土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。
「どうします、土方さん?」
「宮下は暫く泳がせておけ。」
「わかりました。」
総司はそう言った後、歳三の顔色が少し悪い事に気づいた。
「余り無理しないでくださいね。」
「あぁ、わかっているよ。」
「それじゃぁ、僕はこれで失礼します、巡察があるので。」
総司が副長室から出て行った後、歳三は首に提げているロザリオを取り出した。
このロザリオは、あの時キリシタン狩りに遭い、瀕死の重傷を負った恩人から譲り受けたものだった。
両親を幼い頃に亡くし、上の兄姉達に大切に育てられていた歳三だったが、心のどこかで何とも言えぬ寂しさを抱えていた。
そんな時に歳三が会ったのが、“彼”だった。
“彼”は、自分と同じキリシタンでありながら、寺子屋を開いて村の子供達に読み書きを教えていた。
“彼”は、時折寺子屋に顔を出す歳三に対して優しかった。
―君は、いつか後世にその名を残す事になるだろう。
“彼”は、キリシタン狩りに遭う前夜、そう言って歳三に微笑んだ。
―先生!
キリシタン狩りから辛くも逃れた歳三は、袈裟斬りにされ血の海の中で喘いでいる“彼”の姿を見つけた。
―これを・・
“彼”は、歳三に自分のロザリオを手渡すと、息絶えた。
あれからもう、10年以上の月日が経とうとしていたが、あの時の光景は未だに脳裏に焼き付いて離れなかった。
「副長、今よろしいでしょうか?」
「入れ。」
「失礼致します。」
副長室に入って来たのは、何やら深刻そうな表情を浮かべた斎藤だった。
「何かあったのか、斎藤?」
「副長にお会いしたいと申す者が、屯所の前で門番と揉めております。」
「俺に会いてぇ奴だと?どんな奴だ?」
「若い娘です。年の頃は・・」
「わかった。」
斎藤からそのような報告を受けた歳三は、自分に会いたがっている娘の顔を見に、屯所の正門へと向かった。
「離しておくれやす!」
「大人しくしろ!」
「おい、何の騒ぎだ?」
門番と揉めている娘との間に割って入った歳三は、その娘があの時蔵で見かけたキリシタンの一人である事に気づいた。
「お前は、あの時の・・」
「マリア様、どうかお助けを・・」
「副長、その娘は・・」
「俺の知り合いだ、お前達は持ち場に戻れ。」
「はい・・」
歳三はそう言って隊士達を娘―あいりから遠ざけると、彼女と共に屯所の中へと戻った。
「どうして、俺に会いに来た?」
「兄上の事で、あなたにお願いしたい事があるんどす。」
「兄上?」
「宮下真紀様の事どす。兄上は、今命を狙われているんどす。」
「誰に命を狙われているんだ?」
「それはわかりまへん。けど、兄上が居る置屋に、こんな文が届きました。」
あいりはそう言うと、懐から一通の文を取り出した。
そこには血文字で、“必ず、お前を殺す”とだけ書かれてあった。
「どうか、兄上を助けて下さいませ!」
あいりはそう叫ぶと、額を畳に擦り付けんばかりに土下座した。
「お座敷、ですか?」
「そうや。何でも、あんたをご指名やそうや。」
「そうどすか。」
“百合乃”に変身した真紀は、客から指定された料亭へと向かった。
「こんにちはぁ、百合乃どす。」
襖を閉めた後、真紀は何者かに口を塞がれた。
真紀は抵抗したが、鳩尾を殴られて気絶した。
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