やり切れない程 退屈な時があるわ
近所に住むゲイ友達のM男から、
「ねえこのオトコ、イケるわ〜!」
などと、朝っぱらから写真付きのLINEメッセージがよく送られてくるのだが、
今日送られてきたのは、裸の男の写真ではなく、可愛らしい富士山の形をした箸置きの写真だった。
「あら、可愛い。どしたのこれ?」
と問うと、近所の店で買ってきたのだという。
「このご時世で、毎日家で飯作って、毎日旦那と向き合って食べてると退屈で、せめて箸置きでも気分変えたくなるじゃん」
と、見た目の厳ついM男らしからぬ可愛らしい発言ではあるが、確かに言い得ている。
我が家も、この時世で毎日家メシとなり、作る料理こそネットでレシピを探しては、ちょこちょこ違ったものを試してはいるものの、もう自粛生活も6ヶ月目に突入しようとしている今、正直飽きがきている。
“確かに、M男の言う通り、皿やら箸置きやらを変えるだけで毎日の食卓も気分変わっていいかもね”
というわけで、我が家もこの週末は「皿探し」の旅に出ることとなった。
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同じくサンフランシスコに住むゲイ友達のNさんは、コロナ騒動の前には、彼の自宅でよく食事会という名のカラオケ会を開いてくれていたのだが、彼の素晴らしい手料理は、いつも素敵な皿に盛られていたのを思い出す。
“どんなに下手っぴな我が料理でも、あんな素敵な皿なら気分も上がって、日々の家メシが楽しくなりそうね”
と安易な理由で、Nさんちのような、オサレな食卓をめざすべく、向かうはサンフランシスコの隣町サウサリートにある「Heath Ceramics」という店だ。
どの皿もシンプルなデザインだが、色合いや質感がよく、大した料理もできない自分でも思わず見惚れてしまう。
話によると、市内の名の知れたレストランの多くがここの皿を使っているという。
しかし、店に並べられた商品の値札を見ると、どれもかなりの値段である。
洗ってるうちにすぐに欠けたり割ったりしてしまう庶民には、これはあまりにも高すぎるじゃないのよお・・・!
遥々隣町まで皿を買いに来たものの、手ぶらで帰ることになろうかというその時、店の端に、本来なら色やら形に分けて陳列されている皿が、適当に置かれている棚があるのをN君が見つけ、店の人に問うと、
「陶器を焼いた時に、imperfectionだったものは定価でお売り出来ないので、こちらで割引で提供しています。」
とのこと。
“素人の我らから見たら、正規品も少々難ありの品も、見分けつかないじゃないの”
と、その少々難ありの棚の中から、色も形もシンプルな割引された皿を選んでいくつか購入したのだった。
家に帰り、夜飯にと昨日の残り物のパスタでも、盛り付ける皿を変えたら気分も変わるものである。
コロナ禍の状況も長期化しそうな中、退屈な日々を、こうやって騙し騙し気分を上げて、なんとかやっている中年オカマの日々である。
Heath Ceramics
400 Gate Five Road, Sausalito, CA 94965
https://www.heathceramics.com/
サンフランシスコ市内やロサンゼルスにもショップがあります。
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