新卒くんに、全体会会場の体育館で、仲良さそうに話していた女の先生は誰?と尋ねてみた。
するとあっさりとこういった。
「ああ、高校1年生の時の担任の先生ですよ」
私は拍子抜けした。それだとあの笑顔も親し気な様子も納得できた。
そういえば、昨日私が挨拶した男の先生は新卒くんの2~3年生の時の担任とのことだった。
前に新卒くんから聞いた打ち明け話の時に、高校1年生の時も、2~3年生の時も、2人とも同じ教科の先生だと教えてくれたのだ。
二人ともすごくいい先生だったからこの教科の先生になろうと思ったのだ、と先生を志した理由を話してくれたことも思い出した。
それなのに気持ちが先走ってしまい物凄い嫉妬心に駆られてしまったことを、心の隅で恥じたが、勿論表には出さなかった。
「そっか、だからあんなににこに話してたんだね」
「まあ、久しぶりに会えて嬉しかったんで。○○先生、初めての担任だったこともあってか、すごく熱心だったんですよね」
そんな話をしながら、分科会会場の教室に着いた。4種類あるが、その中のどれを聞いてもいいことになっているので、私はさりげなく新卒くんに付いてきてそのまま一緒に会場に入った。
新卒くんの隣はまさに至福の時だった。昨日体育館や教室で隣だった時よりも、彼を堪能できた。
頭をくしゃくしゃさせ、口を手のひらで隠しながら真面目にメモを取る新卒くんを、横目でちらちらと見る。今日は机があるので、楽な姿勢でゆったりと新卒くんを観察出来た。
もっと新卒くんを見ていたかったのだが、残念ながら研修は終わってしまった。丁度昼だ。そこで私は勇気を出してみた。
「新卒くん先生、この後お昼一緒に食べに行かない?」