「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
「何よ、ネットで悪い噂を流してやるからねっ!」
「ええどうぞ、お構いなく。名誉棄損で訴えてやりますから。」
母親達は子供達を連れて座敷席から出て行った。
「姉貴、あんな事を言ってもいいのか?」
「構やしないわよ。うちは客を選ぶ権利があるんだから。」
「そうか。なぁ姉貴、手伝おうか?」
「いいわよ。今日あんたはお客様として来たんだから、ゆっくりしていって。」
「わかった。」
「すぐに料理を運ばせるから、個室で待っていてね。」
歳三が千景と個室に入ると、彼は突然吹き出した。
「どうした?」
「お前の気の強さは、姉に似たのだな・・」
「まぁな。姉貴は俺の母親代わりみたいなものだから、性格も似ているのかもしれねぇ。」
「そうか。仲の良い姉弟で羨ましいな、うちとは大違いだ。」
「お前にも兄弟が居るのか?」
「あぁ。だが継母の連れ子だから、俺にとっては義理の兄弟にあたるな。」
「色々とあるみてぇだな。」
「うちは茶道の家元だが、風間コンツェルン総帥でもある。」
「そうか。」
「父はかなりの遊び人だったようでな、女の噂は死ぬまで絶えなかった。母は旧華族の深窓育ちの令嬢で、潔癖な人だったそうだ。俺が7つの時、父の度重なる浮気に耐えかねて出て行ったらしい。継母は、その時父が付き合っていた愛人だ。」
「複雑だな・・」
「あぁ。」
「そういえば、一度もお前ぇの家族に会った事がねぇな。今度、うちで食事会でも開くか?」
「今度義母に予定を聞いてみる。」
「済まねぇな、辛い事を思い出させちまって・・」
「いや、もう昔の事だ。それよりも歳三、七夕祭りの準備は進んでいるか?」
「あぁ。幼稚園のイベントなんてやるのは簡単だと思ったが、色々と大変なんだな。」
「お前には家の事を任せきりで、済まないな。俺もこれから、幼稚園の行事や保護者の集まりに顔を出そう。」
「ありがとう。」
「トシ、お待たせ。」
「ありがとう。」
信子が運んで来たランチの炊き込みご飯が入った椀の蓋を開けてその匂いを嗅いだ途端、歳三は猛烈な吐き気に襲われた。
「大丈夫?」
「あぁ。只の消化不良だ。胃薬でも飲んどきゃ治るさ。」
「そうか・・」
その吐き気はすぐに治まったが、歳三は何故か食欲が湧かなかった。
「あんた、一度病院に診て貰った方がいいんじゃない?」
「本当に大丈夫だから・・」
そう言って歳三が立ち上がろうとした時、彼は突然下腹の激痛に襲われ、その場に蹲った。
「トシ、トシ!」
「救急車を呼んだからな、しっかりしろ、歳三!」
薄れゆく意識の中で、歳三は勇を呼んだ。
何処からか、子供の泣き声が聞こえた。
「おい、何で泣いているんだ?」
歳三がそう言って泣いている子供に声を掛けると、その子供は自分と同じ菫色の瞳をしていた。
―帰る場所がないの。
「帰る場所なら、俺が見つけてやる。」
―本当?
「あぁ。」
―じゃぁ、僕と弟を守ってくれる?
子供はそう言うと、歳三の下腹―子宮の辺りを指した。
「必ずお前達を守ってやる、約束だ。」
歳三は子供と指切りをした後、夢から覚めた。
「歳三、大丈夫か?」
「千景・・ここは?」
「病院だ。お前は切迫流産しそうになったんだ。」
「切迫流産、じゃぁ・・」
「6週目に入っているそうだ。暫く安静にしていろ。七夕祭りの準備は俺がする。」
「済まねぇな。」
「お前はお腹の子達の事だけ考えろ。」
「お腹の子達?」
「双子だから、悪阻や貧血が酷くなる妊婦も居るそうだ。」
「そうか・・」
歳三はそう言うと、あの夢の意味はこういう事だったのかと悟った。
千景は切迫流産で入院した歳三に代わって保護者会に出席する事になった。
「あら、勇太君パパ。珍しいですね、あなたが保護者会に来られるなんて。」
「妻が入院中なので、暫くわたしが七夕祭りの経理を務めさせて頂きます。」
「まぁ、そうなのですか。これから、お願いしますね。」
そう言って千景に愛想笑いを浮かべた朋代は、すぐさま常子の元へと走っていった。
「どうしたの、朋代さん?」
「常子さん、大変よ!土方さんが入院したんですって!」
「入院?それは確かなの!?」
「えぇ。」
「もしかしたら、妊娠したのかしら!?」
「さぁね。」
「皆さん、ここはわたしに任せて仕事して下さいね。」
常子はそう言って朋代達に微笑むと、七夕祭りの実行委員のメンバーに話しかけている千景に声を掛けた。
「風間さん、またお会いしましたね。」
「貴殿は、近藤殿の細君か?」
「まぁ、憶えてくださったのですね、嬉しいわ。」
常子はそう言うと、千景に微笑んだ。
「この後、少しお話ししません?」
保護者会の後、常子は風間と共にマンションの近くにあるカフェへと向かった。
「俺に話したい事とは何だ?」
「あなたの奥さん、うちの主人と不倫していますよ。だから・・」
「それがどうした?歳三が今その身に宿している子が貴様の主人の子だとでも?下らん。」
「下らないですって!?あなたは、怒りを感じないの!?」
「俺は妻の昔の男に悋気を起こすような男ではない。」
呆然とする常子に背を向け、千景はカフェから出て行った。
「そう・・あなたがそのつもりなら、わたしにも考えがあるわ。」
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