★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇バックハウスのベートーヴェン:ディアベリの円舞曲による変奏曲

2023-11-16 09:37:26 | 器楽曲(ピアノ)


ベートーヴェン:ディアベリの円舞曲による変奏曲

ピアノ:ウィルヘルム・バックハウス

発売:1974年

LP:キングレコード MZ 5116

 ディアベリの円舞曲による変奏曲(ディアベリ変奏曲)は、ベートーヴェンが1823年に完成した晩年のピアノ独奏曲の傑作である。最後のピアノソナタ第32番がつくられたのは1822年であるから、ベートーヴェン最後のピアノ作品と言えるもので、内容もそれに相応しく、合計33の変奏曲が立て続けに演奏される様は、聴いていて圧巻そのものだ。ミサ・ソレムニスが完成したのが、この「ディアベリ変奏曲」と同じ年の1823年、そして第九交響曲が翌年の1824年に完成しているのをみれば、内容の充実度は推して知るべしといったところか。「不滅の恋人」とされるアントーニア・ブレンターノに献呈されていることでも知られる。33の変奏曲からなる曲というのもそう滅多にあるものではないが、そもそもこの曲の成り立ちからして少々変わっている。出版業者のアントニオ・ディアベリが、自分の書いた円舞曲を当時の有名作曲家に変奏曲を1曲づつ書かせて一儲けをしようと企み、ベートーヴェンにも依頼したが、ベートーベンはこの円舞曲の主題を「靴屋の継ぎ皮」と罵り、最初は無視した。しかしその後、考えを変え、作曲に取り掛かったのだが、結果は1曲どころか33曲に膨らんでしまったのだ。凝り性のベートーヴェンの性から来たのか、あるいは今後も、楽譜出版で世話になるかも知れないディアベリに、この際恩を売っておいた方が得策と判断したからかもしれない。ベートーヴェンは、著作権問題で裁判沙汰を起こすなど、意外に人間臭いところもあるのだ。このLPレコードでのウィルヘルム・バックハウス(1824年―1969年)の演奏は、凄まじく、一気呵成に33の変奏曲を演奏し、リスナーに考える暇を与えないかのようもある。しかし、決して無機質な演奏ではなく、そこには音楽以外のものを一切排除した、一徹な求道精神みたいな集中力の塊を聴く思いがする。今どきこんなピアニストにはもう逢えまい。ウィルヘルム・バックハウスは、ドイツ・ライプツィヒ出身だが、後にスイスに帰化した。ライプツィヒ音楽院に7歳で入学。16歳(1900年)の時にデビュー。1905年パリで開かれた「ルビンシュタイン音楽コンクール」のピアノ部門に出場し優勝。1930年スイス・ルガーノに移住。1946年スイスに帰化した。 1954年4月には日本を訪れた。1966年「オーストリア共和国芸術名誉十字勲章」を受章、またベーゼンドルファー社から20世紀最大のピアニストとしての意味を持つ指環を贈られた。(LPC)


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