side satoshi




そして、いよいよ1週間後、おいらと翔君は
タイムマシンに乗って、元の世界に帰れる日がやって来た。
ディーラーの宮本さんと数人のスタッフさんが
マシンをスタンバイさせてる場所まで案内してくれた。

S「大野さん、聞いてよ。こっちの世界は凄いんだ。
 もう、何か過去に戻るの勿体ないよ。
 せめてあともう少し滞在するっていうのはどうかな?」

1週間の間に、こっちの世界をあれこれ見て回った翔君は
なかなかの興奮気味で、そうおいらに提案してきた。

O「いや、おいらはもう直ぐに戻りたい。
 翔君が嫌なら、おいら一人でも戻るから・・・」

S「えええっ?そんなぁ・・・」

n「さっさと戻って、こっちの二人を連れ戻して下さいよ。」

S「そ、そうか・・・こっちの大野さんとニノは夫婦なんだよね?
 ん、まあ、そりゃ戻って来なかったら不安だよね。」

O「そういうこと。」

S「大野さんが代わりをしてあげれば?」

O「だから、そういうことじゃないんだよ。」

S「そ、そうなの?」

O「いいから、戻ろうよ。」

S「う、うん・・・」

n「あ、待って!」

マシンに乗り込もうとしたら、ニノが慌てて
おいらの腕を掴んで、胸の中に飛び込んで来た。
その目はウルウルに潤んで、今にも泣き出しそうだ。

n「智・・・気を付けてね。必ず元の世界に帰って
  過去の俺と幸せに暮らして・・・」

O「うん、心配すんな。絶対こっちのおいらも
 直ぐに戻してやるよ。色々と世話になったな。
 ありがとう、ニノ。」

n「うん・・・元気でね。あなたは偽物だけど
  もう会えないって思ったら、やっぱり寂しいよ。」

O「んふふっ。だから、偽物言うなよ。おいらが本物だぞ。」

おいらはそう言ってニノと別れ、マシンの中に乗り込んだ。
マシンは殆ど自動操縦で、予め自分が行きたい時代の情報が
コンピューターに入力されてる。
車の内装みたいな前方のパネルには、デジタルで
2018.8.14.00:00
と、表示されてる。

『燃料は、十分補給してあります。座席に着いたら
 直ぐに安全装置を装着して、スタートボタンを
 押して頂くだけです。それでは、ご無事をお祈りしています。』

O「宮本さんも、有難う。色々お世話になりました。」

S「それじゃ、戻るとしますか?」

O「うん・・・」

宮本さんもマシンから降りて、いよいよだ。

S「それじゃ、スタートボタン押すよ?」

O「OK・・・」

流石に2人ともタイムマシンなんて初めてだから、
独特の緊張感は漂う。

S「あ、やっぱり待って!」

O「な、何?どうしたの?忘れ物?」

S「い、いや・・・大野さん、怖くない?」

O「えっ?怖くは無いけど・・・」

S「だって、成功事例あるとか言ってもさ、失敗する可能性だって
 ゼロじゃないんだよ?もしも失敗したら、俺達は
 元に戻れないどころか、死んじゃう可能性だって・・・」

O「翔君、最初っから失敗するってイメージするの
 一番良くないんじゃない?大丈夫だよ。おいらも一緒だから。
 帰って早く皆を安心させてやらなきゃ。必ず戻れるって。
 未来の技術を信じるしかないよ。」

おいらは不安に震える翔君にそっと右手を差し出した。
翔君は、おいらを見て頷くと、手汗でびしょびしょになった
手を上着で拭いて、おいらとガッシリ手を繋いだ。

S「それじゃ、幸運を祈るよ・・・行くよ?」

おいらがうんって頷くと、
翔君がマシンのスタートボタンに手を掛けた。

ニノ・・・
待ってろ。必ず無事に戻るから。 




つづく








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