スペインサラマンカ・あるばの日々

スペイン語留学の街、サラマンカより、地元情報とスペイン文化、歴史に関する笑えてためになるコラムをお届けしています。

宇宙飛行士から〇〇まで~サラマンカまめ観光シリーズ(4)

2020-03-18 10:40:32 | サラマンカ・観光まめちしき

サラマンカが誇る大聖堂。

夜の美しさは見事…
その新聖堂側は、スペインゴシック後期建築を代表するもの
として名高い。

そしてこの新聖堂の、広場側にある「棕櫚(シュロ)の門」と言われる門。

広場側に面し、エルサレム入城のイエスが描かれたこの門。
長年風雪に晒され、無残な形に擦り減っていたものを修復したのが92年。
割と最近の話だ。

この際に、修復を請け負った現在の石工らが、
散りばめられた数々の装飾彫像の中に、自分達の署名
をそっと忍ばせた。それがこの↓「宇宙飛行士」だ。

“現代を象徴するもの”としてこのデザインを選んだという。

(世間どこにもアワテモノというか、おっちょこちょいが居るもので、
これを“オーパーツだ!”と一時ネットで取り上げて騒がれたことが
あったが、数多くの方のツッコミで早めの鎮火となったらしい。)

この宇宙飛行士は、サラマンカにおける有名な観光ポイント
として大活躍中である。

でもこの門に散りばめられている彫像物をよく眺めてみると、
“おや?”となるものが他にも一杯あるのがわかる。一部を挙げてみると、

アイスクリームを持った化け猫状の怪物くん。



ブドウを食べる犬?



コウノトリはここら辺を代表する鳥。



絶滅危惧種であるスペインヤマネコ。


闘牛でしょうな、これは。

…そんなドヤ顔で出さなくてもいいのに…(苦笑)の天使。

ノウサギに至っては“触ると幸運が訪れる”
というデマ嘘が流れ、観光客に触りまくられて
手垢で真っ黒になっている始末だ。

とまあ、たっぷりと眺めて楽しめる、素敵な観光スポットに
なったのは、先の修復作業のお陰でしょうな。

●各地に見られる“修復師らの爪あと”

しかしながら、こういうものを歴史的建造物に
入れ込むとは、不謹慎?というか…
こんなことやって怒られないのか?と思う小心者の私だ。

それでもこういった形で修復師らが自身の署名というか、
爪あとを残すというのは20世紀あたりから各地で
見られることらしい。

以下、スペイン国内で見られるものを
いくつか挙げてみると…

★パレンシア大聖堂に在るカメラマン
(1910年頃に修復。修復師の友人のカメラマン、
アロンソ氏であることまでわかっている)

★聖マリア・サンドバル修道院(レオン)屋根あたりで
ひっそりと戦うボクサー2人

★カラオラ大聖堂(ラ・リオハ)外壁に張り付く携帯!

★トゥルヒージョ(カセレス)のサンタマリア教会屋根に
なんとアトレティコ・マドリードのエンブレム?!

まあ探してみると意外?にも多い。
スペインに限らず、ドイツやオーストラリア
あたりでも映画のキャラなぞを混ぜてしまうことに
結構鷹揚であるとか。

●けしからんけどおもしろい

もちろんこれらの“異物混入”に苦言をはく
専門家も多い。

スペイン保存修復師協会会長のフェルナンド・カレーラ氏
「修復師の仕事において、歴史的遺産の本来の価値への
敬意を払うという理念が第一にある」

「仕事の結果自体が目立つものであってはならないはず。
そこに自分らのサインを挿入するという行為はプロの規範に反する」

と、ほんともっともなご意見。

国立彫刻美術館副館長のマヌエル・アリアス氏は
「中世らしいデザインを模倣して入れてしまうより、現代のものを
はっきりと入れる方が作品に対して忠実なのでは」
といいつつも、“悪目立ちになってしまう結果はどうも…”と苦言。

「サラマンカ大聖堂の門」が、その全体の歴史的価値を
修復によって回復するはずが、結果「観光客の宇宙飛行士探しの門」
になってしまったことに複雑な思いなのだろう。

でも素人として、個人的意見を言わせてもらえば。

別にこんな風に↓したわけじゃなし
違う意味で世界的に有名にw

いいんじゃないかと思ったりする。

12世紀あたりのロマネスク建築の教会群が
個人的に好きなんだけど、彼らはそれこそオリジナルながら
“異物混入”のオンパレードだ。

例にあげるときりがないが、例えば↓こんなものが(!)

素朴な教会の柱頭にそっと忍び込ませてあったりする。

…もう…ww身も蓋もないというかw
何百年も前に、これを熱心に彫った石工の
人とハイタッチしたい気分だ。

なんたる「共感」。(いやV字開脚にじゃなくてw)

そしてこの共感がつまるところ、歴史を知る
楽しみの醍醐味じゃないかね…と考えたりするわけで。

●そして最後に…サラマンカ秘密の“異物混入”ww

をお届けします。

場所はサラマンカ大学正門ファザードに面した広場。

この広場を囲む建物(古い昔は大学病院だった)
の上部の装飾彫りのどこかに↓彼がいます。

なんと!「自分のイチモツを握るメガネ男」がww

どう考えても中世の作品じゃないだろ?!

そう、これもやはり「修復師らの爪あと」の一つ。

この場所の修復が行われたのは60年代半ばだそう。
なんでも数多くいた作業員の一人に、微妙に
頭がお花畑で、仕事をさぼってはしょっちゅう物陰に
隠れ、“自家発電”していた「メガネの〇」という人物がいたそうで。

仕事しないからしょっちゅう怒られてたらしいが、
それでも“愛されるユルキャラ”としてここに彫られることになったらしい。

(でもそれってまだフランコ独裁政権時代だよね?
見つかったら怒られるとか以上のレベルじゃないの?よくやったよな~)

と、このエピソードを話してくれた、元大学美術教授のじいさん
にちょっと興奮気味に訊いたんだけど、もう返事はただ一言、

「だってスペインだからwww」

…そう、まさにそうなんだろね…

参考資料
https://verne.elpais.com/verne/2018/09/03/articulo/1535989718_022052.html?ssm=FB_CM_Verne&fbclid=IwAR0_24ygaXvCMc1GUIX8mLZ2Yl87CLPoljpZMgB0yCq7bU2sjrJ3fYaOmT0



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