職員室のドアを開けた瞬間、真っ先に新卒くんの席に目を遣った。だがいつもの通り、彼はまだ来ていなかった。
毎日かなり出勤時間ぎりぎりに出勤する彼は、周りの教員がみんな来ていても、早く来る素振りもなく変わらずぎりぎりに来るのだ。
ある意味大物だな、と思っていた。ただ、遅刻はしたことがないのでもしかしたら計算しているのかもしれない。
おはようございます、と消え入りそうな新卒くんの挨拶が聞こえた。私の鼓動は心なしか早くなった。彼の顔を注視していたが、視線は私を通ることなく、開けられたノートパソコンに注がれた。
まあいい、今日一日のどこかで気づいてくれたら嬉しいな、と密かに思いながら、授業の話をするべく新卒くんの席のそばに近づいた。