『どうしたんだい、こんな時間にまだ起きているなんて?』
『お祖母様・・』
千が自分の部屋に戻ると、そこにはシャーロットの姿があった。
『何かあったような顔をしているね?わたしに話してごらん。』
『実は・・』
千は、図書室で盗み聞きしていた会話をシャーロットに話すと、彼女は一通の手紙を千に手渡した。
『これは?』
『フランス軍の、ジュール=ブリュネ宛にわたしが書いたものだ。お前の恩人の男を、イザベラ達に気づかれる前にここから逃がしなさい。』
『お祖母様・・』
『今夜ここで話した事は、誰にも言ってはならないよ。わかったね?』
『はい・・』
翌朝、千は歳三を朝食の後自室に呼び出した。
「千、どうしたんだ?」
「土方さん、この手紙を持って、今すぐフランスへ渡ってください。」
「何だ、急に?」
「イザベラさん達が、あなたの正体に気づきました。彼らに気づかれる前に早く・・」
「わかった。」
歳三は千の話を聞いた後、部屋で荷物をまとめて出て行こうとしたが、その前にジェイドに見つかってしまった。
『その様子だと、ここから出て行くんだね?』
『・・あぁ。』
『話はシャーロット様から聞いている。この金を今後の生活費の足しにしてくれ。』
『ありがとう。』
歳三はジェイドから金が入った鞄を持つと、レイノルズ伯爵邸の裏口から外へと出た。
その日は朝から雪が降っており、昼過ぎになるとそれは吹雪へと変わった。
(クソ・・フランスに着く前に凍え死んぢまうな。)
ロンドン行きの汽車に乗る前に、歳三はダラムの街にある一軒の宿屋へと入った。
「いらっしゃい、旦那。」
「部屋をひとつ、頼む。」
「あいよ。お兄さん、良い男だねぇ。今夜、あたしと遊ばないかい?」
「悪ぃが、今夜は疲れているんだ。」
「あらぁ、残念ねぇ。」
宿屋の女将は豊満な胸の谷間を歳三に見せつけながら、彼を部屋へと案内した。
選ぶ宿を間違ったかなーそう思いながら歳三は粗末なベッドの上で眠った。
その日の深夜、歳三は誰かが部屋に入って来る気配を感じて目を覚ますと、彼の前には一人の女が立っていた。
この作品の目次は
コチラです。
にほんブログ村