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【アート/書評】横尾忠則「タマ、帰っておいで」-15年間共に暮らした愛猫の死、これは横尾さんからタマへのレクイエムだ

2014年|5月|31日

深夜0時20分頃、二階の部屋で空咳五、六回のあと、

妻に看取られて、タマ、息を引き取る。

 とあり、左ページに横尾さんに抱かれたタマの絵。日付は6月4日になっている。基本的にこの構成で作られているが、上のような短い日記は一度タマがやって来た2004年に戻り、2014年の死を経て、2018年まで続く。見開き左右の日記と絵の日付は近いものもあるけれど、かなりバラバラで絵は今年描かれたものまで収録されている。最初の方に「タマへの弔辞」、最後に「タダノリ君へ」という長めの文章が入っている。

 

  捨て猫だったタマが横尾家にやって来て、15年間同じ屋根の下で過ごした。これは愛猫タマへの横尾さんからのレクイエムだ。描かれた絵はなんと91点!最初は絵をチラチラと見ながら日記を読んでいき、すべて見終わってから絵をじっくりと見ていく。絵の数が半端ではないけれど横尾さん自身が

タマの肖像画を描く。

描くことで治癒される。

  と書いている。愛猫を亡くしたどうしようもない喪失感!眠ることもできなくなり、束の間の夢でタマの鳴き声を聞いて飛び起き「タマ!」と叫んでしまう、そんな日々。横尾さんの絵の中にはタマのすべてがあるのだ。様々な場所、様々な姿態、様々な眼差し…。それはまさに思い出の中のタマなのだろう。横尾家を訪れたオノ・ヨーコに横尾さんは言う。「アート作品にするのではなく猫への愛を描いた」と。オノ・ヨーコは「それこそアートじゃない!」と答える。

DATA◆横尾忠則「タマ、帰っておいで」2200円(税別)

 

◯勝手に帯コピー(僕が考えた帯のコピーです)

15年間一緒に暮らした愛しいタマが逝った

絵を描くことでしか

私は治癒されない。

 

2020.7.8  いやいやいや、政府も都も何もしない。やばいぞ、やばい。読書は上橋菜穂子「鹿の王 水底の橋」

 

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