№181.H30.10.9投稿 「 要因として 」
 
先の記事をご覧くださった方から
そして 語り部を聴いてくださった方々から
遺体の取り違えの件について
大切な質問を頂いております
皆さんと一緒に考えたい部分でもありますので
その一部を記事として投稿させて頂きます
 
東日本大震災で
ご家族を亡くされた方が大勢いらっしゃいますが
当時置かれた状況が一人一人全て違いますので
ご質問の原因を全てに共通のものだと
考えることは不可能です
 
ですので
あくまでも私個人が体験した当時の状況から
( お話しできる部分に限定となります )
これまで要因であると感じたものを
お答えさせて頂きます事をご了承ください

 
①なぜ取り違えたのか
 
●発見された病院で
 父と弟によって母と祖母だと確認され
 警察の方が確認事項を手帳に記載した後で
 安置所に運ばれているのに
 安置所に渡る際に確実な引継ぎがなされなかった
 ( 他県の警察間でのやり取りや
   警察に限らず搬送した側と
   安置所側での情報の行き違い )

●家族が遺体に付き添うにも
 大きな余震が続き遺族も避難の必要があり
 母の遺体を運ぶヘリコプターに同乗できなかった
 
●自分の家族であるという遺族の思い込みから
 遺体の胸に張られる身元情報の書かれた紙に
 違う女性の名前を書かれてしまった
( 母の遺体に貼られた紙には
  取り違えてしまったご家族の
  女性の名前が書かれていたそうです )
 
 
②警察側とご遺族側の意思確認は
 どういう状況だったのか
 
●家族の証言で遺体の確認が行われ
 検案が終わり家族が引き取りに来ると
 手続きをしてそのまま引き渡されたのではないか
 
 私が現場にいたわけではないので
 以上の状況に沿ったものでなければ
 早期の引き渡しで火葬され
 お骨で帰ってくることは考えづらいからです
 また 引き渡しが行われた早期には
 DNAの鑑定がなされなかったと聞いています
 

③ご遺族の引き渡しの時期状況が
 拙速で混乱状況の中で
 行われてしまったのではないのか
 
●安置所では
 次から次にご遺体が運ばれてきましたし
 警察・救急・自衛隊・遺族他
 大勢の人がひっきりなしに出入りし
 大変に混乱している状況でした
 これも私の考えですが
 引き渡す側の
 早くご家族に返してあげたいという気持ちと
 家族を探す遺族側の
 早く帰ってきてほしいという気持ちが
 とても強く働いたように感じます
 ですから
 するべくして拙速になったというよりは
 ( 私の感情を抜いて考えても )
 遺体にかかわった人の心を尽くした行動が
 むしろそのような結果も生んでしまった
 その要素の方が大きいと考えています
 
 そして 火葬場も被災し
 使用できる火葬場がごく限られているところに
 大勢の人が亡くなってしまったため
 誰もが火葬することを急いだように思います 
 
その他
東日本大震災以前に
取り違えることなく確実に家族のもとに帰すための
確固たる規定が定められていなかったのではないか
この様な大災害で
大勢の人が一度に亡くなってしまう状況が
現実として起こりうることを
机上の議論のみで蔑ろにされていたのではないか

そのために
他人ではない家族が確認すれば
DNAの採取をせずに遺体の引き渡しが行われたり
自分の家族が帰ってきたとなれば火葬をし 
後のDNA鑑定が出来なくなったのではないか
 
水の災害だから 
顔が変わっているのではないか
また逆に
いつもの顔を想像していたのに
顔や体の様子が変わってしまっていた等
遺体に対面する前の 思い込みや想像・記憶と
現実の遺体とのギャップが大きかったのではないか
 
いつもと違う感じの服を着ていたので
自分の家族だとは思えなかった
同じ髪型 同じ背格好 似たような服装
着衣や身につけているものが一切ない状態で
何をもってその人と判断するのか
もし顔や体の様子が変わっていた場合
着衣無しでも 確実に家族は証明が出来るか
それを何をもって間違いなく証明するのか
歯形を探そうにも
歯科が被災してカルテが無い場合どうするのか
 
いつも一緒に暮らしている家族が
自分の家族を見分けることが出来ない現実を
人間の記憶の不確かさを私達は知るべきです
そのことを
心のどこかに刻んでおかなければ
また同じことが必ず起きるのではないでしょうか

 
この他にも
遺体の取り違えの要因があるのですが
私の家族だけの問題ではないので
その要因を探ることで
今後の減災のためになるとしても
ここに書くことはしたくありません
当事者だからこそ書けないこともあるのです
皆様には申し訳ありませんが
ご理解頂ければ幸いです
 
これはあくまでも
私個人の考えと意見です
皆さんは どのようにお考えになったでしょうか
 
               
 
皆さんに一緒にお考えいただくためにも
シェアして頂ければ幸いです
どうぞよろしくお願い致します_(_^_)_
 
              #語り部佐藤麻紀