルセデス 3位)
14   67pts D・ブラバム(ブラバム 2位)
15   65pts M・ハッキネン(マクラーレン 3位)
       65pts D・ヒル(ウィリアムズ 2位)
17   62pts M・ウェバー(レッドブル 2位)
18   60pts A・プロスト(ルノー 2位)
19   59pts A・アスカリ(フェラーリ 2位)
       59pts R・アルヌー(ルノー 3位)
21   58pts L・ハミルトン(マクラーレン 4位)
22   57pts N・ラウダ(フェラーリ 3位)
       57pts J・シェクター(ティレル 2位)
24   56pts D・リカルド(レッドブル 3位)
       56pts P・ドゥパイエ(ティレル 3位)
26   53pts A・プロスト(ウィリアムズ 3位)
27   53pts M・アンドレッティ(ロータス 2位)
28   50pts E・フィティパルディ(ロータス 3位)
29   50pts V・ボッタス(メルセデス 4位)
30   49pts J・ヴィルヌーブ(ウィリアムズ 4位)
  ポイント獲得対象は延べ162人   総ポイント4199

各チームの1位が順当に上位にくる中、ウィリアムズは1位が少しライバルより出遅れ、逆に4位のヴィルヌーブまでがトップ30に入ってきているのが特徴的です。当時ウィリアムズの時にも書きましたが、ウィリアムズは各人エントリー数が多くなく、在籍期間も短い。さらに栄冠を勝ち取ると移籍する傾向にあり、フェラーリやレッドブルにある「一人独走状態」を招かなかったことで分散したようです。
同じチームで複数回チャンピオンを獲得すると、このポイントは上昇します。1位のM・シューマッハはフェラーリで5回チャンピオンを獲得して50ポイントを上乗せ。2位のベッテルはレッドブルでご存知の通り4回チャンピオンなので40ポイントを加算しました。同じくチャンピオンは4回でも、マクラーレンで1回、メルセデスで3回のハミルトンとは取り扱いが異なってきます。
このランキングは各チームで獲得したポイント数によるものですが、別のチームで上位を獲得してもランクインしてきますので、以下でそれを「ドライバー単位」で集約して並べ直してみます。

《ドライバー単位に集約した場合のトップ30》
  1 215pts M・シューマッハ
  2 206pts A・プロスト
  3 166pts N・ピケ
  4 154pts L・ハミルトン
  5 146pts A・セナ
  6 121pts S・ベッテル
  7 119pts J・M・ファンジオ
  8 111pts F・アロンソ
  9 107pts N・ラウダ
10   85pts J・クラーク
11   83pts J・スチュワート
12   81pts N・マンセル
13   80pts E・フィティパルディ
14   74pts G・フィジケラ
15   73pts N・ロズベルグ
16   71pts S・モス
17   67pts J・イクス
       67pts D・ブラバム
       67pts J・シェクター
20   66pts J・リント
21   65pts D・ヒル
       65pts M・ハッキネン
23   63pts C・ロイテマン
       63pts G・ベルガー
25   62pts K・ライコネン
       62pts M・ウェバー
27   59pts A・アスカリ
       59pts R・アルヌー
29   57pts D・クルサード
       57pts V・ボッタス

元はチーム単位で算出したものですが、合算すると順位がいくつか入れ替わり、よく見る優勝数ランキングみたいな順列に変わりました。フィジケラがN・ロズベルグやハッキネンを差し置いて14位ですと?!さすが流浪の苦労人です。この算出方法の弱点は「10チーム以外で好成績をおさめた者がカウントされない点(例えばブラウンGPのバトンなど)」「10チーム内の複数で移籍して好成績であれば上位に入る点(例えばノンチャンピオンのフィジケラやモスが上位に来る)」があります。本来ではあれば、全チームで同様の評価をすればより平等になるわけですが、miyabikunもそこまでの根気と時間がありませんでした。
特筆すべきは10位にランクインしたクラークです。彼は事故により若くして命を落としたドライバーの一人ですが、上位ドライバーが複数チームでポイント積み重ねる中でロータス一本でこの順位です。ちなみにクラークのほか、チャンピオンを獲得したマトラ時代をカウントしていないスチュワート、アロウズやジョーダンなどで晩年をダラダラと過ごしたD・ヒルもその手に属します。

《10チームのランキンググラフ》
最後にコンストラクターズランキンググラフを結合してみました。いつものようにグチャグチャしちゃっています。各チームで異なるカラーを使用していますので頑張って追ってみて下さい。
IMG_2406
コンストラクターズランキングは1958年からスタートしており、下限が14位より少ないエントリー数の時代はグレーで塗り潰しています。よってグレーにかかるティレルの93年は13位でビリなわけです。今回選択した10チームの内訳はワークス(メーカー)が4チーム(フェラーリ、ロータス、メルセデス、ルノー)、そしてプライベーターが6チーム(マクラーレン、ウィリアムズ、レッドブル、ブラバム、ベネトン、ティレル)となっています。今でこそマクラーレンはメーカーとして自社製の車を市販化するようにはなりましたが、元はドライバーが枝分かれさせて発足させて、今でもホンダやルノーからエンジンを供給してもらうプライベーターです。全ての期間で参戦しているのはフェラーリのみで、ほかメルセデスやルノーは会社の経営方針などの理由からか何度か休戦、復帰を繰り返しています。一方、プライベーターもいくつか消滅を余儀なくされたものもある中で、マクラーレンやウィリアムズなどは苦しいながらも参戦を続けています。
10チームがランキングの上位にしっかり居座っている様子がよくわかりますよね。新規チーム、零細チームではF1の頂点に立つのは困難を極めます。私達がF1をよく知るようになった80年代から90年代後半までの10年間はフェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズ、ベネトンによるいわゆる「四強」が相見える形であったことがグラフからも読み取れます。そのほとんどはオレンジのマクラーレンと黒のウィリアムズが牽引していました。これら名門の強豪がひしめく中、ランキング1位が空いているシーズンがいくつかあります。古い順に初年58年のヴァンウォール、59,60年はクーパー、62年のBRM、68年マトラ、そして時も記憶にも新しい09年のブラウンGPでした。それら上記3チームは複数年参戦中の戴冠でしたが、ブラウンGPはデビューでダブルチャンピオン、そして直後に買収とたった一年で成し得て消滅した「時のチーム」の戴冠でした。

image
いかがでしたでしょうか。10回に渡るチームとドライバー評価とランキング、そして今回はその10チームをまとめて並べました。今までこのブログでは「時代に合わせたポイント換算による評価」「チームごとの代表ドライバーによる評価」というやり方を使ってファンの永遠の課題である「F1で速く強いドライバー」を模索してきました。時代もドライバーもマシンもレギュレーションも、さらには行われたサーキットも異なる中で単純に比較することはなかなかできないことです。もちろん今回のデータでもそれを正確に解明することができませんでしたが、その時代時代に優秀なチームやドライバー、マシン、戦略があって、数々のバトルやドラマを繰り広げてきたわけで、それを見つけて比較、断言することは決して容易なことではありません。
今チームは存続自体が厳しいものとなり、かといって新興チームが台頭してきたり参入することも減ってきました。レギュレーションの緩和や「F1のあり方」によっては、今後ワークス、プライベーターとも新たな強豪チームがまた現れてくるかもしれません。