最初から↓
http://ameblo.jp/takuyakubaku/entry-11217134640.html
ウィーン
ファミレスの自動ドアが、静かに開いた。
「寒っ…‼︎」
外に出た瞬間、たった一言の呟きで、息は白く凍りついた。ふわっ、とした白い空気が、空へと浮かび上がる。
冬の陽は、落ちるのが早い。まだ18時だと言うのに、街はすでに、明かりが灯っている。
薄暗い空からは、小さな粉雪が、チラチラと降っていた。
僕はダッフルコートのポケットに手を突っ込み、トボトボと歩き始めた。
彩乃の家へと。
『あ……』
歩いている途中、ふと足を止めた。中に着ていたシャツのボタンを、一つずつ掛け違えてた事に気がついた。
『まぁ、いいや』
僕は再び、歩き始めた。
こんな所で、シャツを脱ぐ訳にはいかない。
コートを着ているのだから、誰かに見られる訳じゃない。
そもそも、ボタンのかけ違いなんて、気にしない。気にしちゃいけないだ。
僕と彩乃の様に。
『あれ……?』
ずっと引っかかってた言葉が、頭に浮かんだ。
”僕と彩乃はずっと仲良し。二人三脚で、どんな困難も乗り越えられる。
そして、いつかは結婚し、男の子、女の子と二人の子供を授かるんだ。
最期、二人がジジイ・ババアになっても、同じ道を、一緒に手を繋いで、歩いていけるさ。“
付き合い始めの頃は、そんな妄想ばかり浮かべていた。
しかし、最近は違う。“他人”と付き合う、現実を知ってしまった。
自分とは違う考え、言葉の受け取り方の違い、生活習慣のすり合わせetc…。人と一緒に生きていくのは、こんなにも困難だと言う事に気がついた。
もちろん、幸せな面も多い。会話をすれば楽しいし、身体を重ねて、愛し合う事もある。
けど、その幸せよりも、困難に感じる瞬間の方が、多くなったのだとしたら……‼︎
「寒いっ……」
僕はもう、考えるのを辞めた。辞めてしまいたかった。
空から降り注ぐ、この雪の様に、頭を真っ白にしたかった。
【つづく】
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