囀(さえず)りや図書館の窓あけてある

 密閉はいけないという御時世です。「いい俳句だなあ」と思いました。(朝日句壇のものだそうです)

 「働かざる者食うべからず」なんていう密閉空間の窓を開け放って、「生活本位経済」の囀りを聞いてください。

 

 経済の究極の目標は、一人一人の生活です。ちょっと追い詰められれば、そのことはわかります。ついに、政府が一人10万円ずつ無条件で配りました。

 生活費は重要です。どこかに雇用されて働くと、賃金がもらえる。その賃金で人々が暮らしています。今の経済学も経営学も、賃金をただの費用扱いしていますが、賃金はただの費用ではありません。賃金が生活費として使われるから生産が成り立っています。

 

 お金による交換経済が浸透していなければ賃金で暮らすこともできません。では、そのお金というものがどこで作り出されているかというと、銀行が貸出をするときに生まれています。銀行が貸出をするとき、実は、相手の預金口座に数字を書き込むだけなのです。もちろんいい加減にやっているのではなく、返済が確実なときにだけ貸出をしています。

 銀行で作られたお金が、企業の設備投資や運転資金になり、回り回って働く人の賃金となります。それが現在のお金のシステムです。

 

 このシステムのネックは、人々の生活費を賃金としてしか渡せないことです。いったん不況になると、失業→賃金減少→売上減少→いっそうの失業、という負のスパイラルを落ちていきます。

 お金はもうけるために作り出され、そのおこぼれが生活費になります。生産活動は生活費が使われることに依存しているというのに、

 

 経済の根幹は生活費です。生活する人たちがいてお金を使ってくれるから、生産が成り立つのです。生活費不足のために、不況や恐慌はよく起きます。

 では、賃金としてしか生活費を手にできないシステムではなくて、生活費としてお金が作り出されるシステムはできないのか? その研究を長らくやってきました。

 減価マネーを使えばできる、というのが研究の結果です。理由は簡単です。減価マネーなら作り続けても果てしなく増えていくということがないからです。

 

 最低生活費がまず保障されている経済ができれば、恐慌に見舞われることがなくなります。すべての人の暮らしが成り立っていますので、消費水準がある程度以下になることはないからです。

 

 ベーシック・インカムを検討する国が増えています。スペインでは、実現しました。スペインのものは最低所得保障という性格のものですが、まず人々の所得を確保することだ、という思想ははっきりしています。

 これから、秋以降、経済の落ち込みは中堅企業や金融機関に及んでくるでしょう。ベーシックインカムが本格的に検討されるようになります。奇矯な考え扱いは、されなくなるでしょう。