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NEO HIMEISM 様からお借りしております。
「火宵の月」二次小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
火月が身体の異変に気付いたのは、冬が終わろうとしている頃だった。
最近身体が妙にだるいし、その上食べ物の臭いを嗅ぐと吐き気に襲われるのだ。
そして、月のものが遅れている。
(まさか・・)
火月は、そっと下腹部に手をやった。
そこには、微かな命の温もりがあった。
余り無理をしないようにしようと思いながらも、火月は生活を支える為、無理を重ねてしまい、倒れてしまった。
「気が付いたか?」
「翁主様・・」
「身重だというのに、無理をするでない。」
「その腹の子は、王様の子であろう?」
「はい。」
「案ずるな。王位はスノクが継ぐ事になった。」
「ですが・・」
「大妃様が先程、そうお決めになられたのだ。」
「では、王様は・・」
「火月、迎えに来たぞ。」
火月は、信じられない思いで有匡を見た。
「王様・・」
「もう、わたしは王ではない、お前を愛する一人の男だ。」
「有匡様・・」
火月は、涙を流しながら有匡に抱きついた。
「大妃様、本当によろしいのですか?」
「何をだ?」
「あんなに可愛がっていた兄上を手放すなど・・」
「もうあの子は、親の庇護の下で生きる年頃ではない。好きにさせておけばいいのだ。」
そう言ったテファ大妃は、外の世界へと旅立っていった最愛の孫の事を想った。
「王様、王様はどちらに!?」
「もう、この国にはおらぬ。」
「では何処に!?」
「さぁな。」
クオク王妃は、血眼になって有匡と火月の姿を探した。
二人の姿は、船着場にあった。
「王様!」
「クオク・・」
そう言って自分の方へと振向いた有匡は、腰下までの長い髪をばっさりと切り落とし、西洋の服を纏っていた。
「わたくしを捨てるのですか!?」
「お前とは、もう終わったんだ。」
有匡はそう言ってクオクに背を向け、船へと乗り込んだ。
「有匡様。」
クオクが呆然としていると、船の中から美しいロイヤル・ブルーのドレスを着た女―火月が現れた。
「そんな、わたくしを捨てるおつもりなのですか、裏切り者~!」
「クオク、わたしの事は忘れろ。」
クオクは船に乗り込もうとしたが、船は船着場から無情にも離れていった。
「クオク、こんな所に居たのか。」
「スノク様・・」
「わたしが居る。」
「帰りましょう。」
朝鮮を離れ、英国で暮らし始めた有匡と火月の元に新しい家族が来たのは、英国での生活が漸く安定し始めた頃の事だった。
『元気な男の子と女の子の双子だよ、抱いておやり。』
有匡は、産婆からそれぞれ我が子達を腕に抱くと、喜びの余り涙を流した。
「ありがとう、火月。本当に、ありがとう・・」
「これから、忙しくなりますね。」
「あぁ。」
有匡は、窓から吹いてくる心地良い春風を感じ、目を閉じた。
(終)
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