『何だ、てめぇは?』
歳三はそう言って女を睨みつけると、彼女はおもむろに服を脱ぎ始めた。
「何しているんだ、やめろ!」
『女将さんから頼まれたんです・・』
慌てて歳三が女に自分のコートを羽織らせると、女はそう言って啜り泣いた。
「女将は何処だ!」
「あらぁ、今頃あの子とお楽しみだと思っていたのにぃ。」
「余計なサービスは不要なんだよ!」
「わかりましたよ。」
女将はそう言うと、溜息を吐いた。
翌朝、歳三はロンドン行きの汽車に乗った。
(これからどうなるのかは、俺自身の力だけだな・・まぁ、今まで自分自身の力だけでやってきたんだ、何とかなるさ。)
ロンドンのキングスクロス駅は、人で溢れ返っていた。
歳三は、ジェイドから渡された金が入った鞄を盗まれぬよう、雑踏の中を歩いた。
(フランスへ手っ取り早く行くには、船に乗るのが一番だな。)
歳三が港へと向かうと、丁度フランス行きの船が停泊していた。
「運が良いぜ。」
歳三はそう呟きながら二等船室に入ると、そこには先客が居た。
数人の褐色の肌をした青年達は、歳三と目が合うと、嬉しそうに微笑んだ。
『あんた、どこから来たんだい?』
『日本からだ、あんた達は?』
『あたしらは、スペインから来たのさ。出稼ぎでロンドンで働いていたけれど、仕事をクビになってね、フランスで少し働いて、スペインに帰ろうと思ってさ。』
『そうか。俺は知り合いに会いにフランスに行くんだ。』
『へぇ、そうかい。』
その日は、青年達と共に楽しい夜を過ごした。
「やっと着いたか。」
歳三は船から降りると、大きく背伸びした。
『兄さん、元気でね。』
『あぁ、皆も元気でな!』
青年達と港で別れた歳三は、一路パリへと向かった。
『旦那様、お客様がいらっしゃってます。』
『わたしに客?』
『はい。トシゾウ=ヒジカタ様とおっしゃる方で・・』
『すぐに通しなさい。』
ブリュネが玄関ホールへと向かうと、そこには疲れ切った表情を浮かべた歳三が立っていた。
『イジカタさん、どうして・・』
『ブリュネさん、会いたかった・・』
歳三はそう言うと、気を失った。
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