★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ボロディン四重奏団のボロディン:弦楽四重奏曲第2番/ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番

2020-08-03 09:36:03 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

ボロディン:弦楽四重奏曲第2番
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番

弦楽四重奏:ボロディン四重奏団

        ロスティスラフ・ドゥビンスキー(第1ヴァイオリン)
        ヤロスラフ・アレキサンドロフ(第2ヴァイオリン)
        ドミトリ・シェバリン(ビオラ)
        ヴァレンティンベルリンスキー(チェロ)

 ボロディンは、ロシアのぺテレブルグの生まれだが、このぺテレブルグという土地柄は、民族的音楽運動の盛んなところで、ボロディンは、バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフらとともに「五人組」という名のグループを結成し、ロシア国民音楽の発展に寄与した。同時に、ボロディンは、ペテルブルク外科医学アカデミーの化学教授という役割を持っていたため、作品の数は多くはなかった。しかし、現在では、このLPレコードに収録されている弦楽四重奏曲第2番をはじめとして、交響詩「中央アジアの草原にて」、歌劇「イーゴリ公」、交響曲第2番などで親しまれている。これらの曲は、伝統的な音楽に根差すと同時に、ロシア的な民族的な哀愁を強く感じさせるのが特徴だ。ボロディンは、弦楽四重奏曲を2曲書いたが、第1番は、現在ではほとんど演奏されることはない。それに対し、第2番は、特に第3楽章の「夜想曲」と題されたアンダンテの楽章の哀愁を帯びたメロディーが何とも言えず甘美でであり、古今の弦楽四重奏曲の中でも人気のある曲となっている。この弦楽四重奏曲は、全部で4つの楽章からなるが、第3楽章以外もなかなか魅力的だ。この曲が、今でも人気があるのは、ドイツ音楽の上に、スラブの民族的衣装を身に着けているようだからかもしれない。一方、このLPレコードのB面にはショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番が収録されている。ショスタコーヴィチは、全部で15曲の弦楽四重奏曲を書いているが、一般にはこの第8番が最高傑作とされている。それは、「ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に捧げる」と書かれていることも大いに影響していると思われる。つまり“戦いの弦楽四重奏”だということだ。実際聴いてみると全楽章にわたり異様なほどの緊張感が漂い、ただ事ではない雰囲気が忍び寄る。これはショスタコーヴィチ自身の心の葛藤を描き出したのではないかという説が有力だ。ショスタコーヴィチは、外面はともかく、旧ソ連政府へ対する反発を最後まで持ち続けていたからだ。このLPレコードには、A面とB面とでは、まったく相反するような内容を持った曲が収録されている。普通のカルテットなら、お手上げのようなこの組み合わせでも、ボロディン四重奏団は、冷静に弾き分け、実に見事な演奏を披露する。ボロディン四重奏団は、ボロディンの曲では、明るい爽快感を前面に押し出す一方、ショスタコーヴィチの曲においては、内向的で暗く陰鬱な表情を巧みに表現する。このLPレコードは、ボロディン四重奏団の演奏の幅広さを見せつけた録音である。(LPC)


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