------------------------------------------------------------------------------------------------------------

着床障害とは

 

体外受精において、良好胚を何度も移植しているのに、妊娠しない。または生化学的妊娠(化学流産)になってしまう場合、卵子の質や胚の問題ではなく、受け入れる母体環境に何か問題があると考えるのが着床障害です。

 

ただし、妊娠成立の要は卵子の質にあることに変わりありません。この卵子の質は年齢に関係しますから、年齢の高い方が何度も良好胚を移植しているにも関わらず陽性反応がでない、また流産を繰り返し起こしたというのは、加齢による影響であり、多くのケースで着床障害にはあたりません。そのため、明らかな着床障害というケースはごく少ないのではないかという医師もいます。

 

 

着床障害は不育症なの?

 

着床に関しては、一般的には不妊治療の領域と考えられます。

体外受精では「何度良好胚を移植しても妊娠しない」「何度も生化学的妊娠になる」ということも経験する方もいます。原因は前にも述べた通り胚の質によると考えられます。しかし、不育症リスク因子がごく早期に影響を及ぼした場合も「何度良好胚を移植しても妊娠しない」「何度も生化学的妊娠になる」という結果になるのではないかという考えもあります。

 

また、不妊治療中に流産を繰り返し不育症の治療が必要となる方や、不育症の方が妊娠しづらくなり体外受精などの不妊治療を行うこともあります。

このように、「不妊」と「不育」の境界は曖昧であるのが現状です。そのため対応にも違いがあるかもしれません。

 

 

不育症検査を不妊治療患者に実施した場合

 

不妊治療患者に対する不育症検査の実施に関する報告が2つあります。

 

1つ目は、3回以上の胚移植をしても妊娠が成立しなかった方で着床障害が疑われるケースに不育症検査を実施した報告です。 

3回以上の胚移植をしても妊娠が成立しなかった44人中29人になんらかの抗リン脂質抗体に関するいくつかの自己抗体が見つかりました。

 

また、何度も良好胚を移植しても、まったく妊娠反応がでないという方に対して、不育症検査を実施したところ約64%に血液凝固異常が見つかったと報告しています。さらに、生化学的妊娠を繰り返す着床障害の方へ不育症検査を行ったところ、不育症患者とよく似た結果となり自己抗体や血液凝固異常が見つかったとも報告し、これらから、着床障害は不育症の一部であると考えざるを得ないとしています。

 

2つ目は、不育リスク因子陽性が体外受精における着床障害を予測できるかを報告したものです。この研究発表は、40歳未満の胚盤胞移植を行った90症例に不育症検査を実施しています。臨床的妊娠をした症例に1つでも不育リスク因子が見つかったを陽性群とし、見つからなかったを陰性群として、その有意差を比較したところ、体外受精に至るまでの検査結果(FSH値や胞状卵胞数など)に有意差はなく、臨床的妊娠に至った陽性群15症例と陰性群30症例にも有意差はなかったと報告しています。また、初回胚移植で臨床的妊娠に至った28症例と、2回以上の胚移植を行っても妊娠に至らない32症例についても不育リスク因子陽性率に有意差はなかったとしています。このことから不育検査の結果は、着床障害を予測できないだろうと結んでいます。

 

2つの研究発表には、研究対象に違いもあり、一概に比べて判断することは難しいでしょう。ただ、何度も良好胚を移植しているのに陽性反応がでない方、生化学的妊娠を繰り返す方は、不育症治療を専門とする医師の診察を受けてみるのも1つの方法です。

 

 

i-wishママになりたい 不妊治療バイブル