早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

Yaleで面白かった授業ベスト5

Yaleの4年間で僕が履修した授業は全部で37個。今回は、そのベスト5を発表したいと思います。

ランキングのポイントは
1. 知的好奇心という意味で面白かったか
2. 教授の教え方がうまかったか
3. 授業によって自分の考え方や価値観が大きく変わったか
の3つ。

思えばYale入学当初は一応物理専攻の予定でした。それがいつのまにか完全に文系の専攻を選び、物理の授業は一年生の一学期に取った宇宙物理の一個しか取っていません。色々な出会いや経験によって興味が絞られていきましたが、やはり4年間で取った授業はとても影響力のあるものでした。そんな中5つを選ぶのはとても難しいですが、上記の条件に沿って評価しました。

先にまとめを書いておくと、5つの授業はどれも単なる知識ではなく、学問的なアプローチ手法や社会問題の考え方、価値観を教えてくれた授業であり、そこから学んだ、社会へのアプローチの仕方はその後の授業や普段の生活の中で僕に多大な影響を与えているという点で共通しています。レクチャーを一方的に受けて期末試験をして終わり、ではなく、膨大な量の課題図書を読み、ディスカッションに参加し、ペーパーやReading responseを通じて自分の考えをアウトプットするスタイルだったからこその結果だと思います。僕のYaleやアメリカに対する考えは4年間で上がったり下がったりでしたが、やはり授業の素晴らしさはずっと変わらずすごいと思います。

第5位: History of Reproductive Health in the US
4年生の春学期に取ったHistory of medicineの授業。医療という視点からアメリカの人種や移民問題、植民地政策の歴史を学びました。週二回のレクチャー+週一回のTAによる少人数のセクションという形でしたが、特にセクションのTAが良い人で、授業に出てきた問題の解決策として実際に行われていることについて紹介してくれる等、授業の復習にとどまらないセクションをしてくれました。

授業を履修するまで、医療とは絶対的に良いものであり、人種問題等の社会問題と結びつけて考えたことがあまりありませんでしたが、この授業を通じて社会問題と医療が様々な面で深く結びついていることを学びました。コロナの状況下でも、一連の医療問題を固有の問題ではなく長い歴史の中に位置付けて見られるようになったかなと思います。
第4位: Third Reich in German Films
2年生の秋学期に取ったFilm studiesの授業。戦後にドイツで制作された、ナチスドイツに関するフィクション映画を見て分析・議論する授業。映画の1シーンを切り取って撮影手法等から分析する手法を学ぶことができたとともに、戦争という罪の捉え方や誰が悪かったか(戦争責任は誰にあるのか)が時代とともに変わっていく様子を映画を通じて学ぶことができました。教授はディスカッションを回すのがうまく、またペーパーへのコメントも的確で、映画の授業を取ったことのなかった僕でもだんだん発言したり良いレスポンスを書いたりできるようになりました。授業時間外にクラスで映画を見るスクリーニングの時間があるのですが、皆オンラインで自分で見ることを選び、スクリーニングには僕しか参加しないことが多く、教授と二人きりで映画を何本も見たことも良い思い出です。

この授業を通じて、映画を分析的に見ることができるようになりました。また、この授業に触発されて2年生の冬休みには日本の戦争映画を見まくりました。日本映画においてもやはり戦争責任や敗戦経験に対する考え方が時代とともに変わっているのがわかり面白かったです。

参考記事:
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com
参考写真:
f:id:yukihayasaka:20171114103431j:plain

第3位: Comparative Ethnic Studies
3年生の秋学期に取った、ER&Mの数少ない必修授業の一つ。Ethnic studiesとは何かを学ぶセミナーです。Ethnic studiesが生まれた歴史、そしてこの分野のアプローチ方法について実際の研究論文や文献を元に学び、最後はクラス全員でYale大学の学生によるアクティビズム活動の歴史を展示にしました。教授はその後僕のアドバイザーになってくれた人で、ディスカッションを回すのがうまく、また優しくアドバイスをくれる人でした(評価は厳しかったですが)。

この授業を受けるまで、アメリカの大学はダイバーシティがあって、色々な人がいて、色々な学問が学べて、素晴らしい!と思っていましたが、Ethnic studiesの成り立ちや学生運動を学んだことで闇の部分も知り、結構ショックを受けました。一時期アメリカも大学もかなり嫌いになりました。一方で、社会問題を一つの表層的な事象のみから見るのではなく、様々な歴史・立場・学問分野から分析することの大切さも学びました。ER&M専攻に決めて良かったと思える授業でした。

参考記事:
yukihayasaka.hatenablog.com

第2位: Islam in the US
1年生の春学期に取った、American Studiesの授業。アメリカにおけるイスラム教徒やイスラムへの考え方の歴史を議論するセミナーです。奴隷制度や黒人差別等の人種問題とイスラムという宗教問題が深く関わっていることを知り、また「人種のるつぼ」「ダイバーシティ」のイメージのあったアメリカには深い人種に関する問題があり、それを文化人類学という学問を通じて学ぶことができると初めて実感した授業でした。教授は、教え方はうまいのですが、人としてどうなの…ということも多かったです。授業に何回も遅刻してきたり、オフィスアワーに行っても全然いなかったり、ペーパーへのフィードバックがなかったり…。でも教えるのはうまかったのです…

「文化」「宗教」「人種」「難民」といった概念を初めて学問的に学び、それらを相互に結びつける考え方を学んだ授業でした。アメリカの社会問題を学んでいく上での基礎や常識、基本の考え方を学び、その後履修する授業や専攻の方向性を決めた授業だったと思います。

↓この授業を受けて書いたブログ記事の多さからも当時の僕への影響力が伺えます。
参考記事:
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com
yukihayasaka.hatenablog.com

参考写真:
f:id:yukihayasaka:20170421080505j:plain

第1位: Minorities in Japan
一年生の春学期に受けた、Anthropologyの授業です。マイノリティとは何か、日本人とは何かから始まり、日本にいる様々なマイノリティについて文化人類学エスノグラフィを読んで議論しました。教授はかなり若く、実は日本語もかなり流暢に話せる人でした。4年間の授業を振り返ってもかなり多い課題図書とペーパーの量で、毎週大変でしたが、どのペーパーにも丁寧にフィードバックをしてくれ、ライティング能力という面でもかなりためになったかなという授業です。

日本にずっと住んでいたのに、こんなに知らないことがあるなんて!と衝撃を受けました。この授業に感化され、夏に帰国した際には東京や大阪のドヤ街を歩いたり、コリアタウンに行ったり、戦争の歴史に関係ある場所を巡ったり、色々しました。文化人類学、すごい!となったのもこの授業がきっかけです。個人個人に焦点を当てて研究することで、より大きな概念や社会問題を明らかにする。自分に一番合った手法だと思いました。この気づきがきっかけでそれから文化人類学社会学の授業を多く取るようになり、専攻や卒論にも結びつきました。

参考記事:
yukihayasaka.hatenablog.com