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排卵誘発剤と一括りでいわれますが、卵胞の成長のために使う薬、早期排卵を抑える薬、卵胞を成熟させ排卵の引き金を引く薬の大きく3つがあります。
卵胞の成長のために使う薬、卵胞の成長を助ける飲み薬
作 用
卵胞を育てるのは自分自身が分泌するFSH(卵胞刺激ホルモン)で、このFSHを分泌し続けるように作用します。
種 類
❶ シクロフェニル、クロミフェン
❷ レトロゾール、アナストロゾール
特 徴
❶ エストロゲンに似た構造をしていて、内因性エストロゲン(卵巣から分泌されるエストロゲン)を押しのけて脳の視床下部にくっつくため、内因性エストロゲンは視床下部には届かずブロックされます。しかし、薬が持つエストロゲン作用はごくわずかなため、視床下部はエストロゲンが足りないと判断し、下垂体にFSHを分泌して卵胞を育てるように卵巣を刺激し続け、これにより卵胞が成長します。エストロゲンがブロックされることで、クロミフェンには子宮内膜が薄くなるなどの副作用があります。
❷ 閉経後の乳がん治療薬として開発されたアロマターゼ阻害薬は、アロマターゼ酵素がアンドロゲン(男性ホルモン)からエストロゲン(女性ホルモン)へ変換することを抑制する作用があります。この作用を排卵誘発に応用し、アロマターゼをブロックし、エストロゲンの産出を抑えることからFSHが分泌され続け、卵胞が成長します。
卵胞を育てる注射薬
作 用
卵巣に直接作用して卵胞を育てます。そのため、自分が分泌するFSHや卵胞を成熟させ排卵の引き金を引くLH(黄体化ホルモン)の分泌が抑制されます。
種 類
❸ HMG注射薬、FSH注射薬
❹ リコンビナントFSH注射薬(recFSH)
特 徴
❸ HMG注射薬は、FSHが高濃度である閉経した女性の尿からゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)を抽出してつくられ、FSHとLHの両方を含んでいます。製薬会社によって、FSHとLHの比に違いがあります。
FSH注射薬は、尿由来のゴナドトロピンから、さらにFSHを抽出してつくられているため、LHをほぼ含まない薬です。
❹ 遺伝子組み換え技術を用いてつくられた不純物を含まないFSH製剤で、ロット間の差がない安定した薬です。
ペン型の注射があり、容易に自己注射をすることができます。
早期排卵を抑える薬
作 用
下垂体から分泌されるLHを抑制するよう薬が作用します。体外受精の採卵手術は、排卵の直前の成熟卵胞から卵子を採取することが必要です。そのため、勝手に排卵が起こってしまわないように排卵を抑えます。
種 類
❺ アンタゴニスト注射薬
❻ アゴニスト点鼻スプレー
特 徴
❺ アンタゴニスト法による排卵誘発で使用する薬です。卵胞を成長させる注射薬(HMG注射など)を連日使い、一番大きい卵胞が14~16ミリ程度に成長したことを超音波検査で確認したら、ホルモン検査も踏まえて早期排卵を抑制するアンタゴニストを注射し、下垂体から分泌されるLHを抑制します。アンタゴニスト注射は、連日、または隔日になるなど、卵胞の成長や個々のホルモン環境によって変わってきます。
❻ ショート法やロング法による排卵誘発で使用する薬です。アゴニスト点鼻スプレーを1日3回、8時間ごと決まった時間に両方の鼻にスプレーすることで下垂体から分泌されるFSHやLHを抑制します。
ショート法では、採卵周期の初日から採卵手術の2日前まで連日使い、早期排卵を抑制します。
ロング法では、採卵周期の前周期となる黄体中期から始め、採卵手術の2日前まで連日使います。
卵胞を成熟させ排卵をコントロールする薬
作 用
内因性LHが分泌されない場合、また足りない場合に、LHの代わりに卵胞を成熟させ、また一般不妊治療では排卵の引き金をひくために作用します。
種 類
❼ HCG注射
❽ アゴニスト点鼻スプレー
特 徴
❼ ロング法、ショート法では、内因性LHが分泌されないため、LHの代わりになる薬が必要になり、多くの場合、HCG注射薬を使います。
ただ、排卵誘発剤で刺激したことで卵巣が大きく腫れた場合、HCG注射薬を使うことで卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こすことがあります。HCG注射薬から約34~36時間後に排卵が起こるとされています。
❽ アンタゴニスト法では、アゴニスト点鼻スプレーをLHサージの代用に使うことができ、これによりOHSSをほぼ回避することができます。また、自然周期法や低刺激周期法でも使うことができます。アゴニスト点鼻スプレーから約34~36時間後に排卵が起こるとされています。