経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

最低賃金 901円 の功罪 (下)

2019-08-16 08:50:24 | 賃金
◇ むずかしい中小・零細企業の保護 = 東京都は1013円、鹿児島など15県は790円。今回の改定でも、最低賃金の差は223円もある。大都市と地方では物価や生活環境などが大きく違うから、格差を生じるのは当然という意見もある。しかし格差が大きいと、労働力の大都市集中はさらに進む。地方の自治体がそれを防ごうとして最低賃金を上げれば、こんどは中小・零細企業が人件費の増加に耐え切れなくなってしまうだろう。

すでに大都市との隣接地域では、大きな問題が起こっている。たとえば東京都の東村山市と埼玉県の所沢市は、歩いても15分ほどの距離。ところが東京都と埼玉県の最低賃金は87円も違う。放っておけばバイトやパートの働き手は、みんな東村山に行ってしまう。だから所沢市の企業や商店は、時給を東京都並みにしなければならなくなった。こんな例は全国いたるところで多発している。

バイトやパートなどの不正規雇用は、中小企業や零細企業に多い。たとえば最低賃金が27円上がると、1人当たりの人件費は年間5万4000円ほど増加することになる。10人を雇用していれば、年に54万円の出費増加。経営者にとっては、死活の問題だろう。仮に倒産が増えれば、失業者が増加する。現に韓国では、こうした現象が社会的に大きな問題となった。

このため政府は、中小・零細企業を対象に設備投資に補助金を出したり、減税するなどの対策を講じる方針だ。しかし、こうした保護政策が行きすぎると、生産性がきわめて低いゾンビ企業までが生き延びてしまう。そのうえ10月からは、消費増税の影響も絡み合ってくる。最低賃金の連続的な引き上げが、政府の思惑通り経済の好循環につながるかどうか。予断は許さない。

       ≪15日の日経平均 = 下げ -249.48円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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