宿を出ていく四人を若女将とおぼしき女が
申し訳なさげな表情で見送る。
四人は終始無言で安宿を出た。
団体客の騒ぐ声が玄関ホールに空しく響く。
温泉街の人通りもまばらになってきている。
酒を飲む場所を物色していた男女は
適当な場所が見つからない様子で
小声で話している。
しばらくして前を行く女が暖簾をくぐって店の中に入っていく。
男が彼女の後につづく。
「ラーメン屋」
男がつぶやくような声で言った。
男と女は店の前を通り過ぎ
しばらくして男だけが戻ってくる。
店の中では先に入った二人がギョーザをつまみにビールを飲んでいた。
「他につまみはチャーシューとメンマしかないって」
当たり前だろうと思いながら男は奥のほうに歩いていく。
「彼女はどうしたの」
「お土産でも見てるんでしょう」
男は席に着くなりラーメンを注文する。
「飲まないんだ」
女が他人事のように男に言う。
「ラーメン食べたら眠くなってお風呂にも行けないんじゃない」
「その先に神社があるみたいなのでそこまで行ってきますよ」
男がビールを追加した。
女はラーメンを食べている男をうらやましそうに見ている。
「そろそろあたしたちもシメようか」
男は女のグラスにビールを注いだ。