「風の掲示板」便り

遥かに赤城山を見下ろす山里の小道に

小さなブナの掲示板が作られ、

短歌・俳句・願い・つぶやきが書かれた短冊が

掛けられるようになったのは、

 

ここを訪れた歌人の足跡をとどめたいと思い続けていたところに、

突然いなくなってしまった、

ここを守ってきた人への思いを刻んだ一首が生まれ、

短歌の力をひろめたいという願いが湧きおこったからだった。

 

この日、雪から守るため、

冬の間外しておいた短冊を下げた。

はつ子さんのお兄さんが、いい歌だねえと、

心を見めて短冊に書いた馬場あき子の歌を読み返した。

枯れ野すぎ枯れ野馳せくるうれしさよ

北へ向かへばずんずんと冬  馬場あき子

 

初越のこみちの はつ子さんと語り合った。

 

凄いんねえ。

北へ向かう、寒さに向かう、枯れ野に向かう。

厳しさに向かうような気がするのに、

それを味わうことを楽しんでいるみたい。

 

ずんずんと って、力強くはずんでいる思いが伝わってくるんねえ。

枯れ野が過ぎたら、また、枯れ野が馳せ来る。

つまり走るように目の前に現れて見えるんだから、

車窓に見える風景かねえ。

 

なんか、勇気づけられる歌ねえ、

凄いんねえ、歌には作者の生き様が見えるっていうけど・・・・

 

九十を過ぎてもすっくと背筋を伸ばして歩く。

能舞台の「正面」に座る時も

背筋を伸ばして凛として座す。

 

私はかつて体調を崩した時、

その後ろ背に力をいただいた。

ずっと若い私がこんなでどうする ! と

下腹・丹田に力を入れて座りなおした。

「正面」に師の凜として座しまする

その気迫こそ身にほしきもの 田村奈織美

 


 

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