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ある韓国人外交官が明かした「文在寅政権と外交部の意思不疎通」 韓日関係が好転する日が来るとしたら…

2019-09-17 16:45:09 | 文在寅(ムン・ジェイン)大統領

ある韓国人外交官が明かした「文在寅政権と外交部の意思不疎通」

韓日関係が好転する日が来るとしたら…

2019.09.17  現代ビジネス  近藤大介


緑字は近藤氏の質問

「タマネギ男」強硬任命の背景

――秋夕の連休、韓国の外交担当者たちは、ゆっくり休めているのか?

「秋夕でもオフィスに電気がついているのは、権力闘争に明け暮れている青瓦台、法務部、大検察庁

くらいのものだろう。われわれは幸い、何の権力も持っていないので、久々の休暇を満喫している。

その間、青瓦台から命令が降ってこないので、すがすがしい気持ちでいる」

――9月9日、文在寅大統領は、「タマネギ男」こと曹国(チョ・グク)ソウル大学法学部教授を、

法務長官に任命した。剥いても剥いても疑惑が出てくるから「タマネギ男」と呼ばれ、このニックネーム

は日本でもすっかり定着した。曹国氏の法務長官任命について、どう捉えているか?

「曹国氏が9月3日、11時間近くも記者会見を開いたり、6日に足かけ14時間に及ぶ国会の聴聞会を

開いたりしている頃、われわれのオフィスでも、『彼は任命されるだろうか?』と話題になっていた。

だが実際には、私も含めて(韓国の)外交官たちは、誰もが内心、『文大統領は任命を強行するに

違いない』と確信していた。それは、これまで2年4ヵ月の間、われわれは常に、青瓦台の強引な手法に

従わされてきたからだ。

結果は、やはり文在寅大統領は、9日に曹国氏を強硬任命した。その際、『深く悩んだ末に決断した』

と述べていた。その映像を見て、『そんなはずはないだろう』と思った。『深く悩んだ』のは、曹国氏を

任命するかしないかではなくて、任命するにあたって、どんな言い訳をつけるかだったのではないか」


――日本から見ていると、あれだけ多くの疑惑を抱え、妻が在宅起訴までされている人物が、法務長官

(法相)に任命されること自体が信じられない。ソウルでは、納得して受けとめられているのか?

「われわれのオフィスでも、正直言って、『それはないだろう』と考えている官僚が多い。口では

言わなくても、ソウルの官庁街にはそういったムードが漂っている。

だが、よく考えてみてほしい。現在、曹国新法務長官について言われていることはすべて、あくまで

『疑惑』であって、確定した犯罪ではない。

では確定した犯罪は、誰によって定められるかと言えば、裁判所だ。だが裁判所は現在、文在寅政権が

完全に掌握している。

裁判所に被疑者を持って行くのは、検察だ。だが文在寅政権は、『検察改革』を掲げて、徹底的に検察を

弱体化させようとしている。

そうなると、曹国法務長官の疑惑は裁かれるだろうか? むしろ、すべての疑惑に『無罪判決』が

下されて、曹国長官が『疑惑はすべて晴れた』と、胸を張る日を迎えるのではないか」


官僚にとっても理解不能な政権

――そうなると文在寅大統領が、自らの後継者として曹国長官を、次期大統領候補に推すということも

考えられるか?

「それは、十分にあり得るだろう。『悪の検察を叩きのめした正義の法務長官』として、与党・共に

民主党の公認大統領候補に押し立てていくという流れだ。われわれ韓国社会は、熱しやすく冷めやすい

ところがあるから、2年経ったらもう『タマネギ男』などと言わなくなっているかもしれない」


――それでも、あの「タマネギ男」が次期大統領候補など、日本から見ていると、とうてい理解不能だ。

「もちろん私も、個人的には理解不能だ。だが文在寅政権には、日々仕えていて実感しているが、正直

言って理解不能なところがある政権なのだ。

例えば、ある外交政策について、われわれが青瓦台から『提案を出すように』と指令を受けたとする。

するとわれわれは習慣として、最低二つの案を持参する。『A案がベストと思います。

なぜなら……だからです。しかし、もしA案がお気に召さなければ、B案という選択肢もあります。

その際には……という展開になります』。こんな調子で、青瓦台へ行ってプレゼンテーションを行う。

だが、結果はどうなるか? 思いもよらないC案が青瓦台から降ってきて、『これでやってくれ』と

なるのだ。そのC案とは、われわれが内部で『最悪のケース』として、絶対に青瓦台に上げなかった

ような類いのものだ。そんなことが、この2年あまりで、もう何度も起こっているのだ」


――日本でも、「政治主導」を掲げた民主党政権時代(2009年〜2012年)に、似たようなことが

あった。だがそんな状態になると、官僚たちはリスクを回避するため、サボタージュに走るようになる。

「いまの韓国も同様だ。われわれも、これは国益になると思ってやった行動が非難されたりするため、

自ら積極的に動くことがなくなった。青瓦台から降ってくる、韓国の国益になるとはあまり思えない

ような指令を、黙々とこなす習慣がついてしまった。

だが、こんなことを続けていると、結局、犠牲になるのは韓国の国民だ。本当に、忸怩たる思いだ」

 
 

対日外交のエキスパートが…

――具体的に、対日外交について教えてほしい。7月1日、日本が韓国を「ホワイト国」(現在は

「グループA」=貿易優遇国)から除外すると発表した。これに対し、韓国は8月23日、日本との

GSOMIA(軍事秘密包括保護協定)を破棄すると通達した。この一連の流れを、ソウルはどう捉えて

いたのか?

「まず、『ホワイト国からの除外』については、青天の霹靂だった。その前週に大阪G20(主要国・地域)

サミットが開かれ、文在寅大統領と安倍晋三首相との韓日首脳会談は実現しなかったけれども、安倍首相は

自由貿易の拡大を謳っていたからだ。われわれは『日本からの真珠湾攻撃』とも呼んだ。

だが、そうだからといって、日本とのGSOMIA終了(破棄)に関しては、外交部も国防部も、強く

反対した。なぜなら、同盟国であるアメリカの強い反発が予想されたからだ。在韓米軍が実質的に韓国を

防衛している中で、『正面からアメリカに逆らう』という選択肢は、考えられなかった。

ところが文在寅大統領は、8月22日に開いた国家安全保障会議(NSC)で、一刀両断のもとに

『日本とのGSOMIAを終了させる』と決断してしまった。康京和(カン・ギョンファ)外相は、

北京からソウルに帰る途上にあり、文大統領の意向を、まったく知らされていなかったのだ」

 

――その後、アメリカは予想通り、猛反発した。すると8月28日、韓国外交部の趙世暎(チョ・セヨン)

第一次官が、ハリー・ハリス駐韓アメリカ大使を外交部に呼び、「失望したと言うのを自制してほしい」

と叱りつけた。

この光景には驚いた。ハリス大使は、前インド太平洋軍司令官で、米韓同盟の重要性を誰よりも深く

理解している人物だからだ。日韓のGSOMIA破棄によって、在韓米軍の生命と安全の脅威が増すの

だから、アメリカが「失望した」と反発するのは、しごく当然のことではないのか。

「私も個人的には、同感だ。あの時、趙世暎第一次官が、外交部で思い詰めたような表情をしていたのが

印象的だった。

趙世暎氏は、対日外交のエキスパートだったが、東北アジア局長を経て、2013年に外交部を退職して

いた。そんなOBを、文在寅政権が今年5月23日に突然、第一次官に抜擢したのだ。

趙次官は、外交部内では人望の厚い良心的な外交官として知られ、いつかは第一次官になってほしいと、

願っていた部下は多かった。だが、いろんな事情から出世の道を閉ざされ、自ら辞職した。

文在寅政権は、東京にも北京にも勤務経験があり、アジア外交の専門家である趙氏を引っ張り出し、

アメリカや日本に屈しない外交を求めたのだ。趙氏の豊富な経験からアドバイスをもらうのではなく、

趙氏に青瓦台の意向を押し付けるための抜擢だった。

だから趙氏は、最悪の時期に第一次官になってしまったと言える。外交部内では、正直言って憐みの

視線で見ている人が多い」

 

日韓関係は好転するか

――8月27日、李洛淵(イ・ナギョン)首相は、政府・与党・青瓦台高官が出席する会議で、

「日本政府が不当な措置を原状に戻せば、GSOMIAを再検討できると考える」と述べた。すなわち、

貿易問題と安保問題をセットにして解決しようという案だ。

この案について、安倍政権の幹部に質したら、「それを言うなら、歴史問題(徴用工問題)と貿易問題と

安保問題の3セットだ。もともとの日韓関係悪化の原因は、徴用工問題なのだから、そこを含めない限り

話にならない」と答えた。

「徴用工問題は、文在寅大統領と曹国法務長官にとって、反日の原点だ。それは、朴槿恵前大統領に

とって、慰安婦問題が反日の原点だったのと同じだ。

慰安婦問題は、当時のオバマ政権が仲介する形で、2015年末に韓日合意が結ばれた。だが現在の

ドナルド・トランプ政権は、韓国と日本の仲介に汗をかこうという政権ではない。そのため、文政権は

今後ますます、徴用工問題を声高に叫ぶようになるだろう。

加えて言えば、青瓦台は、徴用工問題とホワイト国の問題を、結びつけて考えてはいない。日本が

韓国をホワイト国から除外したのは、このところ韓国の産業が伸長著しいので、それを叩くために

意地悪したと捉えている。ちょうどトランプ大統領が、伸長著しい中国を貿易で叩いているようなものだ。

そのため、貿易問題を徴用工問題と結びつけるという発想自体がない」

 

――日本では10月22日、新天皇の即位礼正殿の儀が行われ、各国の首脳が列席する。韓国からは、

李洛淵首相が来日すると、日本側は見込んでいる。李首相は、かつて『東亜日報』の東京特派員を

務めた経験もあり、知日派として知られる。この時が、日韓関係が好転する転機となることはないか?

「10月のその件について、まだ青瓦台からの正式な決定は下りていないが、われわれはむしろ、

悲観的に考えている。李首相は、日本側と胸襟を開いて真摯に話し合うよりも、むしろ日本側に

強気に出て、韓国国内での人気取りを狙うのではないか。

同じ次期大統領候補として、曹国法務長官に強いライバル心を見せているのが、李首相だ。

10月の日本訪問が実現したら、自分の存在を韓国国内でアピールできる貴重なパフォーマンスの場と

考えるだろう。個人的には、李首相が次期大統領になることはないと見ているが、本人が野心満々なのは

感じている」

 

文在寅政権のホンネ

――そもそも文在寅政権は、なぜそこまで「反日」を貫くのか?

「いまの青瓦台の人々が見ているのは、一にも二にも北朝鮮だ。朝鮮戦争の休戦協定以降、66年も

続いている南北の対立を、一刻も早く終わらせたい。彼らにとっては、アメリカとの同盟よりも、

北朝鮮の同胞の方が大事なのだ。昨年9月に文在寅大統領が、平壌のメーデースタジアムで15万人の

平壌市民の前で演説したのは、文在寅外交のハイライトと言ってよいだろう。

その北朝鮮との友好親善を考えた時、南と北で共有できるのが、日帝36年の植民地の屈辱を、共に

味わったということだ。だから今年3月1日の『3・1独立運動100周年記念式典』を、南北共同で

行おうとしたのだ(北朝鮮側が応じず、南北共同開催は実現しなかった)。

重ねて言うが、文在寅大統領以下、青瓦台の人々にとっては、同胞の北朝鮮こそが味方であって、

北朝鮮と敵対しているアメリカや日本は敵なのだ。そのため、そもそも日本とのGSOMIAは、

今年11月で終了(破棄)したかったし、2年前にアメリカ軍が韓国に配備したTHAAD(終末高高度

防衛ミサイル)も撤去したい。それどころか、韓米合同軍事演習を永久にストップし、在韓米軍も

撤退させたい。アメリカ軍は韓半島(朝鮮半島)から出て行ってほしいというのがホンネなのだ」

 

――そうしたことを、本気で実現しようとしているとしたら、いつの日かアメリカは、文在寅政権の

転覆を画策するのではないか。

「アメリカがトランプ政権でなければ、そう考えてもおかしくないだろう。だがトランプ大統領は、

ホワイトハウスで誰よりも文在寅政権に強硬だったジョン・ボルトン外交安保大統領補佐官を、

9月11日にクビにしてしまった。

このニュースを聞いた青瓦台の人々は、歓喜した。今年2月28日に、ハノイで行われた米朝首脳会談が

決裂したのは、ボルトン補佐官の強硬姿勢が原因だと見ていただけに、『ボルトン解任はわれわれに

とって天啓だ』というわけだ」


――そのような文在寅外交を主導しているのは、外交部ではないのか?

「外交部は青瓦台から降ってくる指令を、黙々と実行しているにすぎない。重ねて言うが、時には青瓦台から要請を受けて、外交政策の建議をすることもあるが、それらが採用されることは極めて稀だ。青瓦台から、あってはならないような指令が下ることも少なくない」

 

結論はただ一つ

――それでは、青瓦台の中では、誰が外交を主導しているのか? 文在寅大統領が直接、指揮を執って

いるのか?

「文在寅大統領は、外交安保分野は、経済と並んで苦手で、自ら主導的には動いていない。それは

大統領の若手の部下たちも同様だ。

外交安保分野で文在寅政権の最大のキーパーソンは、文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別

補佐官だ。

もともとは金大中大統領が、アメリカ生活が長く左派の思想を持った文正仁・延世大学教授を

アドバイザーにして、『包容政策』(太陽政策=対北朝鮮融和策)を推し進めた。2000年の初の

南北首脳会談にも同行している。

続く廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は、外交安保問題が苦手で、文正仁教授と、世宗研究所のもう

一人の専門家を頼っていた。文教授は、2007年の2回目の南北首脳会談にも同行している。

そして現在、文在寅大統領は、外交安保問題を文正仁補佐官に頼り切っている状況だ。

9月9日も、文補佐官は高麗大学で講演し、『韓米同盟を活かそうとして南北関係がダメになっている』

『南北関係における最大の障害物は国連軍(在韓米軍)司令部』『われわれの基本は韓米関係ではなくて

南北関係』……と持論を述べた。学生との質疑応答では、ソウルのアメリカ大使館前でのデモを礼賛

するような発言もした」


――文正仁教授には、私も数年前に話を伺ったことがあるが、「金正日総書記に2回会った」と

自慢げに話していて、南北の統一を夢見ている感じだった。それは構わないが、周知のように北朝鮮は、

最近も短距離ミサイルの実験を繰り返しているし、すでに核保有国である可能性も高い。韓国としても、

もっと警戒してしかるべきではないのか。

「その通りだ。国防部も外交部も、文正仁補佐官にはカンカンだ。だがいまの韓国では、『二人の文』

(文在寅大統領と文正仁補佐官)は一心同体と言っても過言ではない。すなわち文補佐官の言葉は、

文大統領の言葉なので、しぶしぶ従っているような状況だ」


――最後に、日韓関係を好転させるには、どうすればよいのか?

「結論はただ一つ。2022年5月10日まで、じっと待つことだ。この前日に、文在寅大統領が青瓦台から

出ていくことが決まっているからだ。

つまり、文在寅政権が続く限り、韓日関係が好転することはないだろう。せめてこれ以上悪くならない

よう、韓国と日本の外交当局者同士が、意思疎通を図っていくことが大事だ」