新卒くんからの、私があげたお餞別のお返しの中に、カステラと一緒に入っていた手紙を、ゆっくりと開けた。
封筒はピンク色だったが、中身は白く無機質な便せんだった。わざわざ封筒を買ってくれたのかもしれない。
封筒は筆ペンだったが、中身の手紙はボールペンだった。
ぱぴろん先生(実際は本名だが)、で始まる手紙の内容は、こんな感じだ。
要約すると、一年間の授業やテストなどについてのアドバイスへの感謝や、教員採用試験の対策への感謝、そしてそれをこれからの教員生活につなげていきます、というものだった。
そして最後は、ぱぴろん先生もどうぞお体に気を付けて、健康にお過ごしください、という一文と、新卒くんのフルネームで締められていた。
嬉しかった。
新卒くんが一生懸命書いたであろう、ぎこちないけれどとても丁寧で几帳面な字。
綺麗に三つ折りにされた紙。
そして、私のあの短いメッセージカードへの返事となるであろう、内容。
好きでした、なんて言葉が書かれてあるとは期待していなかった。まあゼロだと言ったら嘘になるが、そんな言葉を今の手紙に書けるぐらいなら、とうの昔に私と彼の関係はどうにかなっている。
ただ、手紙を書いたのが私だけではない可能性は大いにあった。真面目な新卒くんの事なので、私以外の先生にも、同じような内容の手紙をお返しに入れているかもしれない。
と次の瞬間、手紙の余白に、前に書かれたであろう文字のかたが写り込んでいるのが見えた。
何が書かれてあるか知りたい、と思った私は、ある行動をとった。