僕はまったく詩に詳しくないのですが
それでも
レイモンド・カーヴァーの詩集は
なぜか持っているし、
それ以外にも幾つか詩の
アンソロジーみたいのも
持ってるんですね。

その中で、
ほんとなんとはなしに
アレン・ギンズバーグの詩は
気になっていて、
まあ、ごく簡単にいうと
「好きだな、これ」と
思っていたわけです。

ところが、
彼の詩集って見つからないんですよね。
いえ、
そこまで真剣に
探してないんですけど、
なんかむちゃくちゃ古いのが
高値で売ってるのを
見かけるくらいだったんです。

ってところに、
「え? マジ?」と
思うニュースが。

この6月30日に
『吠える』の新訳が
出るというじゃないですか。

こりゃ、楽しみだなと
幾日か前から指折り数え、
当日はリモートワーク中では
あるのだけど、
午前中は小説書きに使ってもいるので
(いえ、サボってるんじゃないですよ)、
その帰りにジュンク堂に寄って――
などと考えていたんですね。

だのに、
行ってみると
ないんですよ。
あの柴田元幸さん訳なので
絶対にあるだろうと思ってたのに!

諦めきれずに
池袋西武の本屋にも行き、
ま、ないだろうと思ったけど
まったくもってその通りで、
11時からはWeb会議だから
急いで帰らなきゃならないしで、
まあ、
その日は
かなりうんざりしました。

だけど、
ま、冷静に考えれば
大昔に出た詩集なんて
大々的には売らないんでしょうね。

ってことで、
Web会議終了後すぐに
ネット注文しました。



いやぁ、
これはすごいですよ。

なんていうか、
言葉が本来はじめに
受け取られるべき脳の外側を
なんなくかわして
直接内側にたどり着くっていうか、
言葉の持つ
《音》としての心地よさを
体験できるっていうか、
とにかくすごいんです。

訳されてて
これなんだから
原著の《音》、《リズム》は
いかばかりだろうと思います
(いえ、原著じゃ読めませんが)。

ま、
僕の拙い言葉じゃ
伝わらないでしょうから、
どんな感じか
ちょっとだけ抜粋しときますね。

吠える』の

ぼくは見た ぼくの世代の最良の精神たちが 狂気に破壊されたのを

って冒頭部分は有名ですが、
僕は

時を超えた永遠に一票を投ずべく 屋根から腕時計を投げ捨て 目覚まし時計がその後十年毎日 頭に落ちてきて、
 三回続けてリストカットに失敗し、仕方なく骨董店を開くことを強いられ ここで老いていくのだと思って泣き、
 マディソン・アベニューで無垢なフランネルのスーツ姿で生きたまま焼かれ 鉛の詩文の砲撃 流行の鉄の連隊のカタカタ満タンの喧噪 広告の妖精たちのニトログリセリンの悲鳴 悪意ある編集者たちのマスタードガスに埋もれて あるいは酔った絶対現実タクシーに轢かれて


というとこが
なんだか好きですね。

『絶対現実タクシー』ってなに?
とは思うけど、まあ、
それはいいでしょう。
他にも『象徴的卓球台』とかも
出てきますからね。

また、

ぼくはあなたとロックランドにいます
  ぼくたちは電気ショックで昏睡状態から起こされる ぼくたち自身の魂の飛行機が  屋根の上で立てる轟音によって 飛行機は天使の爆弾を落としに来た 病院が自ら光を発する  想像の壁  崩れる  ああ痩せっぽちの軍勢が外を走る  ああ星条の慈悲なるショック 永遠の戦争がやって来た  ああ勝利よ きみの下着を忘れろ ぼくたちは自由だ
ぼくはあなたとロックランドにいます
 ぼくの夢のなか あなたは海の旅から帰ってぽたぽた水を垂らし アメリカを横断するハイウェイを泣きながら歩いている 西部の夜の ぼくのコテージの扉に向かって


ってとこも好きです。

 

(↑表紙を取っても素敵ですよ)


なにより
あの
カリフォルニアのスーパーマーケット
が載ってるのが最高です。

今夜ぼくはどんなにあなたを想っているかウォルト・ホイットマン、ぼくは裏道を木々の下、頭痛を抱え自意識を抱え 満月を見上げて歩いていた。
 空腹の疲労に包まれ、ぼくはイメージを買いもとめようと、ネオンフルーツスーパーマーケットに入っていった、あなたの言葉の列挙を夢に見ながら!
 何たる桃、何たる陰影! 家族全員何組も夜のショッピング! 夫たちで一杯の通路! アボカドに囲まれた妻たち! トマトに埋もれた赤ん坊たち!――そしてあなた、ガルシア・ロルカ、西瓜のかたわらであなたは何をしていたのです?


僕が前から持ってた
アンソロジーに
載ってるのよりも
訳はいいですよね。

ま、ここまで書いても
伝わらないのでしょうが、
ちょとでも興味が出てきた方は
ぜひ読んでみてください。

ほんと
すごくお勧めですから。
 

 

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