ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Tanya Tucker タニヤ・タッカー - While I'm Livin'

2020-01-18 | カントリー(女性)

1972年に若干13才でデビューした、カントリー界の超レジェンド、

タニヤ・タッカーが、2019年、10年ぶりにリリースしたオリジナ

ル・アルバムです。正直、2002年以降はライブ・アルバムやカバ

ー・アルバムを時折リリースする程度の活動だったので、このア

ルバムのリリース、さらに今年のグラミー賞でのマルチなノミネ

ート驚きでした。プロデュースしたブランディ・カーライルと、

ウェイロン・ジェニングスの息子、シューター・ジェニングス 

Shooter Jenningsが仕掛け人と言えるでしょう。このタニヤは、

イウィメンの"Redesigned Woman"のビデオにも終盤に登場してい

ました。

 

 

プロフィールですが、1958年テキサス州セシノール生まれ。音楽

との出会いは、サックスを習った事でした。8才の頃に地元にツア

ーで訪れていたメル・ティリス(パム・ティリスの父)に、どう

上手くしたのか言葉巧みに近づいて、自分の歌声を聴かせたとこ

ろ、その夜に彼のショーで4,5曲歌っていました。9才の時、

カントリー・スターになりたいと父に嘆願、家族全員でタニヤの

夢をサポートしていきます。何とか録音したデモが、カントリー

史に燦然とその名をとどろかせる名プロデューサー、ビリー・シ

ェリルの認めるところとなり、コロンビアと契約を結ぶのです。

 

・若かりし頃のタニヤ

 

当初レーベルはドナ・ファーゴの曲をデビューに選びましたが、

それを聴いた10代のタニヤは”好きだけど私の曲じゃないと思う”

と拒否。シェリルは同意し、その夜「ザ・トゥナイト・ショー」

でベット・ミドラーが歌っていた”Delta Dawn"を、翌日タニヤに

聴かせ、これが栄光のキャリアのスタートを飾る曲となりました。

13才による成熟したハスキーな歌声は、一瞬にして彼女をスター

ダムに押し上げ、時代のアイドルとなったのです。

 

 

1978年に「TNT」でポップ路線に走り、グレン・キャンベルとの

恋愛沙汰のゴシップも囁かれる等で80年代前半まで一時人気が停

滞しましたが、1988年の"One Love at a Time"のリリースから人気

が復活。"Strong Enough to Bend"や" Two Sparrows in a Hurricane"

(懐かしい・・・)など、90年代に至るまで安定した存在感を誇っていき

す。しかし、2002年の「Tanya」を最後に、時々姿を見せる程度

の、半ば引退したかのような状況になっていたのです。

 

 

オープニングの" Mustang Ridge"のコーラスから、70年代の全盛

期を彷彿とさせるハーモニーが、最近不足しがちなカントリーら

しい音楽を渇望している身には嬉しく響きます。これは決して古

い曲のカバーなどではなく、他のほとんどの曲共々、ブランディ・

カーライルと彼女のソングライティング・チームによるオリジナ

ル曲です。タニヤの故郷の地を冠した"Seminole Wind Calling"も

同様のイメージで、タニヤの人生や、その全盛期の音楽を反映し

た曲作りに腐心してるようです。バンドはアルバム全体を通して、

コンパクトにまとまった、穏やかでトラディショナルな演奏で和

ませてくれます。

 

タニヤの声は、初めて聴く人はそのドスの効き具合にびっくりす

るかもしれませんが、10代の頃から独特のハスキーな声の人で、

年齢相応な枯れ具合と言えるでしょう。そして、まだまだ力やソ

ルがこもっていると思います。実に強い声です。この声で歌われ

る、ミランダ・ランバートでヒットした”The House That Built Me”

(「Revolution」収録)の表現力には聴き入ってしまいます。

 

 

このアルバムはどうしてもハイウィメンの影がちらつく(シュータ

ーの父、ウェイロンは、ハイウィメンのモデル、ハイウェイメンの

メンバーだった、という関係も)のですが、やはり彼女らのナンバ

ー" The Wheels of Laredo"も収録(このタニヤ盤のリリースが先)し

ています。演奏はハイウィメン版より簡素で、タニヤの貫禄の歌声

で聴かせてしまいます。

 

 

そしてラストの、今年のグラミー賞でカントリー・ソング賞とカ

トリー・パフォーマンス賞、さらにはオール・ジャンル!のソング

賞にもノミネートされた”Bring My Flowers Now"。亡くなった友人

の葬儀に参列するようにもなったタニヤが、いずれ訪れる死に対す

る思いを綴ったような、味わい深いスロー・バラードです。円熟の

極地この曲にはタニヤ自身もソングライティングにクレジットさ

ています。

 

ひょっとしたら今月末のグラミー賞で、2004年にロレッタ・リンが

ジャック・ホワイトと組んで製作した「 Van Lear Rose」で受賞した

時の騒動のように、超レジェンドのタニヤがカントリー賞を席巻す

るような事件が起こるかも、とひそかに見守っています。

 

この「While I'm Livin'」が、「 Van Lear Rose」と同様に、

見事、カントリー部門で2冠を達成!しました。


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