誰かと争うのではなく 誰かを憎むのではなく ④

 先週の土曜日の朝。

やり残しの仕事を終えようと朝からコンピュータに向かっていると、ベッドルームからN君がバタバタと出てきて、

「決まった!!!」

と半分涙目で突然叫んで驚いたのだった。

「え、ほんとに?!」

と自分も急いでCNNとFOXのサイトを確認すると、確かにCNNではバイデンの勝利を伝えている。

と同時に外が騒がしいので窓を開けてみると、サンフランシスコの街中から歓喜の声や、鍋を叩く音が響き渡っている。

日本のヤフーニュースなどを見ていると、日本国内ではトランプを支持する声も多いようだが、この国に住む異国人のオカマとしては、4年続いたこの国の混沌としたネガティブな空気から解放されると思うと、思わず胸が熱くなったのである。

「あたし、今夜は何日かぶりによく寝れそうな気がするわ」
「あたしゃ、4年ぶりにぐっすり寝れそうだわよ!」

と半分冗談、半分本気で友人たちと言いあったわよ。

実際には、まだ一部の州で開票が完了しておらず、またトランプも一部の州へ再集計を求めたり、裁判に訴えようとしているようだが、CNNもFOXもバイデンの勝利は確実視しているよう。

各国からもバイデン陣営に祝いの言葉が届いているようで、国内外でその週末はバイデンのニュース一色だったのだった。

その一方で、

“パーティの席や、友達や同僚と政治と宗教の話はするな”

などととアメリカではよく言われるが、今回それを身をもって実感した自分である。

たとえバイデン派が多くを占めるカリフォルニアであっても、隠れトランプ派はいるもので、そんな彼らとは、どう話をしてもわかち合えないのである。

どんなに仲の良い友達とであっても、そんな瞬間を感じることが多々あり、この国の二分化をますます感じたのだった。

バイデンは勝利宣言のスピーチで、

「これからは、赤と青に分断させようとするのではなく、結束させる大統領になる。」

と誓いそして、

旧約聖書の一節を引用してこう言った。

「すべてのものごとには時機がある。

建てる時。収穫の時。新たに種をまく時。そして傷を癒やす時。

これからは米国の傷を癒やす時だ。」



土曜の朝8時。我が家の外は、人々の歓喜の声。
途中で入る鳥の鳴き声めいた変な声は、N君・・・。
昼間っから、スパークリングワイン開けて、飲むわよ!



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