「おつ~!」
「カツーン!」
 ビールグラスの音が響きます。
 本日のカレンさんちの小さなバル開店です。
「いやー!じめじめ!今日も肌ざむーい雨模様でとうとう梅雨だねえ。のぞみくん」
「はい。カレンさん。でもまあ、いろいろと初夏が旬の食材も出回って楽しい季節でもありまして、今日はこれを用意しました」


「まあ!オウツクシイおすがたのあゆゆじゃーん!こっちにらんでますけど!」
「はい。それと地物のアサリと湘南トマトです」
「ふーん。んで、どうすんの?あゆゆ」
「はい。まずはフライパンにオリーブオイル、ニンニク片を入れて熱し、ニンニクの香りを移し、アユを両面、こんがりと焼きます」


「次にアサリ、トマトを入れ、白ワイン、コンソメ、を振りかけ、バターを乗せます」


「あとはフタをして数分煮込めば…」


「『アユのアクアパッツア』の完成です」
「おー!豪華だー!」
「お味はいかがですか?カレンさん」


「うんうん!さっぱり淡白なお味のあゆゆが独特の香りとあいまって、ふーん!て鼻にぬける感じが初夏あーて思わせてくれる!アサリもいい出汁だしてるしー、こりゃシャレオツな店でしか食べられんシロモノだねー!
「それはよかった」
「あ、そいやさ。のぞみくん。この前、おもしろいもん聞いたんだけど」
「なんですか?」
「知り合いのさ。こども。小学一年生の娘なんだけど、好きな男の子がいるんだって。『どういうとこが好きなの?』ってお母さん聞いたら、なんてたって思う?」
「さあ」
「『男らしくないとこ!』だって!」
「へえ。『男らしくないところ』ですか。おもしろいですね」
「そう!じゃあ、ダメじゃん!って思うよね。でも聞いたら『えっとね!らんぼーなことしないしー!えっちなことしないしー!えらそーなことしないしー!だから好き!』だって!」
「なるほど。男性の負の部分を指して『男らしい』としているわけですね。そういう暗黒面がない彼が好きだと」
「そうなのよ。で、思ったんだけど。サッコンさー。んな事件多いじゃない?未成年にチューしちゃった元メンバーとか、『おっぱいさわっていい?』とか言っちゃった元役人とか、学生に『相手チームのエースつぶせ』って命令した元監督とか。あとアメリカの『#ミートゥー』だとか。あんなのホント『男らしさ』のカタマリだよねー!」
「そうですね。これが女性だったらありえないはなしばかりですね」
「ううん!あるっちゃあるのよ。おんなでも!『このハゲー!』の元女性代議士。あ、元なのは女性じゃなくて代議士のほうね
「知ってます」
「でもさー。政治家になるくらいの女性だったら、十分男らしいと思うわけだから。これもアリだよねー
「そうですね。思うんですけど、人類進化の過程で、他の動物を『狩る』ことや、伴侶の『奪い合い』や、他部族との『争い』や、そいうこと繰り返して『男らしさ』はできあがってきたわけですけど、今はもう、社会自体が、そういうものを必要とされなくなってしまっているんでしょうね
「んじゃあさ。わたしらが知ってる『男らしさ』ってなに?いい意味で
「んー、『自己犠牲』…社会や他者、特に家族を身を挺して守るところですか?」
「そう!じゃあ、それって『女らしさ』にも言えなくない?いい意味の!」
「あ、はい。そうですね」
「そうなのよ。けっきょくさ!おとこもおんなもおんなじ!他の人をウヤマッテ、イツクシム。んで、自分のことは二の次にする!それが『ニンゲンらしさ』ってことなのよ。個人個人でやりかたが違っていたりするけどさ。それが『男らしさ』『女らしさ』って言われたりするだけなんだと思うなー。ね?そう思わない?」
「ですね」