新卒くんは、普段の冷たい態度とは裏腹に、思いの外私のことを気にしてくれているのだ、と感じたのが、一緒に行った研修の時だった。
その研修は、学習指導要領という学校の先生が絶対に教えなければいけない基準が新しくなることから、その説明会のようなものであった。多くの先生が参加している上、研修会場にはほとんどの先生が車で行っており、私も早めに車でその会場に向かった。
会場で、前の学校で仲が良かったイケメンの若い男の先生と久しぶりに会ったので、隣の席に座って色々と話をしていた。そうしているうちに、新卒くんが来た。
だがいつも学校にギリギリに来る彼は、この時もギリギリに会場に来たため座席が埋まっており、私がいる後方の席とは遠く離れた前の方の席に座った。
お昼も会場に併設された食堂で、イケメン先生と一緒に話をしながら食べた。
新卒くんの動向を気にはしていたが、何せ人が多く彼がいつ会場を出たのかは分からなかった。
午後は教科ごとに分かれるので、違う教科のイケメン先生とは別の会場に向かうと、新卒くんは既に座っていた。
しかし彼の隣は埋まっていたので、私は彼が見えるように二つ後ろの席を陣取った。下を向いていたのでこちらには気付かない様子だった。
研修が始まった時は良かったが、30分程過ぎると、新卒くんはさかんに耳を触るようになっていた。髪も時折触っている。私と話す時や考え事をしている時に髪の毛を触ったり、口に手を当てたりする新卒くんは良く見るが、耳を触る彼は初めてみた。
ちなみに調べたところ、髪の毛を触る心理は主に緊張や集中だそうで、口に手を当てるのは隠したいことがあるからだそうだ。
そして耳を触る心理は主に退屈やストレスとのことである。気持ちが行動に出てしまう新卒くんが可愛くて愛しかった。
研修は終わり、特に新卒くんと話をすることもなく帰宅の途に就いた。しかし次の日学校で顔を合わせた時に、びっくりすることを言われた。
