子供の遊びは、とても重要なものだ。

 子供は遊びで育つ。子供の遊びと調和できないところに、子供の力を引き出す教育はあり得ない。子供の遊びを支援することが、教育の本筋だ。現代社会で生きるのに必要とされる知識やスキルもあるが、それは、生きる力の根幹を作ってからにしたほうがよい。小学生くらいまでの年齢は、遊びを中心にしたほうがよい。子供の知性が教科書的なものに波長が合ってくるのは、一般的には、15,6歳くらいからである。

 

 子供の遊びは、人類の歴史と重なっている。子供たちは、人類が進化してきた道を一人一人たどり直している。

 人類の歴史は400万年とも600万年とも言われるが、その大部分は狩猟採集の生活をしている。農業時代が始まったのは約1万年前である。遺伝的には、われわれは狩猟採集時代のままである。

 この人類の数百万年の狩猟採集生活の間に、人間の脳がだんだん大きくなってくる。なぜ、脳の発達が促されたのか。その理由は、人間の狩猟採集生活に必要な能力がどのようなものであるかを見ればわかる。たとえば、このようなものである。

 

 獲物の習性を学び取る。

 わずかな痕跡から、獲物の居所を推定する。

 飛び道具を使って、仕留める。

 罠を仕掛ける。

 

 このような能力を使って、獲物を捕っているのである。

 これらのいずれも、子供たちが遊びでやりたがる。

 子供たちは動物をじいっとよく観察しているし、「名探偵コナン」が好きであり、モノを投げて命中させたがり、ピタゴラスイッチが好きなのである。

 

 人間の知的能力は、この狩猟採集の方法から発達してきている。

 それは、子供たちが自然に遊びとしてやりたがることの中にセットされている。

 

 子供たちに、教科書と黒板での学びを強制し、テストで追い立てるのは、非常に効率の悪い学びなのである。