Festina lente!〜悠々として急げ〜   

Festina lente!〜悠々として急げ〜   

日々の希望は、フィギュアスケーターの存在。
さまざまなこと。さまざまな幸せ。

 

 

 

 

 

足首の治療中だということは誰もが知っていた。

なのに、自らがプロデュースしたアイスショーを決行するって?

 

「Continues ~with Wings~(コンティニューズ・ウィズ・ウィングス)」。

 

「i」あるこだわりのロゴマークに、期待値はどんどん上がるものの、

一体、どんなものを見せてくれるか、全く予想もつかなかった。

 

彼がMCとなって、ゲストスケーターの演技を紹介する?

トークショーがメイン?

 

実際に観客席についても、

それから起きることは想像すらできなかった。

 

ただそこにいて、元気な姿を見せてくれればいい。

あの日会場を埋め尽くしたファンは皆、

同じような気持ちだったと思う。

 

彼が敬愛するゲストスケーターたちの演技は

言うまでもなく素晴らしく、

会場全体が彼への想いに満ちていた。

 

本当に幸せな空間だった。

 

 

そして、暗転。

リンクに浮かび上がったシルエット。

 

私は、きっと驚きの声を出していたと思う。

すぐに、会場を揺るがすほどの悲鳴にかき消されたけれど。

 

 

『ツィゴイネルワイゼン』の衣裳を身につけた彼がそこにいた。

 

滑れるようになったんだ。

リンクに戻ってきたんだ。

 

ただただ、そのことがうれしかった。

 

 

もちろん、ノービス時代からの名プログラムを

衣装も同じく、メドレーで演じてくれたことも大きな喜びだった。

 

「目に焼き付けてください」

 

そんな言葉に、笑ったり泣いたり。

 

 

トークコーナーで、プルシェンコさんに

「君が私のヒーローだ」と言われたときのはにかんだ表情。

 

「何落ち?」といたずらっ子のように煽ってきた笑顔。

 

 

そして。

「ーー生きていてよかった」

 

絞り出すようにつぶやいた彼の言葉を、

私は決して忘れない。

 

この一言を口に出せるまで、

どれだけの苦しい時間があったか。

想像することもできない。

 

ただ、それを言い終えた彼は、

どこかほっとしたようにも見えた。

 

だからこそ、それを私たちの前で言ってくれたことを

しっかり、重く受けとめたいと思った。

 

彼の言葉はいつも、心配になるほどむき出しで、

まっすぐこちらの心に刺さってくる。

 

でも、そんな痛みならいくらでも投げつけてくれていい。

星の数ほどある私たちの心で分け合えるから。

 

幸福な3日間だった「Continues ~with Wings~」。

終演後に外に出ると、朝からの暴風雨が嘘のように上がり、

美しい光が差していた。

 

会場からどんどん流れてくる、たくさんの笑顔、泣き顔。

そのどれもが幸せそうに輝いている。

 

「私こそが嵐だーー」。

 

そうだった。

羽生結弦が起こす嵐なら、何度でも。

 

 

 

 

 

 

 

 

(2024/4/13)6年目を迎えて〜

 

 

*メドレー曲リスト*

2004-2006シーズン フリープログラム 「ロシアより愛を込めて」

2010-2011シーズン  フリープログラム 「ツィゴイネルワイゼン」

2014-2016、2017-2018シーズン ショートプログラム 「ショパン バラード第1番」