「犬を飼おうって。今のここじゃ無理だから」
「ほんと」
「モリーに影響されて、欲しくなっちゃった。モリー元気?」
「ああ、元気すぎて――」とクリスはため息をついて首を振る。「呼ぼうか?」
「うん、会いたい」
「モリー」と横を向く。廊下の方を見る。
「家族が増えれば、ママ変わるかって」
「そうか」
「モリーと同じ保護犬迎えようって」
「そりゃいい」
「小さな戸建だけど、ママが探してタイミングよく見つかって」
新居の内見は先日済ませていた。
「来た」とクリスがまた横を向く。「こっち来い。ほら」と手招きすると大型犬がクリスにしがみつく。雑種犬のモリーだった。クリスは抱き寄せてパソコン画面を見せる。「憶えてるか。このまえ来たジェシーだ」
「モリー、お姉さん憶えてる?」とジェシーが乗り出すと、モリーは画面に寄りペロッと舐める。
「ハハハ、うれしい」とジェシー。
「あーあ」とクリスは顔をしかめ「もう行け」とモリーを解放する。パソコンの画面をティッシュで拭く。
「ママも乗り気でね。飼いだしたらまた知らせる」
「ああ、待ってるよ。楽しみだ」
「うん」
「今日はその連絡?」
「うん――」ジェシーは目を伏せ「じゃないの」と首を振る。
「なに?」
「叔父さんに何か連絡――ううん、叔父さんに迷惑かけるかもしれなくて」
「どういうこと?」