「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
「もう出歩いて大丈夫なのか?」
「あぁ。」
七夕祭りの日、歳三は安定期を迎え、病院から退院の許可が下りた。
「母様~!」
「勇太、元気で良かった。その浴衣、良く似合っているぞ。」
歳三は実家に預けていた勇太を千景と共に迎えに行くと、彼は水色に土方家の家紋である左三つ巴の模様の浴衣姿だった。
「トシ、あんたも着替えなさいよ。」
「わかった。」
信子に着付けを手伝って貰いながら、歳三は時折苦しそうに息を吐いた。
「さっき千景さんから聞いたわよ。お腹の赤ちゃん、双子なんだってね?」
「あぁ。勇太の時は安定期になっても悪阻が治まらなかったけれど、こいつらの時はその逆で、何か口にしてねぇと吐きそうなんだよ。」
「あ~、いわゆる食べつわりってやつね。赤ちゃんの性別はわかったの?」
「男の子らしい。まぁ、元気に生まれてくれれば、どっちでもいい。」
「帯、きつくない?」
「あぁ。」
歳三が着たのは、藤の花をあしらった上品な浴衣だった。
「良く似合っているな。やはりお前は紫が似合う。」
そう言いながら部屋に入って来た千景は、赤字に大きな花柄の、派手な浴衣姿だった。
「では、行こうか?」
「あぁ。」
七夕祭りの会場である幼稚園には、既に常子達が来ていた。
「すいません、遅れました。」
「あらぁ、土方さん。綺麗な色の浴衣ねぇ。」
「ありがとうございます。」
「土方さんって、運が良いわよね。」
「え?」
「素敵な旦那様が居て、可愛いお子さんも居るのに・・何で不倫なんかしているの?」
馴れ馴れしく自分に話しかけて来た一人の母親が、そう言って歳三を睨むと、子供の手を引いてヨーヨー釣りの方へと行ってしまった。
(何だ?)
「ねぇ、あの人でしょう?」
「嘘、あの人が!?」
「大人しそうな顔をして、やるわね・・」
母親達がそんな事を話しながら、ジロジロと自分の方を見ている事に歳三は気づいた。
「常子さん、本当なの?」
「えぇ・・」
「酷いわね、土方さんって!あんなに素敵な旦那様が居るのに、どうして・・」
「不潔だわ!」
「皆さん、落ち着いて。」
義憤に駆られ、歳三を避難し始めたママ友達をそう宥めながらも、常子は口端を歪めて笑った。
「あれ、おかしいな・・」
「どうした、歳三?」
「さっき祭りの売上金の確認をしていたんだが、足りねぇんだよ・・」
「いくらだ?」
「2万円程だ。さっきまで、ここにあったんだが・・」
「もしかしてそのお金、あなたが盗ったんじゃないの?」
「俺ぁ、そんな事してねぇ!」
「さぁ、どうかしら?あなたはわたしの夫を盗んだ・・」
常子はそう言うと、歳三を睨んだ。
「あなたを絶対に幸せなんかにさせないわ。」
「歳三、暫く日陰で休んでいろ。」
「わかった。」
歳三が藤棚の下へと向かうのを確認した千景は、常子をにらみつけた。
「我妻への誹謗中傷をこれ以上続けるつもりなら、法的措置を取る。」
「まさかわたしを訴えるつもり?だったら、わたしもあなたの奥さんに対して慰謝料を請求するわ。」
「貴様は一体何がしたいのだ?我妻と貴様の夫との関係は、もう終わった事だ。」
「いいえ、終わってなどいないわ!勇太君が居る限り、主人とあなたの奥さんとの縁は永遠に切れないの!」
「それは、どういう意味だ?」
「あら、知らないの?勇太君は、主人と、あなたの奥さんとの間に出来た子なのよ。」
常子はそう言うと、車内で勇と歳三が激しくセックスしている動画を千景に見せた。
「これを観て、少しはわたしの気持ちがわかるでしょう?」
七夕祭りの後、千景は帰りの車の中で歳三を抱いた。
「何で、こんな事・・」
「お前は、車の中でするのが好きだろう?」
「千景、何でそんな事知って・・」
「勇太は、あの男との子なんだろう?」
「・・あぁ、そうだ。勇太は・・あいつの父親は、近藤さんだ。でも、勇太は俺とお前の子だ。もう、あの人との縁は切れた。信じてくれ。」
「乱暴に抱いて済まなかった。安定期とはいえ無理をさせたな。」
千景はそう言うと、歳三の大きく迫り出した下腹を撫でた。
「もうすぐハロウィンか、早ぇもんだな。」
「歳三、そんなに動いて大丈夫なのか?」
「余り動かねぇと難産になるから、少しは動いた方が良いって先生から言われたんだよ。」
「そうか・・どうした、歳三?」
「陣痛、来たのかもしれねぇ・・」
「何だと!?」
2014年10月31日、歳三は元気な双子の男児を帝王切開で出産した。
金髪に紫の瞳を持った長男を誠、黒髪に真紅の瞳を持った次男を千歳と、歳三は千景と考えた末にそう名付けた。
「歳三、これからの事だが、勇太と共にお前は暫く実家に行っていろ。」
「そうしたいのは山々なんだが、実家はこれから繁忙期に入るから、余り頼れねぇんだよな。」
「ではこういった所はどうだ?」
千景がそう言って歳三に見せたのは、産後ケア施設のパンフレットだった。
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