疲れた時には、少し心が楽になるショートストーリーをのんびり読みたくなることがありませんか?今回の本にはそんな心休まるストーリーから、びっくりする展開のSFまで幅広いものが収められています。

 そして、驚きなのはこの本を書き上げたのが、かの有名なハリウッドスター、トム・ハンクス氏だったこと。でも、そういわれると納得してしまうほどアメリカンユーモアがいたるところに散りばめられた作品にもなっているんです。そんな彼が書いた本のタイトルは『変わったタイプ(原題:Uncommon type: Some Stories)』です。


変わったタイプ (新潮クレスト・ブックス)
トム ハンクス
訳 小川高義
新潮社
2018-08-24



こんな方たち、本書はいかがでしょうか?
  • ショートストーリーでさまざまな体験をしたい人(短い上質な映画のようなストーリーがたくさんあります)
  • クリスマスシーズンにゆっくりしたい人(クリスマスを題材にした温かくも寂しい物語もあります、もちろんその他クリスマスを静かに楽しめるストーリーが目白押し)
  • アメリカ的ストーリーが好きな人(子気味良い会話から、良くも悪くも大事にされていた価値観等、色んな側面を見せてくれます。)

    

■ストーリー            



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(アンティーク品は飾るだけでなく、使ってこそですよね。タイプライターもそう。pexelより)


へとへとの三週間(Exhausting three weeks link: the guardian *)
 男3人と女1人の仲良し4人組の中から、2人が付き合うことになった。ただ、二人の性格は正反対。何事にも意識が高いアンナと、親からの遺産を引継ぎ、半ばリタイアしたような生活を送る僕。アンナはすぐさま僕を変えようと色んなことに誘い出すのだが。。。


光の街のジャンケット(A junket in the City of Light)
 ハリウッドで大女優ウィラ・サックスに見初められて、念願の映画出演がかなったロリー・ソープ
。そしてついてきたプロモーションツアーは分刻みでスケジュールが詰め込まれていて、今がどこだかわからなくなるほど。しかもメディアから聞かれることは毎回同じ。もちろん自分のことではなく相手役のウィラ・サックスのこと。もう頭がおかしくなりそうだった。そんな中、、、。


配役はだれだ!(Who's who?)
 成功を夢見てブロードウェイのあるニューヨークシティに800ドルをもって、上京してきたスー・グリーブ。 友人のアパートメントに間借りして生活をスタートさせたのだが、一向に俳優の仕事にはありつけない。来る日も来る日も新たな仕事と生活拠点を探すのだが、なかなかうまくいかない。誰もが目的に向かって急ぐこの街はスーにとても冷たかったのだ。うまくいかない日々と減っていくお金にスーの心は荒んでいくのだが、、、。


過去は大事なもの(The Past is Important to Us)
 とある機械部品の製作に大成功したバート・アレンベリーは
クロノメトリック・アドベンチャーという会社に一回6百万ドルという大金をはたいて、1939年のNY万博へ訪れているという。パートナーのコックスはこのばかげた話をあきれながら聞き流すのだが、その後もバートは会社に支払ってオールドアメリカへ戻り続けることになるのだが。。。

そのほか、多くの魅力的な登場人物に彩られた極上の一冊。

*トム・ハンクス氏のaudibleが2018.11.30日時点で掲載されています。
   

■感想(ネタばれ注意)       


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(アンティーク品は飾るだけでなく、使ってこそですよね。タイプライターもそう。pexelより)
 
 一番最初はタイトルの"Uncommon Type"は性格や特徴のことかと思っていました。でも、カバーにタイプライターが書かれているので、略語かフォントかなとか色々想いを巡らせました(読み始める前に各国のカバーをみて、そこにもタイプライターが書かれていたので何らかの意味があるんだろうな、という先入観がありました。)。

 そんなことを思いながら1話目を読み進めると、あまりにもさりげなくタイプライターが登場するんです。タイトルや装丁にタイプライターが書かれていなかったら、読み飛ばしそうでした(笑)。なので、ひょっとしたらタイプライター自体はあまり関係ないんじゃないかなとおもってしまうほど。


 それが読み進めるほどに様々な場面でタイプライターが、時に主役として堂々と、そして時には名わき役のようにさりげなく登場し、いずれの場合も心の中に残っていくんです。それはタイプライターがもつアナログ感だったり、独特の温かみだったり。もしかしたら、一文字一文字を打つと奏でられるリズムや、打鍵したら消すことのできないインク文字だったり、タイプライターが持ちあわせる独特な特長のせいかもしれません。

 終始、笑ってしまうような物語も、悲しい結末の物語にも、常にそこで結末を見守っていたタイプライター。一章目のようにさりげなくつかわれたものもあれば、タイプライターを気に入った女性に対して滔々とタイプライターをちゃんとつかってほしいと説く、店主まで。色んな人に寄り添う存在としてタイプライターは登場します。そして、この本を書きあげる際にも使われたタイプライター(トムはタイプライター鬼集家です)。

 色んな意味を込めて、タイプというワードがタイトルに組み込まれたんだろうなと、読み終わってみると改めて感動してしまいました。


 ちなみに本作はフォントにもこだわっていて、各話で違うフォントが使われています。アルファベットで書かれた原作を読むとより一層それは際立って見えます。そして、タイトルのタイプは当然のごとくアメリカに住む色んな人種だったり、性別等の意味もも含んでいるのは読み進めていくとわかります(こだわりますね、トム。)。


  そして、それら個性豊かな登場人物の日常の切り取り方が本作は群を抜いてうまいんです。描かれているのは一日だったり、数日だったり、数週間だったりするにもかかわらず、物語のバックグラウンド派と膳に、さらに物語の終わりの先を読者に想像させるだけの余韻があります。そして、その余韻の心地よさはどこか映画を観ているようでした。


 個人的に好きだったのは上にも紹介した4人組の話やニューヨークに上京した夢見る女の子話。さらにはギリシャを経由してきた移民の話だったり、有能な秘書の話だったりと。。。こうやって振り返ると、あれもこれも好きで、結局全部を列挙してしまいそう。今、この感想を書いている瞬間も、もう一度読み直したいなと思うほどです。


 ということで、未読の方には当然のごとくお勧めしたいし、この本を好きだという方にはぜひどの章が好きだったか聞いて、あれやこれや語り合いたくなる、そんな本です(それはもしかしたら、先ほども書いたように、本を読んだという感覚より、映画を見た後の感覚に似ているのかもしれません)。

    

■次の一冊(今回は映画)   


本作品はトム・ハンクス氏が書いたという事実を脇においても面白いと思います。ただ、彼が書いたという事実を素直に加えるとさらに楽しめた作品でした。そういう意味では次の作品は素直に彼の作品なんてどうでしょう。



トムとメグの王道ラブストーリーの『めぐり逢えたら』はやっぱり冬に観たい作品♪




もちろん、そんな二人が後に共演した
ユー・ガット・メールも本屋好きなら注目の箇所がいくつもありますよね。


みていると歌いだしたくなる『ポーラー・エクスプレス。これをみるとホットチョコレートを飲みたくなる。

ターミナル (字幕版)
トム・ハンクス
2014-07-01


そして、トムの縁起の幅広さを教えてくれた『ターミナル』。東欧出身の英語のわからないおじさんをやらせたらぴか一でした。他にもたくさんの名作があるのですが、それはまたいつかご紹介してみたいと思います。

なお、リンクはすべてアマゾンのものになっていますが、このうちの一部は定額制の動画視聴サイトでみられますので、まずはご自身の利用されているものをチェックしてみてはいかがでしょうか。


■雑な閑話休題      


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 この本は一番最初に本をみてから購入するまでに2ヶ月くらいかかっているかも(笑)。一番最初の反応、おっ、トムハンクスが小説書いているんだ!二度目はきれいな装丁だな~、三度目にようやく手に取り、煽り文句を読み、、、うーんどうだろうという反応。そして、四度目か五度目に内容をチラ見してようやく購入。今考えると、ここまで迷ったのは、あまりにも多くなった積読書が原因なんですが、、、それでも迷い過ぎですね。

 結論として、毎回思うのですが、迷ったら買うべきなんですよね。二度と会えない本も多く、それでも購入しておけばいつかきっと読むでしょうから。そんなことを再認識させてくれた本でした。ちなみに、購入してから読みはじめるまでに一か月ありました・・・(はい、いつものことです。タイムリーな感想なんて書けません。)。


■著者関連情報

トムハンクス氏Facebook:https://ja-jp.facebook.com/TomHanks/
twitter page:@tomhanks

ハリウッドスターのfacebook pageをここに書くとは思ってもみませんでした(笑)。でもこういうのでご自身の情報を知るとぐっと身近に感じるから不思議なものです。そして、個人的にお勧めなのはyoutubeで”tom hanks uncommon type”ででてくる動画。プロモーションのためのインタビューが多く出てきます。一部は、、、"  "なので触れませんが、出版社がofficialにだしている宣伝もあり、平易な英語で語ってくれているので興味がある方はぜひご覧になってみてください。彼の店舗の良い語り口にたちまち魅了されてしまうと思います。

■今回の本をだした出版社
新潮社:https://www.shinchosha.co.jp/


 時宜を得てtwitterでつぶやかれたものが、today's issueとしてホームページ上で取り上げられ、新潮社の本と一緒に紹介されています。話題ごとにまとめられているので、tweetを読みながら、じっくりほしい本を探すのも面白いと思います。



最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

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