★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇オイストラフ三重奏団によるハイドン、グリンカ、スメタナのピアノ三重奏曲

2020-09-21 09:58:03 | 室内楽曲

ハイドン:ピアノ三重奏曲第4番
グリンカ:ピアノ三重奏曲「悲愴」
スメタナ:ピアノ三重奏曲ト短調Op.15

ピアノ三重奏:オイストラフ三重奏団

          ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
          レフ・オボーリン(ピアノ)
          スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー(チェロ)

発売:1975年

LP:ビクター音楽産業 MK‐1072

 このLPレコードは、ヴァイオリンのダヴィッド・オイストラフ(1908年―1974年)、ピアノ:レフ・オボーリン(1907年ー1974年)、チェロのスヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー(1908年ー1963年)という、かつてのロシアの3人の名手による名トリオ「オイストラフ三重奏団」が演奏したハイドン、グリンカ、スメタナのピアノ三重奏曲集である。ダヴィッド・オイストラフは、1937年、ブリュッセルの「ウジェーヌ・イザイ・コンクール」(現:「エリザベート王妃国際音楽コンクール」)で第1位を獲得し、一躍その名を世界に知られ、第二次世界大戦後も世界的に活躍した。レフ・オボーリンは、1927年第1回「ショパン国際ピアノコンクール」で優勝し、一躍脚光を浴びる。教育者としても、ウラディーミル・アシュケナージなど数多くのピアニストを世に送り出した。スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキーは、モスクワ音楽院を卒業と同時にボリショイ劇場管弦楽団の首席奏者となる。1933年の「全ソ音楽コンクール」で優勝し、ソリスト及び室内楽奏者としても活躍。この3人による演奏の最初の曲は、ハイドン:ピアノ三重奏曲第4番。ハイドンは、ピアノ三重奏曲を1780年から1800年の20年間に31曲書いている。このLPレコードでのレフ・オボーリンのピアノの音色は、透明で、輝かしく、生気あり、リスナーを充分に楽しませてくれる。次の曲は、グリンカ:ピアノ三重奏曲「悲愴」。原曲は、ピアノとクラリネットとファゴットのために書かれている。ここでの3人の演奏は、ハイドンの曲とは打って変わって、相互に深く結びつきながら、心からの同郷のグリンカへの共感を持って演奏していることが、聴き進むうちにリスナーにじわじわと伝わってくる。3曲目は、スメタナ:ピアノ三重奏曲ト短調Op.15。この曲は、スメタナが31歳の時、わずか4歳半で死んだ長女のベドルジーシカを悼んで作曲された曲。このため、グリンカの曲と同様、この曲も苦悩と悲嘆に満ちた内容になっている。しかし、この曲の位置づけは、芸術的完成度の道へ進み始めた最初の作品として高く評価されており、リストは、この曲を「真の天才だけがつくりうる曲」と激賞したという。ここでのオイストラフ三重奏団の演奏は、グリンカの曲の演奏をさらに発展させ、深みのある曲の真髄をリスナーに十二分に披露して止まない。3人の息はぴたりと合い、精神的な葛藤を力強く表現し尽くす。オイストラフ三重奏団の質の高さを、思い知らされた演奏内容ではある。(LPC)


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇クラシック音楽LP◇カラヤ... | トップ | ◇クラシック音楽LP◇シャル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

室内楽曲」カテゴリの最新記事