土曜の日めくりカレンダーは「死しての千年より生きての一日」という諺でした。

 

聞いたことのないことわざでしたが、意味は分かります。

 

もちろん人によって「わかり方」は違うことでしょう。

 

人間は常に死とともにあるというのが本当の所でしょうが、コロナ禍によってそれが露になっている今日この頃、この諺はその重みが増しているような気がします。

 

さて、日めくりカレンダーの今日のことわざは「目で見て口で言え」でした。

 

入蔵は寡聞にしてこの諺も知りませんでした。

 

恥ずかしい限りです。

 

簡単に言えば見てもいないものについて軽々しく発言するなということでしょう。

 

でも、入蔵は早速その禁を破ることにしようと思います。

 

入蔵の真意は、その「目で見ていない事」について文句を言おうということではないのです。

 

それはおいおいお分かりいただけると思います。

 

つい三日ほど前、入蔵はある歯科衛生士から彼女が見たテレビ番組の内容についての話を聞かされました。

 

「先生聞いてくださいよ」という言葉から始まりました。

 

「先生、テレビでスケーリング(簡単に言えば歯石を取ること)をするところを、流していたんですけど、それが見たこともないやり方だったんです」

 

「どういうこと?」

 

「すごいんです。歯科衛生士かドクター(この場合は歯科医師のこと)かわからないんですけど、患者さんにのしかかるようにしてスケーリングしていて、保護メガネがびちゃびちゃになっているんです。で、感染がどうのこうのなのです」

 

入蔵からしたらその「どうのこうの」が「きも」なのですが、見ていないからわかりません。

 

例えば「歯医者さんって大変なお仕事ですね」という話なのか、「歯科治療での飛沫感染が問題ですね」という話なのかでは趣旨が全く違います。

 

しつこいようですが見ていないからわかりません。

 

それでも、入蔵がこの話を書こうとしているのは、その番組を母親と見ていたという別の歯科衛生士から

「うちの母が歯医者さんに行くのが怖いって言っていました」という話を聞いたからです。

 

素人の人が見たらそう見えたのです。

 

そう思った人がほかにもいたと考えても無理はないでしょう。

 

46日に厚生労働省から歯科医療機関の院内感染対策の事務連絡が出され入蔵の所にも今日FAXが届きました。

 

ここにこの連絡の内容を全て書いても仕方ないと思います。

 

患者の状態、渡航歴に注意すること、換気、感染リスクの低減に努めること、歯科医師の判断により応急処置にとどめる、緊急性のない治療の延期を考える等が要旨です。

 

普通の歯科医院なら当然考慮していることだと入蔵は思います。

 

ただ、皆さんにここで注意していただきたいのは、「歯科医師の判断により応急処置にとどめる、緊急性のない治療の延期」の部分の「歯科医師の判断により」というところです。

 

例えば、患者さんが「この頃歯が痛いけど、大丈夫かな?」「なんだかずっと治らない傷があるけど病気かな?」と思い、「歯医者行にこうかな、もう少し様子を見ようかな」と悩んでいたとします。

 

そこで、上記の番組を見たとする。

 

この番組を見て「歯医者怖そうだからちょっと様子見よう」と思ったとする。

 

そこで様子を見ていたところ歯の神経が死んでしまい、歯が原因の感染症になって発熱、腫脹により体調が崩れたり、ただの傷だと思っていたものが悪性のできものだったりする。

 

「そんなのめったに起こらないんだから、運が悪かったんだよ。自己責任だし」とあなたはその人に言えるでしょうか? 

 

それが、もし、あなたにとって、とても大切な人に起こったらどうでしょう。

 

100万人に一人にしか起こらないことでも「その人にとっては100%」なのです。

 

だから「歯医者さんが怖いという理由だけで、痛みや、心配事を我慢するのはやめた方が良いのでは?」というのが入蔵の言いたいことです。

 

でも、入蔵がこういったせいで不必要な通院が増えても困るとも思うのです。

 

悩ましいところです。

 

で、究極的に入蔵が皆さんに申し上げたいのはご自分の「常識からくる判断力」をお信じになったらどうですか?

ということです。

 

例えば、あなたが行っていらっしゃる歯医者さんが勤務先の近くであったとする。

 

そこに行きたいけれどそのために電車に乗らなければならないとする。

 

この時期心配でしょう?

 

仕事がテレワークになっているのに無理してその歯科医院にいらっしゃいますか?

 

入蔵なら、ちょっとそのかかりつけの歯科医院に電話してみます。

 

あるいはメールで連絡がつけられる先生もいらっしゃるかもしれません。

 

そして、相談してみます。

 

これが、入蔵の判断です。

 

歯科の場合まだ、遠隔診断が手法として確立していません。

 

残念です。

 

しかし、「見なければわからないことの多い歯科疾患」でも、お話を聞くだけでも少しはお役に立てることがあるかもしれません。

 

実際は「診なければわかりません」とお答えすることも多いのですが、患者さんの求めに応じて、もしかしたら患者さんが徒歩あるいは自転車で通える範囲にいらっしゃる専門知識を有する先生をご紹介できることもあるかもしれません。

 

自分のことをかかりつけ歯科医だと思ってくださっている方に直接お役に立てないのは残念ですが、仕方ありません。

 

これは入蔵個人の考えなので、個々の先生によっていろいろなお考えがあると思います。

 

入蔵はこういう場合にも自分のできる範囲で誠実に対応するのが「かかりつけ歯科医の責務」だと思っています。

 

入蔵程度の歯科医でもそう思っているのですから、あなたの「かかりつけ歯科医」の先生はきっと良いアドバイスをくださるはずです。

 

さて、全てのケースについて書くことは不可能です。

 

皆さんの「常識と判断力を信じて」行動してください。

 

きっと良い解決策が見つかるはずです。

 

入蔵は自分の経験からそう信じます。

 

冷静に考えれば「『常識と判断力を信じて行動してください』の上の自己責任か?」という無責任な話になるのですが、「『常識と判断力を信じて行動してくださいの上」ということが重要だと思うのです。

 

さて、歯科医院で歯石を取ってもらったことのある方で、「歯科医師、あるいは歯科衛生士が、自分の上にのしかかるような体勢で処置をした」という経験のある方はいらっしゃいますか?

 

診療報酬請求の様子から見て歯科医院の「口腔外バキューム(歯を削ったり、歯石を取ったりするときにお口の近くに来るホースのようなもので、掃除機のような音のする機器。飛沫を吸引します)」の普及率は平成29年の9月時点で58.1%を超えていると考えられます(口腔外バキュームを所持していることが条件の一つになっている届け出をしている歯科医院の割合。この機器を所持していても、他の条件を満たしていない歯科医院もあると考えられるためこれ以上だと考えてよいと思います。データ:病院における医科歯科連携に関する調査 平成30年3月 公益社団法人日本歯科医師会 日本歯科研究総合研究機構file:///C:/Users/oral-/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/ICOAMDWR/kikou_chousa20180316.pdf

 

現在は、この普及率はさらに上がっているでしょう。

 

通常の歯科治療ではさらに歯科医師や歯科衛生士が要に応じて管のようなもので唾液や水を吸い取るのが普通と思われます。

 

そういった状況下で、治療者が治療時に目の前が見えないのではと思えるほど保護眼鏡にしぶきを浴び、さらに、そのまま治療を継続している先生にあったことがおありですか?

 

入蔵の常識から判断すると「ない」です。

 

だって、大雨の日にワイパーの壊れた車で出かける人はいないでしょう。

 

おまけにウィンドウを拭きもしない。

 

それと同じレベルの話だと思います。

 

入蔵は、この歯科衛生士の話を聞いたときに、エイズが問題になり始めた時にテレビのワイドショーで見た映像を真っ先に思い出しました。

 

「歯科医療を通して感染が起こる危険性を示す実験(と称する)」の映像です。

 

その実験をして、テレビ局のインタビューを受けていた人物の正確な素性は正確にはわかりません。

 

国の歯科医師、あるいは研究者だったように記憶していますが、誤りかもしれません。人物の紹介は一瞬に画面上を流れて消えてしまったので。

 

その人物は血液でほぼ満たされた透明な袋の中に、歯科用のタービン(歯を削る道具)を突っ込みその中でタービンを回転させ「こうすると、タービンの内部に血液が逆流するのです。感染の危険が大きいです」という内容の説明をしました。

 

でも、入蔵は「歯医者が血の入った袋の中でタービンを回すような治療をするかな?これって実験て言えるのかな?」と思ったのです。

 

現在のタービンは逆流しない構造になっているのが普通ですから、そういった装置開発の契機になったかもしれません。ある意味では良かったのかもしれません。

 

とにかく、その番組を見た時、どう考えても入蔵より頭のよさそうな、テレビ局の制作の人、司会者、コメンテーターの人の中に入蔵と同じような疑問を持った人がいないとは思えませんでした。入蔵の常識で判断すると。

 

そこで今回の番組の感想を述べると

「映像のようなことは、通常はありえないことだけれども、嘘とも断言できない。実際に飛沫は飛ぶわけだし。

 

でも、普通の歯科医院では飛沫については、通常の範囲で、できる限りの対策はとっていると思っていただけるのではないかな。

 

患者さんが、歯科治療を受けることに恐怖心を強く抱き、それによって、必要な治療を受けないようなことがあってもいいのかな?

 

 診せていただいて「応急処置で済ませられるか否か」「あるいは治療を延期するかどうか」等の判断をさせてもらえないかな。」ということになります。

 

くれぐれも言いますが、番組見ていないですからね。

 

その番組のねらいはわかりませんし、番組批判の趣旨は全くありません。

 

入蔵はただ、特にご自身の体に異常がなく、いわゆる三密を避けられる状況で来院していただけるなら、「お困りのことがあったりご心配なことがあれば」現在の状況下でも歯科治療あるいは診断を受けていただいていいのではないかと思うのです。

 

ただでさえ抑うつされた生活環境の中で、さらに痛みや心配を抱えて過ごすのはしんどそうです。

 

ただ入蔵の個人的な意見です。

 

さて、この時間にブログを更新している入蔵が仕事上、結構大変ということを察知した方もいらっしゃるでしょう。

 

結構いろいろ大変です。

 

でもね、とにかく今日一日を無事に過ごし、このような状況下、歯科医院においでいただいた方のお役に少しは立てたと思える自分の幸せに感謝しつつ今日のブログは終わりにいたします。

 

とにかく、自分のできる範囲で、できるだけ注意して、明日も無事に過ごせたらいいですね。

 

不幸にして罹患してしまった方の一日も早い回復をお祈りいたします。

 

明日は、もう少し、読んでいて楽しい語り口で記事を書くように努力します。

 

では、また。

 

今(4月9日11時30分)静止画拝見しました。静止画は切り取られた現実ですからコメントは控えるべきでしょう。でも、確かにプロの実際の治療現場では無いように思えました。ただ、ご出演の方がどういう経緯でご出演になっているのかわかりませんので、入蔵は軽々に発言できません。