名探偵シャーロック・ホームズの名声がロンドン、イギリス中に広がる陰でアローウッドは相棒バーネットと共に一向に訪れない依頼人を待つ日々を過ごしている。
ある日、ホームズは高くて依頼できないという美しい女性がアローウッドのもとを訪れ、失踪した兄を捜し出して欲しいと訴える。
シャーロック・ホームズの影で活躍する探偵アローウッド。
ホームズと違い癇癪持ちで体型もふっくらで、美しい女性にも暴力にも弱い。
けれども、自身が関わった事件で犠牲者が出ると、どんな手を使っても、どんな窮地に陥ったとしても犯人を突き止めようとする姿勢こそが、彼の探偵としての矜持なのでしょう。
ホームズの活躍に嫉妬し、彼の推理力を一刀両断してぼやくアローウッドの相棒となるバーネットとのやり取りも楽しいですが、事件そのものはヴィクトリア時代にはびこる問題を映し出して重いものがあります。
また、コナン・ドイルのホームズの物語では描かれないような貧民街の現実を映すような描写なども、その時代特有の匂いが感じ取れるようでもあります。
それにしてもホームズに敵対心を燃やすだけでなく、特に<ボヘミアの醜聞>の真相を推理(妄想?)する場面が何よりもアローウッドの探偵としての資質が垣間見れるようで、彼の名探偵ぶりが見れるような物語を読んでみたくなりました。
ところで上記の<ボヘミアの醜聞>だけでなく、ホームズの物語を読んでいるとより楽しめるような点もいくつかあるので、ホームズ好きの人も一読してみて損は無いかも知れません。