「恐怖新聞」とは、1973年から75年まで週刊少年チャンピオンに連載されていた漫画ですが、当時、小学生の間ではやっていた思い出があります。

 

さすがに、小学生としては、怖かったので、購入して読むことができませんでしたが、今、大人になってみて改めて読んでみようと思って、手に取ってみました。

 

簡単なあらすじは、鬼形礼という中学生が、ある日突然「悪霊」に取りつかれ、恐怖新聞という予言的な記事が書かれた新聞が送られ、物語が進んでいくというものです。

 

毎回送られてくるごとに100日寿命が縮むという噂にさいなまされるなか、いろいろな経験をしていくのですが、ちょくちょく、人が亡くなるので、子供が読むには、抵抗がある内容です。

 

もちろん、内容は超常現象を扱うので、「信じるか信じないかはあなた次第」的なのですが、日本の社会や文化、それにまつわる事件や事故を、うまくからませているので、現在の日本の難点といいますか、それらを考察するのにも良いストーリーです。

 

例えば、「人を呪えば穴二つ」のような、戒め的なものもありますし、実際にあった事件になぞらえた、不思議な話など、興味をそそるものもあります。

 

また、「高校球児がどうしても自身がファンである『東京ギャランツ』というプロ野球球団に入りたいのに、ドラフト制度によって、好きな球団に入れない、このような職業選択に反した残酷なシステムなど無くなれば良い」なんていう議論は、昭和の当時、はやったなぁと懐かしい話もありました。(もちろん、ドラフト制度は、職業選択の自由に抵触するというのはウソであることは以前も議論しましたが)

 

あと、印象に残っているシーンで、何度か使われていたのですが、悪霊というのは、自身が助かるため、また、自身の利益になるため、手を変え品を変え周りの人間を巧みにだますんですよね。

 

例えば、身近な人の声色を使って、「助けて」と言って、だましたり、「朝までここから出ないように」と言われている人に、悪霊がそこから何とか出させるために、強い光を使って、朝だとだましたりしていました。

 

ここら辺は、悪霊を「特殊詐欺の人たち」に置き換えれば、そのまま現代にも当てはまります。

 

恐怖新聞にある人間模様は、やや古いものの、現在にも連綿と続く、人の弱さや、恐怖心、利己心などの中で右往左往しているもので、ずっと変わらないものです。

 

主人公の鬼形礼も、普通の中学生で、臆病な性格で、どこか自分勝手な部分もあるけれど、最低限の正義感もあります。何かあれば気が散ったり、迷いもあったりで、悪霊に付け込まれるみたいな人間は、我々の平均像ですね。

 

昭和、平成とほぼ変わらずにある、日本人独特の道徳心や背徳感など、超常現象という話題を使ってよく表現された作品だと思いました。