私がまだ学生だった頃の話ですからだいぶ昔の話になります。当時私の父が単身赴任していた、日本ではバナナの産地で知られている南米のエクアドルという国へ遊びに行った帰り、パナマからグァテマラ経由ロサンゼルスへ向かう飛行機に搭乗したときのことです。

 

隣に座ったのは70過ぎと思われる、箒を持たせるとまさに魔法使いのようなおばあさんでした。彼女は飛行機が離陸するとき、やおら十字を胸の前で何度も切ってお祈りを始めたのです。そのときはノンクリスチャンだった私は、初めのうちは中南米の敬虔なカトリックのおばあさんかなぁ、くらいに思って特に気に留めてはいませんでした。しかし今度はロサンゼルスの空港に着陸するときにも、これまた幾度も繰り返し十字を切って念入りにお祈りを始めるのには、何か良からぬことでも起こるんじゃないか、とちょっと気色悪くなってきたことがありました。

 

ところが何となくモヤモヤした感じのままロスに到着して、日本人の知人が働いている事務所へ行ったときに、あの老女の執拗なお祈りの理由が判明したのです。事務所の若いアメリカ人男性スタッフのところへ、若い同僚と思われるアメリカ人女性スタッフが、「ハーイ、今日は13日の金曜日よ!」と快活にニコニコしながら話し掛けてきて、彼の方もこれまたにこやかに、「そだねぇー」と笑顔を返していたのです。

 

あのおばあさんの真剣なお祈りと、若い男女の明るいやり取りから受けた印象が好対照で、今でも13日の金曜日になるとこのことを思い出します。ちなみに13日の金曜日は1年のうちに確実に2~3回来るんですねぇ。余談ですが飛行機で隣に座ったおばあさんは、私が機内食で出たお昼ご飯を欠食児童のようにガツガツと食べているのを見て、哀れに思ったのか自分のおかずを半分私にくれた、本当はやさしいおばあさんだったのです。魔法使いなんて書いてごめんなさい。

 

 

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