追憶の彼方。

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葉茶滅茶の宴の終わり

2020年09月15日 | 政治・経済
葉茶滅茶の宴の終わり

2012年12月 「日本を、取り戻す」のキャッチフレーズで政権を取り戻した自民党の安倍首相は就任演説で「頑張った人が報われる日本経済、今日よりも明日の生活が良くなると実感できる日本経済を取り戻してまいります」 と恰好よくぶち上げ、アベノミクス・「3本の矢」を柱とする経済政策を華々しく掲げて、第二次安倍政権をスタートさせた。
その後も、地方創生、女性活躍社会、一億総活躍時代、働き方改革等、耳触りの良いキャッチフレーズを連発し国民に淡い期待を抱かせて支持を取り付けてきたが,何れも「やってる感」だけで大した成果を上げず、単に食い散らかしただけで終わった。「格好よく」「やってる感」、苦労を知らない安倍の性格をよく表している。政権最重要課題とした拉致問題や北方領土問題もどこかに吹っ飛んでしまった。
***アベノミクスは円高是正による企業業績改善と株価回復という成果はあったが景気は消費税増税により完全にメッキが剥げ落ち、更にコロナにより戦後最悪の落ち込みに暗転してしまった。一人当たりGDPはコロナ前の2018年に既に韓国・イタリアにも抜かれてしまっている。日本を取り戻すとして輸出産業の競争力強化を試みたが、数量的には殆ど伸びずに終わっている。GDPに占める輸出比率はドイツ46.9%、フランス31.4%に対し日本は18.5%に過ぎず、最早輸出大国・貿易立国ではなく、消費大国に様変わりして仕舞った。観光立国もコロナで霧散、関連業界は瀕死の状態である。
***「働き方改革」柔軟で多様な働き方…耳触りのいい言葉だが、要は労働法制によって守られ難い非正規雇用やフリーランスを、政府を挙げて増やそうという大号令である。企業にとっては正社員を雇うよりも労働固定費が下がりこんなうまい話は無い。半面労働者にとっては雇用が不安定になる他、雇用者の立場が強くなり労働条件が悪化し、良いところ皆無である。安倍政権において雇用の頭数は一定レベルで維持されたが、その質は大きく下がった。先進国で日本だけが長期間、実質賃金の下げが続いている。政府が非正規雇用やフリーランスを積極的に増やそうとしている国は日本だけ、海外では今、フリーランスとして働く人々の労働者としての権利をどう守るかという検討が進んでいる。安倍政権では労働者の幸福より企業収益向上が最優先課題なのである。
*** 地方創生も地方の「経済の成長と人口増加」を目的として始まったが、東京への人口流出抑制策も功を奏せず逆に東京への流入が増加傾向にある。中央官庁の地方移転も文化庁(京都)、消費者庁(徳島)、特許庁・中小企業庁(大阪)のみの中途半端に止どまっており、ふるさと納税も地方間の格差助長と税制のゆがみを生じさせただけに終わった。コロナ対策を見ても全国一律には無理がある。地方に税源を移管し地方分権を真剣に考える必要があるが中央省庁の権益維持の壁をどう打ち破るか首相の指導力が問われる。
*** 女性活躍推進法が2016年4月に施行され、ニッポン一億総活躍プランが5月に策定され、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の実現を目的とする「一億総活躍社会」を目指すという方針が打ち出されたが、女性の賛同が得られず、政府の真剣な取り組み姿勢も見られぬ為、掛け声だけで終わった。
日経・ウーマンで報じられたこの施策に対する女性の生の声には次のようなものがあった。
「女性活躍推進」は疑いようのない正義のように聞こえるが、要するに「女性の労働参加率を上げ」て、かつ「新世代も産ませ」て、「わが国の労働人口をいかに減らさないか、経済成長の減衰を食い止めるか」、という話に過ぎない。女性が働いて、かつ産まないと、国が立ち行かない、そこには「女性に幸せになってほしいとか、社会的に尊敬されてほしい」とか、そんな話は誰もしていない。一億総活躍プランで提唱されている「これからの時代の、新しい”輝く”女性」の内実は「働け、産め、育てろ、介護もしろ」という事のようで、女性にだけ輝けと聞くだけで無茶な話,負荷が増えただけの話で正直心が折れる。「共働きでやってね。しかも出生率が下がるのは困るから、出産も子育ても、早めによろしく。あと、時期がきたら介護もどうにかやってよね」と、それを出来るのが優れた女性、活躍し、輝いている女性と言ってるようで、政府が提示している生き方は全然多様じゃない、女性の人生の選択肢は全く増えていない。
昨年の労働力調査で女性の就業者数が初めて3000万人を突破したことが判明した。女性が出産や育児で仕事を辞め、30代を中心に就業率が下がる「M字カーブ」が改善され欧米型に近づいてきたことが主因であるが、女性の被雇用者のうちパートら非正規労働者が55%を占め、男性の2倍以上になる。非正規で働く女性が多く「雇用の調整弁」という側面は明らかである。男女の不合理な待遇差の解消も一向に進んで居らず女性の社会的地位向上には程遠い状況である。自分の経験から言っても海外・日本共に男女の能力差は皆無である。活力ある日本を作るためには女性が活躍できる環境作りが何よりも重要である。コロナ対応で際立った手腕を発揮したのはドイツ・台湾・ニュージランド・フィンランド・デンマーク、何れも女性がリーダーの国だ。彼女達の実行力・スピード感、コミュニケーション能力は日本の世襲政治家にはないものだ。 世界経済フォーラム(WEF)は、世界各国の男女平等の度合いをランキングした2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」を発表した。調査対象153カ国のうち、日本は121位と前年(110位)から順位を落とし過去最低、中国(106位)や韓国(108位)などアジア主要国と比べても低い。項目別にみると、日本は特に政治が144位と前年から19下げた。WEFによると、国会議員に占める女性の割合が日本は約10%と世界で最低水準となっている。安倍政権は女性活躍の推進を掲げるが、まず「隗より始めよ」である。日本の衆議院の女性比率は9.9%。これは193か国のうち167位と著しく低い。他国では女性の首相が誕生しているが、日本は知事止まり。企業のなかでも女性管理職の割合は低い状態が続いている。女性の政治進出を阻害しているのは世襲政治家の存在、日本の政治制度の後進性を物語っている。
***財政も2度に亙る消費税増にも拘らず、税金の無駄遣いのオンパレードで財政悪化は目を覆うばかりである。電通というような得体の知れない、国家にとって凡そ“エッセンシャル”とは言い難い広告代理店に過ぎない企業が政官行政に食い込み貴重な国税を食い物にしている構図が浮き彫りになった。コロナ対策として中小零細企業に現金を支給する経産省の「持続化給付金」事業に電通を主体とする謎の一般社団法人(サービスデザイン推進業議会)が7百65億円という根拠無き巨額で落札し、業務の大半を7百45億円で電通に再委託していたことが判明した。更に電通は子会社5社程に再委託しその子会社から更に協議会メンバーのパソナ、トランス・コスモス等に再々々委託・発注されていた。このトンネル再委託システムにより電通に145億円が中抜きされたと報じられている。当に森友・加計・桜を見る会に続く政・官・財の安倍政権の巨大な黒い疑惑である。入札競争相手であったデロイト・トーマツは東電福島原発損害賠償業務で経験があり電通の半額で出来ると言われていたが電通からの理由にもならないような横槍で排除され電通に決定した。
この協議会はIT導入支援補助金事業など、経産省から2020年持続化給付金事業を含む14事業・総計1576億円分を受託して居り中抜き丸投げの構図は全く同じである。
労働者の賃金やコロナで窮状に陥っている中小零細企業への資金援助が根詰まり起こし一向に改善されない裏には全くノウハウを持たない電通が事業を取り仕切っているところに大きな問題がある。各省庁は天下り先確保の為同じような組織を作っており、税金の無駄遣いは目を覆うばかり、政財官の抜本的な大掃除が必要だろう。2度に亙る消費税増税資金がこのような目的に使われ、コロナ対策に廻らないのは由々しき事態である。(税金の無駄遣いについては別途記したい)
***こと対米外交に至ってはトランプにすり寄り「ポチ外交」に徹したが、失うものばかりで得られたものは何も無かった。米国はかねて日本に対し、より一層軍事的な役割を担い,機密保持の徹底を求めて来ていた。これに応じる形で「集団的自衛権の行使を容認した安全保障法制の制定」と国民の知る権利を脅かす「特定秘密保護法の制定」も強行した。集団的自衛権の行使は、他国の武力紛争に介入することになりかねず、歴代内閣は憲法が禁じる海外での武力行使に当たるとして、違憲との見解を示してきたものであり、多くの憲法学者の反対を無視して成立させたものである。安保法制による米軍・自衛隊の一体化が加速されており、このことはとりもなおさず日本が「戦争する国アメリカ」と同一化され極めて危険な状況になった事を意味するのである。更に日米貿易赤字解消を恫喝まがいに要求され、高額のポンコツ防衛装備品購入などで応じさせられた。全て国税の浪費である。
対ソ外交については安倍は27回もプーチンと会談し、記者会見では「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている。ゴールまで、ウラジーミル、二人の力で駆けて駆けて駆け抜けよう」…、この子供じみた歯の浮くような発言とプーチンの薄ら笑いの画面を突きつけられて大きな絶望感を味わった。KGBで長年諜報活動に携わり外交の裏・表を熟知する海千山千のプーチンに対しこの無防備な対応では全く勝ち目がないことが明白である。案の定、度重なる会談でロシアは日本の大きな経済協力を得たが、そんなことはお構いなく、今年7月1日にロシアは「領土割譲禁止条項」が盛り込まれた改正憲法を承認したのである。ロシアの領土に対する執着心の強さは歴史的にも明らかであり、今後北方領土返還はロシアが崩壊の危機に繋がるような事態でも生じない限り不可能ではないかと思わざるを得なくなった。トランプ、プーチンにとって安倍の退陣は残念な事だろう、こんな御し易い貴重な「虎の子の財布」は無かったからである。

「アベノミクスで始まり,アベのマスクの醜態で呆気なく幕を閉じた政権」「仮病で国民の同情を上手く誘って放り投げた無責任政権」「憲政史上最長だけがレガシィ」の空しい安倍政権であったと言える。 コロナ対策という突然世界各国首脳に出されたセンター試験に安倍はものの見事にその無知・無能・無策振りを曝け出した。主要23か国で行われたコロナ対応に関する国民の政権評価の内「政治的リーダーシップ」の項目では世界平均40点に対し日本は驚きの5点,断トツの最下位であった。
安倍首相自ら「PCR検査を1日に2万件に増やす」と宣言しておきながら1カ月後にも同じことを言っている現実や、「かつてない規模」の「あらゆる政策を総動員」した「大規模な対策」の結果が、まさかの「1世帯2枚の布マスク」であることの衝撃、しかも予算466億円を見積もって届いたマスクがカビだらけ、街のどこを見ても「安倍のマスク」を見かけぬ情けなさ、そもそもその予算や発注先も不明瞭な点が多々あることへの不信感など、国民の間に横たわる不安感や絶望感が蔓延した。その後政府が7月末から、介護施設などを対象に布マスク約8000万枚調達費118億円を追加で配布することが分かった。厚労省によると、全体の事業規模は妊婦向けや事務費を含めて計1億5千枚で約247億円、税金をドブに捨てたも同然の無駄使いである。GO to Travel を突然前倒しで始めると宣言した途端、東京都の反発にあい東京除外を決めた為、都民の予約キャンセル料が発生しその失敗の付けを税金でカバーすると言い出す始末。税金浪費は止まるところがない。そもそも一番大事な時期に国会を閉じ、安倍は記者会見すらしなかった。この間彼等は昼寝をしようと高級レストランで盛り上がろうと、間違いなく給料が出る。閣僚は手当てが支給される。国会議員の報酬は時間給にすべきではないか。自分たちの失敗は自分達で補填すべきではないか。このキャンペーンのお陰でコロナが沖縄等地方に拡散するという副作用を齎した。
森友学園問題で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と大見得を切ったあの時こそが身を引くbestの時期であった。
かって太平洋戦争で無能な政治家と出世に我を忘れた幼稚・無知・無策の軍人官僚が全く勝ち目のない戦争をズルズル引き延ばした為に多くの国民が生命財産を失い、国家を滅亡に導いたのと同じ構図である。
安倍の「私や妻が…」の発言を契機に、まじめな官僚が命を絶ち、高級官僚は出世・栄達に目が眩んで、文書改竄・破棄は勿論、平気で虚偽の証言をするなど、官僚を中心に国家のモラルが地に落ち、民主政治が根底から破壊されるに至った。財務省の文書改竄、防衛省の日報隠し、厚労省の統計疑惑など、霞が関官僚群の劣化と見られる一連の現象も安倍政権による典型的な民主政治破壊行為の一つである。加計問題、桜を見る会、河井前法相・参院選買収事件等にみられる政治の私物化は正に犯罪行為であり、首相が市民から刑事告発されるに至っているものまである。
あの時辞任して居れば国家として大きな損失を被らなくて済んだ筈だし安倍自身も仮病を使って政権を放り投げるというような醜態を演じなくてよかったはずだ。

持病の「潰瘍性大腸炎」悪化で「政治的判断を誤る恐れがある」という理由で政権を放り投げた人間が、その舌の根の乾かぬうちに責任を取れるはずもない「敵基地先制攻撃能力保有の検討を進める」というような国家の方向性を左右する重要な方針を談話として得意げに発表する。過去に責任を痛感すると連発しながらも,凡そ責任を取った試しの無い人間の面目躍如である。能力以上の業務から解されたのか、早くもフランス料理会食や、ゴルフ約束というお気楽なニュースが伝わっている。体調不良を理由に重要な国政を放り投げた人間が、慶応病院での再検査通院前夜にコース料理完食&アルコール摂取に「ゴルフの約束」……。慶応病院から病名に関し一切発表は無い。病気は政権放り出しの言い訳にすぎなかったとしか考えられない。次の政権には影響力を発揮を匂わせ院政にやる気満々、コロナ危機や支持率低下、見通しの立たない政治状況に嫌気がさして政権を投げ出したことは明らかだった。立派な大人がするべきことではない。ネットには「会食性大腸炎」と言う言葉さえ飛び交っている。そんな重大な持病を抱えているならば早い時期に退陣するか、国政の重要性を認識し食生活等自重すべきではなかったか。

安倍首相の成蹊大学時代の“恩師”が退陣に当たって「首相としてもう少し知的になってほしかった」「65歳という年齢の割には、とてもチャイルディシュ(子どもっぽい)だという印象、人間的には未熟に感じます。」
「政治家は国民の命を預かる仕事です。そのためには、歴史書を含めて多くの本を読み、人類の歩み、知恵を学ぶ必要があります。人類の歴史や人間の在り方について高い見識がない人は、本来はやってはいけない仕事だと思います
石破(茂・元幹事長)さんを次期首相にはさせたくない」という執念だけ。やはりまだ権力への志向性が強く、敵をやっつけることが好きな性格が抜けない」と苦言を呈している。
正直安部は65年の人生をどのように生きてきたのか、自分に負荷を与えず唯々“のほほん”と生きてくればこのような未熟な人間が生まれるという教訓ではないだろうか。

安倍が辞意を表明した直後に行われた世論調査で、内閣支持率が「爆上げ」した。共同通信は前回比20.9ポイント増の56.9%。読売新聞も同15ポイント増の52%だった。民放・TBS系列のJNNにいたっては同27ポイント増の62.4%。朝日新聞の調査では「安倍首相の7年8カ月の実績をどの程度評価しますか」との問いに71%の人が「評価する」と出ている。
よく見られる「閉店人気」ではないかとの見方もあるが ,コロナで急落した株価が日銀等による人為的な操作でコロナ前の水準に急速に戻したのが大きいような気がする。低金利のせいで株主の裾野は大きく広がった。僅かな保有株でも庶民にとっては命綱なのである。 更に社会学者・宮台真司氏が指摘するように国民が真実に向き合うのがつらい為、「見たいものしか見ない」という習慣が出来、格差や痛みは自分の問題として処理してしまうという傾向があるのかもしれない。

コロナの出現によって日本が抱える多くの問題が浮かび上がった。次回はそれについて触れたい。
幸い無知・無能・無策の安倍・麻生の再登場は無いだろう。後任には誰がなっても二人以下の政治になるとは考え難い、という点に希望を託したい。

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