仕事帰りの夜空を眺めると、美しい満月が。
網膜剥離の手術をしてから視界が鮮明になったので、術前よりずっと美しく感じられた。
そんな美しい月を見て、百人一首のある歌を思い出した。
心にも あらで浮世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
これを詠んだ三条院も、眼病を患っていたとされる。
現代の医療技術があれば、帝も視力を失わずに済んだのかもしれないと思うと、なんとも複雑な気持ちになった。
ただ、現代に生まれることが出来たことに感謝しつつ、帝の見ることの叶わなかった月を、心に刻みつけるように見つめ続けた。