史上初のオーストリア2連戦、ということで今週末は同じレッドブルリンクで行われるシュタイアーマルクGPです。この前レッドブルリンクの予選タイム比較をしてしまったし、何やろうかなと考えたところ、この隙間にちょうどいいサーキットを見つけました。リンクはリンクでもドイツのホッケンハイムリンクはいかがでしょうか。ドイツは今シーズンないじゃん!おっしゃる通りです。母国チームの堅実さはお墨付きですが、母国ドライバーが散らかったまま出て来れないって?!そうなんですよね、母国GPがあってもああなっちゃうんですから、、って、暇つぶし、お口直し程度にご覧下さい。

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《ホッケンハイムリンクの基本情報》
    全長   :6.789km(1970,77〜81)
       6.797km(1982〜89)
       6.802km(1990,91)
       6.815km(1992,93)
       6.823km(1994〜99)
       6.825km(2000,01)
       4.574km(2003〜19)
 コーナー数:13箇所(2003〜19)
   開催回数  :37回(全時代を含む)

シュタイアーマルクは地名なんですが、どこかドイツっぽい香りしませんか?!語尾の「マルク」がその元になるでしょうか。レッドブルリンクの旧称「エステルライヒリンク」の「ライヒ」あたりもドイツっぽいでしょう。オーストリアの公用語はドイツ語です。だからまんざら遠いチョイスでもない、なんて言い聞かせてみる(笑)ホッケンハイムリンクは昨年2019年までF1ドイツGPを支えてきた古参サーキットの一つです。レイアウトは細々と変更を伴うものの、ざっくりとみれば2つに分類されます。
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 ・1970〜81年 6.789km 緑色 (オリジナル)
 ・1982〜89年 6.797km 青色(オストシケイン)
 ・1990,91年  6.802km 茶色(シケイン移動)
 ・1992,93年  6.815km 桃色(シケイン逆転)
 ・1994〜99年 6.823km
 ・2000,01年  6,825km 赤色(シケイン鋭角)
 ・2002〜現在 4.574km 黒色(森区間廃止)IMG_0869
このサーキットでクラークやドゥパイエといった名ドライバーが命を落としています。それをきっかけにシケインが生まれ、位置が度々変更になっています。ぺったんこなリヤウィングを装着した高速のマシンがうっそうとした森の中に向かって消え、またファンの待つスタンドに戻ってくる。ホッケンハイムといえばこの印象が強く残っています。近年はその名物であった区間が廃止され、短絡的なサーキットに変貌を遂げました。例のヘルマン・ティルケの仕業。いいか悪いか、好きか嫌いかは別として、なかなか近代的な雰囲気が漂っています。また、そのティルケデザインになってからも廃止されずに使用されている、いわゆる「スタジアムセクション」と呼ばれる区間は、先日も少し書いた通り鈴鹿サーキットのデザインに大きく関わったのがジョン・フーゲンホルツです。著名な2人のデザイナーによって語り継がれるのがこのホッケンハイムリンク、ということです。

《ホッケンハイムリンクの予選P.P.タイム変遷》
 70 6.789km 1分59秒500 イクス

 77 6.789km 1分53秒070 シェクター
 78 6.789km 1分51秒900 Mアンドレッティ
 79 6.789km 1分48秒480 ジャブイユ
 80 6.789km 1分45秒850 ジョーンズ
 81 6.789km 1分47秒500 プロスト
 82 6.797km 1分47秒947 ピローニ
 83 6.797km 1分49秒328 タンベイ
 84 6.797km 1分47秒012 プロスト
 86 6.797km 1分42秒013 Kロズベルグ
 87 6.797km 1分42秒616 マンセル
 88 6.797km 1分44秒596 セナ
 89 6.797km 1分42秒300 セナ
 90 6.802km 1分40秒198 セナ
 91 6.802km 1分37秒087 マンセル
 92 6.815km 1分37秒960 マンセル
 93 6.815km 1分38秒748 プロスト
 94 6.823km 1分43秒582 ベルガー
 95 6.823km 1分44秒385 Dヒル
 96 6.823km 1分43秒912 Dヒル
 97 6.823km 1分41秒873 ベルガー
 98 6.823km 1分41秒838 ハッキネン
 99 6.823km 1分42秒950 ハッキネン
 00 6,825km 1分45秒697 クルサード
 01 6,825km 1分38秒117 モントーヤ
 02 4.326km 1分14秒389 Mシューマッハ
 03 4.326km 1分15秒167 モントーヤ
 04 4.574km 1分13秒306 Mシューマッハ
 05 4.574km 1分14秒320 ライコネン
 06 4.574km 1分14秒070 ライコネン
 08 4.574km 1分15秒666 ハミルトン
 10 4.574km 1分13秒791 ベッテル
 12 4.574km 1分40秒621 アロンソ
 14 4.574km 1分16秒540 Nロズベルグ
 16 4.574km 1分14秒363 Nロズベルグ
 18 4.574km 1分11秒212 ベッテル
 19 4.574km 1分11秒767 ハミルトン


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いつも通り、タイムを並べてみます。大きく2種類のレイアウトに分けられるホッケンハイムは当然タイムも2つに分かれてきます。2001年と02年ですね。2012年に一つ「異端児」がありますが、それを無しにすれば同じサーキットなのにタイムがまるで違います。IMG_3756
前半の「象さん」時代はレイアウトは若干異なれど、距離にして7km弱のうちの10m無い程度の差なので、誤差のような範囲としてみていいのかなと思います。あれだけ緩やかなカーブ、ほぼ直線があればターボ系が有利か、なんて予想したものの、並べてみると意外と振るわず、最速はマンセルがチャンピオンを獲得する前年に記録した91年の1分37秒087。ウィリアムズが徐々にマクラーレンを食い始めた時期ですね。その後、ハイテクデバイスが取り上げられて、空力思想が強くなる末代90年代後半はタイムに変化がなく、ほぼ横ばいな感じ。一応ドライ環境です。最終年01年はガツンとタイム向上があります。最近ちょこちょこ話題に出る、マンセルと同じウィリアムズによるモントーヤの1分38秒117です。これは象さんレイアウトの歴代 3番目にあたるポールタイムとなっています。クドいですが01年のモントーヤは新人の風貌が全く無いF1ドライブ1年目。2番手はチームメイトのR・シューマッハでその差は0.019秒。 3番手はマクラーレンのハッキネンで0.694秒もの差となります。本当にこの時代のウィリアムズは速かった。
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近代「ハイヒール」時代はこうなります。唯一振り切れている12年はアロンソ様によるウェット路面です。よってそちらは除外させて頂きますと、18年19年は一段階速くなりますが、他は意外と出たり引っ込んだりして、まとまりがありません。06年以降はニュルブルクリンクとの隔年開催だったり、ドイツGP自体がやるのかやらないのかはっきりしない時代ではあったものの、それを考慮しても特徴が掴みにくい。困りましたね。見方を変えれば、何かわかるのかな?!

《ホッケンハイムリンクの予選P.P.平均速度変遷》
 70 6.789km 204.5km/h 100%    イクス

 77 6.789km 216.2km/h 105.7% シェクター
 78 6.789km 218.4km/h 106.8%  Mアンドレッティ
 79 6.789km 225.3km/h 110.2% ジャブイユ
 80 6.789km 230.9km/h 112.9% ジョーンズ
 81 6.789km 227.4km/h 111.2% プロスト
 82 6.797km 226.7km/h 110.8% ピローニ
 83 6.797km 223.8km/h 109.4% タンベイ
 84 6.797km 228.7km/h 111.8% プロスト
 86 6.797km 239.9km/h 117.3%  Kロズベルグ
 87 6.797km 238.5km/h 116.6% マンセル
 88 6.797km 233.9km/h 114.4% セナ
 89 6.797km 239.2km/h 117.0% セナ
 90 6.802km 244.4km/h 119.5% セナ
 91 6.802km 252.2km/h 123.3% マンセル
 92 6.815km 250.4km/h 122.5% マンセル
 93 6.815km 248.5km/h 121.5% プロスト
 94 6.823km 237.1km/h 115.9% ベルガー
 95 6.823km 235.3km/h 115.1% Dヒル
 96 6.823km 236.4km/h 115.6% Dヒル
 97 6.823km 241.1km/h 117.9% ベルガー
 98 6.823km 241.2km/h 117.9% ハッキネン
 99 6.823km 238.6km/h 116.7% ハッキネン
 00 6,825km 232.5km/h 113.7% クルサード
 01 6,825km 250.4km/h 122.4% モントーヤ
 02 4.326km 221.4km/h 108.2% Mシューマッハ
 03 4.326km 219.1km/h 107.1% モントーヤ
 04 4.574km 224.6km/h 109.8% Mシューマッハ
 05 4.574km 221.6km/h 108.3% ライコネン
 06 4.574km 222.3km/h 108.7% ライコネン
 08 4.574km 217.6km/h 106.4% ハミルトン
 10 4.574km 223.1km/h 109.1% ベッテル
 12 4.574km 163.6km/h   80.0% アロンソ
 14 4.574km 215.1km/h 105.2% Nロズベルグ
 
16 4.574km 221.4km/h 108.3% Nロズベルグ
 18 4.574km 231.2km/h 113.1% ベッテル
 19 4.574km 229.4km/h 112.2% ハミルトン


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距離から割り出す平均速度と初年との割合です。一貫してみると、まあまあタイムグラフと同様に速い年は速く出ていますが、わかりやすくした割にはまだこれでもよくわからない感じ。ところどころ歯抜けになっているのは、ホッケンハイムリンク非開催の年です。12年は平均速度163.6km/h、初年との比較が2割減ということでグラフ上「無かったこと」みたいになってしまいました。ちゃんとアロンソ様がポールをお獲りになっているので、大丈夫です。果たして来年21年シーズンにドイツGPがあるのかはわからないけどー(笑)
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「象さん」時代の平均速度グラフです。中低速なスタジアムセクションがあるにも関わらず、平均して250km/h近くまで来るあたりはさすが高速ホッケンハイムといった感じです。タイムと同じく91年がサミットとなる252.2km/h。新人らしくない新人のモントーヤは歴代2位タイとなる250.4km/hをマークしています。速さのウィリアムズってなところ。92年も同じV型10気筒エンジンですが、排気量と供給メーカーが異なります。miyabikun個人的には3.5ℓV10より3.0ℓV10のサウンドの方が好き。 IMG_3954
掴み所のない「ハイヒール」時代はというと、やはり18年のベッテルが最速の231.2km/hでした。確かにあのラップは近年の冴えないベッテル中では会心のポールポジションだった記憶です。それだけに、あの雨の決勝は悔やまれます。
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そう、それね(笑)
現代のパワーユニットとなった14年はタイム、速度とも一度落ち込み、16年あたりから急激に向上する様は他のサーキットと似ていますが、結論としてはこのホッケンハイムリンクはマシンレギュレーションによる差や向上が思いの外感じにくいのかなというのが印象です。

ただよくわかったこと。先程の通期の平均速度グラフからもわかるように、旧レイアウトの速度は非常に高いです。近年の速度は80年代前半に近い速度域に止まります。90年代初頭のマシンは今からみれば30年近く古くても、あの森の高速区間で稼いでいた速度には敵いません。全く特性の違うサーキットに生まれ変わったのは明白です。

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