ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Molly Tuttle モリー・タトル - ...But I'd Rather Be With You ~カバー集「バット・アイド・ラザー・ビー・ウィズ・ユー」の元歌情報

2020-09-05 | カントリー(女性)

★2022年のニュー・アルバム「Crooked Tree」のリリース予定をアップしました

 

 

昨年、初フルアルバム「When You're Ready」を取り上げました、

ブルーグラス~アメリカーナ系の有能なギタリストでありシンガ

ー・ソングライターのモリー・タトルが、急遽、という感じでセ

カンド・アルバムをリリースしてくれました。その動機がオフィ

シャルHPに綴られていますのでご紹介しますと、やはり新型コロ

ナ・ウィルスによる拡散でライブ演奏の機会が失われた事に大き

なきっかけがあったようです。その前にはナッシュビルで竜巻災

害の悲劇もありました。ギターを手にするインスピレーションが

なかなか湧きづらくなってた中、自分が少女時代から好きだった

曲に向き合う事で自分の音楽好きの心を取り戻していったそうで

す。

 

 

ブルース・ホーンズビーのプロデュース経験のあるTony Bergをプ

ロデューサーに迎え、自宅でPro Toolsや借りた機材でレコーディ

ングしたトラックを、Tonyはロサンゼルスに送り、そこでバンド

パートをオーバーダビングするという、リモート・レコーディング

で完成させたそうです。その作業の中で、Tonyが「これは宇宙飛行

士のやり方だ!」と言い続けた話も紹介されており、不思議なアル

バム・ジャケットと関係してそうですね。オリジナル曲のアルバム

の準備も進めつつあるそうですが、いましばらくはこのカバー集を

シェアしたいということです。

 

 

その曲目ですが、カントリー~ブルーグラス寄りから見てしまうと

「!?」となりそうなので、ここに全曲の元歌情報をまとめてみま

した。年代やジャンルも含めて見渡すと、とても興味深いです。

 

1.Fake Empire  

  ザ・ナショナル 「Boxer」2007年  インディー・ロック

 

2. She's a Rainbow

  ローリング・ストーンズ 「Their Satanic Majesties Request」1967年 ロック

 

3.A Little Lost

  Arthur Russell 「Another Thought」1994年 アヴァン・ギャルド/ポップ

 

4.Something on Your Mind

  Karen Dalton 「In My Own Time」 1971年 フォーク・ブルース

 

5.Mirrored Heart

  FKA ツイッグス 「Magdalene」2019年 アート・ポップ

 

6.Olympia, WA

  ランシド 「..And Out Come the Wolves」1995年 パンク・ロック

 

7.Standing on the Moon

  グレイトフル・デッド 「Built to Last」1989年 ロック

 

8. Zero

  ヤー・ヤー・ヤーズ 「It's Blitz!」2009年 オルタナティブ・ロック

 

9.Sunflower, Vol. 6

  ハリー・スタイルズ 「Fine Line」2019年 ポップ(元ワン・ダイレクションズ)

 

10. How Can I Tell You

  ユスフ/キャット・スティーブンス 「Teaser and the Firecat」1971年 ポップ

 

 

60年代フォーク・リバイバルのカレン・ダルトンから、2010年代

に世界的な成功を納めたワン・ダイレクションまでという、とてつ

もない幅広さです。特にテーマが有ってセレクトされたわけではなく、

個人的な思い出が蘇る曲として選んだらしいですが、年代、スタイ

ル、そして知名度など絶妙にバランスが取られていると思いました。

特に年代は60年代から10年代まで1曲あるいは2曲になってます。

 

ここには、ブルーグラスの家族バンド出身という確固たるバックボ

ーンを持ちつつも、同世代のポップスに親しみ吸収してきた当たり

前といえる今の女性の姿が見えます。アート・ポップのFKA ツイッ

グス(ケイト・ブッシュとかの後継になるんですかね?)や、どポ

ップなハリー・スタイルズを、フォーク・バラード風に処理して自

分のものにしていますね。

 

 

ヤー・ヤー・ヤーズあたりには、ボーカル・スタイルで影響を受け

たのでは、とか感じたりして、「When You're Ready」で見せたさ

りげないポップ・センスの理由がこの盤で分かる気がします。"She's

a Rainbow"は、ニッキー・ホプキンスの有名なピアノ・パートをギ

ターで軽やかに弾きこなす処が聴きモノです。このようなポップ曲

ばかりですが、しっかりナチュラルな一体感があり、メロディの魅

力が伝わりますね。個人的にお気に入りは、フォーキーな"Something

on Your Mind"(この曲、オリジナルがスゴい)です。

 

 

モリーは3才の時に自己免疫性の皮膚疾患の脱毛症という病気を患い、

基本はウィッグを使っているのですが、最近はありのままのスキン

ヘッド姿も披露するようになり、ホームページでも自身の考えを

語っています。゛誰もが同じであるというのは正常な考えではな

く、人には多様な美しさがある゛このような思いが、様式を大事に

するという印象のブルーグラスの出身ながら、挑戦的とも思える

大胆なポップ・カバー集を、(ニュー・グラス・ リバイバルのよ

に気負わずに)いともさりげなく製作させたのでしょうかね。

後もより個性的なサウンド創りやアーティスト・イメージを築

上げていってくれるような気がして楽しみです。

 

なお、日本盤も「バット・アイド・ラザー・ビー・ウィズ・ユー」

とそのままのタイトルで出るようです。


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