「田村淳の聞きたい放題」(東京MX11月30日放送)で、オリンピックへの興味について、番組内で生放送中にアンケートをとったところ、


とてもある・・・8.9%
ある・・・18.2
ない・・・34%
オリンピックを返還すべき・・・38.9%


という結果になった。グラフにすると右の通り。

olympic

 番組では、オリンピック返還という選択肢があること自体が驚きの対象で、そんなこと思うやついるのか、という印象だったが、その選択肢が最多という結果となった。

 生放送中のインターネットや地デジボタンでの投票だったので、番組の内容がかなり影響したとも思われるが、一言で言うと、あまりのゴタゴタ、そしてその低レベルぶりにうんざりした、と思われた可能性もあり、オリンピックそのものが同行ではないようにも思える。その番組はどう進行したのか。

事実経過

 今年のドーハでマラソン競技が開催され、気温を考慮して真夜中開催になったにもかかわらず、体調を悪くして棄権する人などが続出した。

 それを受けて、IOCは10月11日、日本の組織委員会に開催移転案を相談、森会長は相談したい、と持ち帰り。

 15日に初めて都知事に移転案の連絡。

 翌日16日に移転案を公表、30日IOC調整委員会開催、11月1日に4者競技開催、最終決定券はIOCにある、すでに合意されたと発表。都知事は合意なき決定とコメントしたという。

どうして都知事に相談しなかったのか

 ここで、番組レギュラーの鈴木奈々さんがとてもいいことを発言した。

「森さんはどうして小池さんに相談しないで決めたのか」

 実は、11日にIOCから日本の組織委員会に相談があり、その後16日に移転案を発表しているだけで、決めてはいない。決まったのは、20日後の11月1日だ。

 その上、移転案発表の16日の一日前、知事には知らせている。だから知事には知らせたし、翌日の「公表」も、決定したわけではない。

 普通に考えれば、鈴木奈々さんに対して、ちゃんと聞いてたのか、と突っ込みたくなる人も出てくるだろう。

 しかし、IOCから内々に打診され、こちらで相談しますから待ってください、と答えておいて知事には知らせず、知事抜きで何らかの回答をしたからこそ、16日にIOCが移転案を公表したということだろう。アリバイ的に、公表の前日に知事には話を通しておいて、その直後移転案を公にしてしまった、という流れに見える。

 そしてIOCはこの問題について、決定権はIOCにあると言っているのだから、公表時点で事実上決定してしまったに等しい。

 つまり、表面的な事実だけの順序で言うと、知事には知らせたし、その後、案を公表したに過ぎないのだから、鈴木奈々さんの意見は、何を聞いていたんだ、といわれそうだが、実態をみると、巧妙に小池さんを外した上で、小池さん以外の日本側が事実上の同意をした上で、公表、それは決定と見ていいわけだから、まさに的を射たコメントということになる。

自民党内部では相談した?

 森さんは、知事には知らせず、特定の都議には知らせていたようなことを言っているし、ということは自民党内部では国レベルも含めて協議があったのではないか、日本の地理に詳しくないIOCが本当に札幌と言ったのか、日本側がむしろ誘導したのではないか、と都民ファーストの会の議員は言う。

 それはただの推測に過ぎない、と自民党側は反論するのだが、推測を交えて考えなければならないほど不透明にしたのは誰なのか、という問題が残るようにも思う。現実問題として、オリンピックは都市が開催するもののはずなのに、誘致の段階を含めて国の関わりが極めて大きいように思える。その中で、国との協議がなかったと考えるのは、いくら推測だと言われても不自然である。

費用は340億円

 移転に関わる費用の問題も複雑だ。

 道路の整備や救護などの通常の行政サービスは、札幌側になったと言われるが、暑さ対策用の舗装など通常の対応で足りるわけはない。残りの部分についても、東京都は負担しないと決まったらしいが、では組織委員会かと言うと、決めたのはIOCだという。IOCは予備費で対応すればいいと言うけれども、予備費は名目だけあっても財源がなく、チケットの売上の増収分を当て込んでいるらしい。しかし、チケットといえば払い戻しのほうが問題であるほどで、あてになどできず、結局国が負担することになりそうだ。

もううんざり

 話を通した、通していないからはじまり、とにかくすぐに東京都と相談しなかったことだけは間違いないのだが、そうなれば自民党の都議は小池さんが素直じゃないから医師の疎通がうまく行かない、というような言い訳をする。低レベルなガキのケンカにもうんざりするのだが、そのガキどものうち、片方だけが全面的に悪い、という判断を下すあたりも、聞いていて呆れるような話だ。

 一方の東京都の側も、今まで暑さ対策で、周りを納得させるほどの案を打ち出していたのか、というと、東京湾の大腸菌対策も含めて、心配になることばかりである。IOCも今になって急転直下、とも思うが、彼らとしても東京都が対策しているのを待っていたが、もう待てないから決断した、というところだろう。ギリギリになってこんなゴタゴタになったのは自分たちの責任ではないとでも言いたいのだろう、だから決定権はIOCにあるんだ、と大なたを振るう形になったのかもしれない。

 しかし、もとはといえばテレビ放映権の関係で真夏にやるしかない、などと金の亡者のようなやり方をしたのはIOCだ。またさらに、その前提を理解した上で、好記録が期待できる気象条件である、などと大嘘を言って立候補したのだから、日本や東京都はIOCの金儲け主義を批判する立場にはない。

 それに騙されたのは日本国民みなであり、コンパクトなオリンピックとか、今までで一番費用のかからないオリンピックなどと言われたが、蓋を開けてみれば、新国立競技場などむしろ今までで一番高額な部類の上、屋根がないため、暑さや雨、観客や選手のことは何も考えていないものが出来上がってしまっている。

 その上、その競技場はオリンピックのあと、おそらく民間に運営が委託されるが、固定資産税を免除する案を国が発表しているらしい。だが、固定資産税は都道府県税であって、国がどうこう言える話ではない。つまり、作った施設は十分にペイしますよ、という話にするために相当無理やりなことをする、ということだろう。

オリンピック返上が最多なのは当然

 ここで、冒頭のアンケートに戻るのだが、非常に興味がある人は8.9%、つまり十人に一人もいないのである。興味のない人は34%、返上の人も興味がないだろうから、合わせると72.8%は興味なしとなる。この数字でもやるべきなのか。そのうえ今からでもやめろという人が4割もいる。実際、マラソンと競歩だけとは言うものの、他の競技、特にビーチバレーなどは選手も観客もその場所にいることすらできないのではないか。

 そのうえ、今の議論でも明らかになったが、誰も選手の安全のことなど考えていない。このまま開催すれば、誘致のための賄賂問題も含め、オリンピックの歴史と日本にとてつもない汚点を残すことになりかねない。