早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

3年生夏のまとめ

いくつか断片的な記事は書いてきましたが、この夏休み何をしていたのか総括したいと思います。3ヶ月以上ある夏休みの大半をタイで過ごしてきた訳ですが、そこには二つの目的がありました。一つはチェンマイにあるNGOでリサーチインターンをすること。もう一つは、4年生の時に執筆する卒業論文のための現地調査をすること。どちらも日本への移住労働者がテーマなのですが、内容や手法等が少しずつ異なります。

まず、NGOでのインターンですが、僕はMekong Migration Network (MMN)というところで平日毎日働いていました。(ホームページ: ここをクリック)
↓デスクからの風景。
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このNGOは移民にフォーカスしていますが、直接移民を支援する草の根運動をしている訳ではなく、そういった草の根活動を行うメコン地域のNGOをまとめるネットワークを作り、そのネットワーク間の情報共有や共同活動を促進することを主な活動としています。チェンマイにオフィスがあるのは、メコン地域(ミャンマーカンボジアベトナムラオス等)からタイへの移民が特に多いからです。

MMNではいくつかのプロジェクトを同時進行で行なっていて、例えば「農業に携わる移民」「経済特区で働く移民」など今まであまり注目されてこなかった分野での移民に関する問題を取り扱っています。元々はタイへの移民に着目していましたが、最近は日本への技能実習制度を利用した移住労働者(日本には移民政策は存在しない[と政府は主張している]ため、「移民」ではなく「移住労働者」という言い方をします。)も増加しているとのことで、「メコン地域から日本への技能実習生」もプロジェクトの一つとなりました。特に、送り出す国側の役割に着目しているというのが特徴です。

この技能実習生のプロジェクトでは、具体的にはカンボジアミャンマーベトナム、日本で関係者を集めた議会を開き、情報共有を促進すること、そしてデスクトップリサーチや議会の内容をもとに報告書を作成し公表することが主な活動です。インターンとして、僕は日本での議会で書記をし、チェンマイオフィスでは報告書の原稿を書いていました。

インターンシップを通じて得られた知識という点では、議会の感想は以前の記事の通りですが、報告書作成も含め、東南アジアから日本への技能実習制度に関する法律、政策、現状、問題点、様々な立場からの意見・視点等総合的な理解をかなり深めることができたと思います。経験としては、MMNのような、草の根活動ではないNGOではどのような人がどのように動いていて、そこで働くとはどういうことなのかを学ぶことができました。学術的な研究では、たとえ文系科目であっても、何か問題に対し、定理や分析の手法を当てはめ、その問題の原因を特定します。そこに研究者自身の価値観が組み込まれることは想定されますが、基本的には原因は特定されるものです。しかし、現実世界では、問題の原因は往往にして特定はできず、立場や視点によって原因とするものが異なり、従って問題の解決方法も人によってバラバラです。バラバラであるということを自覚すること、そして他の立場の人の意見を理解することが、問題解決の協力をする上で重要になってくるのです。

次に卒論のための研究ですが、これは「タイからの技能実習生はなぜ日本を選ぶのか?」をテーマに、週末等を利用してタイの送り出し機関の方等にインタビューを実施しました。このテーマは、実はインターンシップが決まった後に、折角だから卒論のための研究もできたらと思い考えついたテーマです。日本国内での技能実習生に対する待遇などは度々問題になっていますが、実習生が送り出される前の段階についてはあまり話題になりません。様々な問題があることはSNS等を通じて知っているはずなのに、他にも韓国やシンガポールなど稼げる移住先はあるはずなのに、なぜ日本に働きに来ようと思うのか?送り出し機関の宣伝等に何か理由があるのか?という素朴な疑問です。

以前にも友人の研究の手伝いでインタビューをしたことはありましたが、今回はテーマを考えつくところから指導教授の確保、大学の奨学金への応募、倫理審査委員会への応募、インタビュー先への連絡など、研究を実際に行うまでの準備も全て自分でする必要がありました。僕は基本的には誰かが計画を考えてくれるのであればそれに着いて行く方が好きなのですが、自分で考えて行動しなければならない状況にしたことで、自分自身で何かをするという力は伸びたかなと思います。

そういった意味では、インターンシップも含め、タイに長期滞在するというのも、過去の外国への長期滞在とは異なるものでした。アメリカ、中国、ヨルダンと過ごしてきましたが、今まではどれも何かプログラムに応募し、そのプログラムの元滞在していたため、他の参加者がおり、週末のアクティビティなども用意されていました。しかし今回は平日の日中はNGOのオフィスで働くということ以外は何も決まっておらず、自由であったため、自分で考え行動する必要がありました。

ただ、自分で考え行動するというのは、何もかも自分1人でするというのとはまた違います。研究の準備では教授や過去に研究経験のある友人にアドバイスをもらい、研究では何のメリットもないにも関わらず時間を作りインタビューに応じ、助けてくださる方がいました。インターン先でも、他のインターンや職員の人と仲良くなったことで仕事後や週末にできるアクティビティが増えました。何を自分でして何を協力して行えばいいのか、その辺りのことも学ぶことができたと思います。

大学卒業後企業に就職するとすれば、この夏の活動は直接就活に役立つようなものではないかもしれませんが、自分の興味のもと動き、自分の学びたいことは学べたかなと思います。では!