国立極地研究所(極地研)の竹原真美特任研究員を中心とする研究グループは、岐阜県神岡地域の船津せん断帯の地層から岩石「花崗岩質マイロナイト」を採取し、含まれる微小なジルコンの粒を回収しましたが、このジルコンを対象に、極地研の高感度・高分解能イオンマイクロプローブ(Sensitive high-resolution ion microprobe、SHRIMP-IIe)を用いて、ウラン-鉛法による年代測定および酸素同位体比の高精度分析を行った結果、神岡地域の花崗岩質マイロナイトは、約2億4300万年前に花崗岩として形成され、その後、約1億9900万年前までにせん断による変形作用を受けマイロナイト化したことが明らかとなった。つまり、せん断は約2億4300万年前から約1億9900万年前までの間に発生したことが分かった。
日本列島は、約2000万年前に日本海が拡大を始めるまではユーラシア大陸の一部でした。岐阜県と富山県の地層に存在する「船津せん断帯」は、大陸のせん断帯と比較することで日本列島が日本海拡大前にどこに位置していたかを解明するための鍵の一つとなることから、船津せん断作用の発生年代の決定は、日本列島形成史の研究において重要なテーマとなっている。
同せん断作用の時期が限定されたことは、日本列島の形成史の議論、特に日本海拡大前の日本列島と朝鮮半島や中国大陸、ロシア沿海州の関連を考察する上で貴重な情報であり、今後の研究への貢献が見込まれる。