中国が空母4隻目の建造凍結、電磁カタパルト導入も断念
中国で空母を建造できる造船所は大連と上海の2カ所で、大連が1隻目と3隻目、上海が2隻目と
4隻目の国産空母を建造する計画だった。関係筋によると、上海江南造船所で建造中の2隻目の
国産空母は当初、艦載機をリニアモーターで発進させる電磁式カタパルトを導入する予定で開発が
進められたが、実用化のめどが立たず、最終的に広く普及している蒸気式カタパルトの採用を決めた。
こうした曲折により2隻目の完成が遅れ、4隻目の建造開始のめどが立たなくなったという。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは4隻目空母の建造が凍結された原因として、
次世代艦載機や巨大艦艇に使用する原子炉の開発の遅れなどを指摘した。
このままだと30年時点での「国産空母4隻体制」は困難だが、旧ソ連の空母「ワリヤーグ」を
改修した中国初の空母、遼寧を活用する動きもある。
笹川平和財団の小原凡司上席研究員は「遼寧は訓練空母で、推進装置に不具合があるともいわれる。
ただ大規模改修が昨年行われており、作戦艦として使用する可能性はある」と指摘した。
ただ遼寧と、大連で建造された初の国産空母は射出機がなく、艦載機の推力だけで発艦するため
搭載燃料や武器の重量が制限されている。
中国の軍拡路線に暗雲 経済減速、米の対中圧力が影響
今年7月、中国が4年ぶりに発表した国防白書は、国際情勢を不安定化させているとして
米国を名指しで非難し、中国の軍事戦略に立ちはだかる米国への対抗姿勢を明確にした。
ただ空母戦略の後退を象徴として、中国の軍拡路線には暗雲が垂れ込めている。
北京の軍事筋は、中国の海軍建設のモデルが「空母打撃群を核心とする米国海軍だ」と説明。
一方、経済減速の中で巨大な陸軍の維持や空軍、ロケット軍の装備更新にも多額の支出が必要となり、
海軍が十分な財源を得られるかは疑わしく「現在の急速な艦艇建造ペースは今後減速していく」と
指摘している。
国産空母への導入を検討している電磁式カタパルトや原子炉などの実用化が遅れている現状も、
最新技術の開発を支える巨額資金の不足をうかがわせる。
米国が安全保障面も含めて対中圧力を強めていることが、空母の部品調達に影響し、建造の
遅れにつながっているとの分析もある。
軍事専門家は「2隻目以降の国産空母は旧ソ連海軍の空母とは異なる部品が必要になるので、
西側諸国からの調達が滞れば建造に影響が出る可能性はある」と話した。(北京 西見由章)