経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-08-19 08:05:41 | SF
2018-08-19-Sun CATEGORY: 政治・経済


第5章 ニッポン : 2060年代

≪46≫ 2061年12月 = まだ学生だったころ、真夏の日本アルプスを縦走したことがある。家に帰ると疲れ果てて、まる1日眠りこけた。そのときと同じ感覚で熟睡し、パッと目覚めたら可愛いマーヤの顔があった。ぼくの手首を握りながら「お早うございます。血圧も正常です」と言い、にっこり笑う。

「もう起きてください。あと1時間で地球の大気圏に突入します。すべて予定通りですから、何も心配はありません」

――えっ、もう4年も経ったということか。君はずっと起きていたの?
「あなたの寝顔を見たり、地球でやることを復習したり。バッテリーを節約するために、横になったりしていました。いろいろ話したいこともありますが、もう時間がありません。これから大事なことを申し上げますから、しっかり聞いてくださいね」

――ああ、完全に記憶は取り戻した。気分も上々だから、何でも言ってくれ。
「まず、この宇宙船は日本時間の2061年12月20日の夜明け前に、神奈川県の鵠沼海岸に着陸します。私は今後の準備やダーストン国との連絡をするため、貴方を海岸に降ろしたら、そのままUFOに向かわなければなりません」

――えっ、まさか帰っちゃうんじゃないだろうね。
「大丈夫、帰りませんよ。ただ準備に2か月ほどかかります。ですから2か月後には、貴方がどこに住んでいようと必ず見つけて伺います。その間、気を付けて元気でいてくださいね」

――淋しいけど、判ったよ。でも、どうして2061年なんだろう。行きと帰りで8年半ぐらい宇宙船に乗ったはず。ダーストン国には5年ほどいたから、いまは2063年じゃあないのかい。
「ダーストン星の公転周期は168日ですから、1年が地球の半分もないんです。だから地球の時間で言うと、貴方がダーストン国に滞在した時間は約2年半。お間違いないように。これから私たちは、地球の時間で暮らすことになるのですから。

海岸に座っていれば、すぐに救急車がやってきて、貴方を病院に運ぶはずです。病院で健康が確認されれば、貴方は自由になる。11年前に宇宙船で飛び立った航空自衛隊の隊員だということも明らかになり、マスコミが騒ぎ立てるに違いありません。ただ貴方には11年間の記憶がない。ダーストンのことは決して喋らない。これだけは肝に銘じてください」

いつの間にか、マーヤに命令されるようになっている。こちらがロボットになったような気分だ。

                            (続きは来週日曜日)
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